弁護士 深澤諭史のブログ

弁護士 深澤諭史(第二東京弁護士会 所属)のブログです。 相談等の問い合わせは, i@atlaw.jp もしくは 03-6435-9560 までお願いします。 Twitterのまとめや,友人知人の寄稿なども掲載する予定です。

タグ:非弁規制

民事訴訟手続というのは,私人間の争いです

それが法人などの団体が当事者になる場合もあるとはいえ,法的には,個人間の紛争です。

個人の権利義務が問題になっているわけですから,前回「欠席裁判のルール:欠席裁判でも被告の行為の違法性を認めたといえるか?」で説明したように,個人の意思が尊重されるとともに,個人の自己責任で遂行されます。

ですから,民事訴訟の弁護士費用は自己負担であり(なお,機会があれば解説しますが,一部に相手方に請求出来るという考えもあります。),その訴訟に費やすコストが捻出できなければ,原則として,権利回復を断念する事になります。

もちろん,それが社会的な正義にかなうかというと,問題があります。
ですから,弁護士の中には手弁当で弁護団を結成して社会的に重要な意義はあるけれども,費用が捻出できない事件を担当するなどして,社会正義の実現(弁護士法1条1項)を目指す動きもあります

もっとも,こういう手弁当では限界があります。各地の弁護士会では,弁護士の支払う会費等を原資に基金を設け,このような事件について支援をするなどの工夫も行われています(私の所属する第二東京弁護士会でも,行っています。)。
ですが,結局は弁護士自身の会費からの支出であり,弁護士といえども霞を食べて生きているわけではないですし,弁護士の家の庭に油田があるわけでもないので,必然的に限界があります。
そういうことで,最近は,カンパを募るという動きもでています。

一方で,これらの「カンパ」においては,もっぱら出捐者が弁護士に限定されてしまう傾向があるという限界もあります。もちろん,そうでないケースもありますが,振込をするとか,やや不便なところも気になります。

最近,注目を集めているのが,社会的に意義があるが充分なコストを依頼者が負担できないという事件について,クラウドファンディングを利用するというものです

クラウドファンディングの説明の詳細は,数ある他のウェブサイトに譲りますが,要するに,一般市民から広く浅く出資を募って,何かの活動をしよう,というものです。裁判で使うのは珍しく,通常は,地域振興とか,何かをどこかに寄付するとか,変わったものでは「個人が旅行/冒険をする」といったものがあります。

昨日,READYFOR株式会社のクラウドファンディングサービスを利用して,「医学部入試における女性差別を認めない。弁護団活動にご支援を。」というクラウドファンディングがスタートしました

話題の医学部入試差別問題ですが,一日足らずで目標金額が達成され,さらに支援が集まりつつあります。

これで,大学の責任を認める法的判断が下されれば,訴訟に参加していない受験生に対して,任意の支払いも期待できるなど,原告以外の利益も大きいでしょう。また,このような行為は許さないという社会的な同意を得る,醸成することにもつながります。要するに,世直し訴訟ともいえるわけです。

さて,実は,本件については,私も協力をしていますクラウドファンディングにおいては,弁護士法令上の抵触の問題が非常に多いです。そして,これに抵触した場合,弁護士には,極めて厳しい処分が下されるのが通例です。そうなると,せっかくの集められた支援も無駄になりかねません。これは支援者を裏切ることになります

報酬分配規制ばかり注目されていますが,それと同等以上に問題になる規制もあります。同種サービスの中には,果たしてちゃんと検討しているのか,疑わしく感じてしまうものも散見されます

弁護士だけではなく,依頼者,出資者も安心して利用できるように,弁護士法令の観点からアドバイスを行いました。このあたりの事情については,「弁護団活動費用をクラウドファンディングで集める意義について(弁護士 草原敦夫 先生)」が紹介して下さっています。

もちろん,「内外の弁護士のアドバイスを受けて,制度設計してOKだった。」だけでは,必ずしも十分ではないという意見があります(また,名前を出さない名無しさん弁護士のアドバイスというのであれば,それは論外でしょう。)。
今後は,ガイドラインの作成,判断根拠と仮定の文書化など,クラウドファンディングが司法インフラを一翼を担うにふさわしくなるよう,必要な協力をしていきたいと思います。

非弁規制(非弁護士が業として報酬目的で,他人の法律事件に関して法律事務を取り扱うことを罰則付で,原則禁止すること。これは,弁護士法72条に定めがあります。)について,「非弁護士であっても,人助けはできるはず」と,否定的な見解もあります

これについて,私の立場は,「抽象的にはそういうこともありうるかも知れないが,実際には害悪のほうがはるかに大きいので賛成できない。」というものです。

たしかに,弁護士でなくても法律を学ぶことはできますし,司法修習を受けることができなくても,法律実務について研鑽を積むことは可能です。

ですから,抽象的な可能性として,非弁護士であっても,通常の弁護士並に,あるいはそれ以上に,適切に他人の法律事務を取り扱える,しかも廉価に,さらに柔軟に,ということはあるかもしれません

しかしながら,実際に非弁護士取締委員会の委員として調査を担当し,あるいは,弁護士として一般市民からの相談を受けてきた立場からすると,そのようなケースはほとんど(というか全く)想定出来ません

私は,弁護士がやるような交渉,代理,予防法務の分野において,非弁護士が弁護士法72条に違反してこれらに関わったケースにおいて,まともな処理が行われていたという例に接したことが一切ありません

調査においては登記簿を取得して,一般的な話をするだけで数十万円を請求するような,ほぼ詐欺的なものもありました。また,よくあるものとしては,裁判になったら関与ができないにも拘わらず,裁判上等といったような恫喝的な書面,法的になんら意味がないのに,やたら挑発するような書面を作成して送付する,というような例もありました。

特に,他士業の資格を悪用して非弁行為を行う者は,恫喝的な書面を作るのを好む傾向がありますが,徒に紛争を激化させるばかりか,自分に不利益な事実を認める記載をして,逆に「自爆」になっているケースも珍しくありません。

非弁規制については,現実を踏まえて考えるのであれば,これを安易に緩和するのは,相当ではないと思います。

要するに,まず非弁では事件は解決しませんより悪化する,ということです。

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