他の弁護士に雇われて仕事をする弁護士を勤務弁護士、イソ弁(イソは、居候という意味ですが、イソギンチャクであるとの説もあります。)、アソシエイト弁護士などといいます
基本的には、最初は勤務弁護士からスタートして、実力をつけていくと、パートナーという事務所の共同経営者になったり、独立して事務所を構えたりします。
勤務弁護士を雇う弁護士を、ボス弁といったりします。

そういうわけで、勤務弁護士は、決まったお金をもらう代わりに、所属先の命令で仕事をする、ということで、一般社会でいうところの社員、従業員、サラリーマンという立場にあります。

ところで、法律上、他人の指揮命令監督下に入って労働して対価をもらう契約を労働契約といいます。働く側を労働者、働かせる側を使用者といいます。

労働契約については、使用者が立場上、労働者より非常な優位にあります。ですから、労働者保護のため、労働基準法をはじめとする労働法と呼ばれる法律で保護されています。
これは、契約に優越し、たとえば、お互いが合意しても最低賃金以下の給料は設定できない、残業代0にできない、などがあります。

ところで、勤務弁護士については、残業代が発生しないとか、休日労働をしいられる、残業について必要な三六協定がないことがほとんど、という問題があります。

もちろん、労働契約でなければ問題ありません。お互いの同意があれば、原則として内容は自由だからです。
ですが、労働契約である場合、つまり勤務弁護士が労働者であれば、法律の定めは、当事者の合意に優越します。ですから、勤務弁護士がどういおうが、残業代は払わないといけませんし、三六協定も必要です。違反があれば違法ですし、場合によっては犯罪にもなり得ます。
そして、労働契約かどうかは、名目ではなくて実質で判断されます

法律事務所が違法行為を、それも犯罪に当たりそうなことをしているかもしれない、ということで、これは由々しき事態です

ですが、実は、勤務弁護士が労働者であるかどうかについては、あまり突っ込んだ議論がなされていません

これは、ボス弁からすれば、労働法の厳格な規制には従いたくないという事情があります。
そして、厄介なのが、イソ弁からしても、指揮命令監督下にあるとはいえ、個人事件(事務所から配点された事件ではなくて、自分で受任して処理する事件のことをいいます。原則として報酬は、一定割合の経費負担を求められる場合があるほかは、自分のものです。)をやる自由、弁護士会の活動に参加する自由は確保したいという事情があります。
これはどういうことかというと、労働者性が明確になってしまうと、だったら普通の労働者のとおり、時間や場所を厳しく制約されることになるのではないか、というものです。

そういうわけで、この議論は、弁護士界にとっては、タブーというか、むしろタブーというより、玉虫色にしておきたい、そういう微妙で、扱いに困る問題だったりします。

もっとも、一部の主張、つまり「自由を認めているんだから、労働者ではない。イソ弁にもメリットがある。」みたいな議論は、間違っていると思います。
労働法の定めは最低基準ですから、一部が最低基準を上回る、恩恵を与えているから守らなくていい、というのは労働法の解釈として、明らかにおかしいと考えています。
これは、ブラック企業の社長が、「俺はたまには労働者をのみに連れて行って、奢ってやってる」「労働者もおれに感謝している」みたいなことを主張しても、労働法の適用は一切免れないのと、同じことです。

なお、これは、私見ですが、私はほとんど全てのイソ弁は、労働者で(タブーに触れるため省略されました。ここをクリックしても続きは表示できません。)。