弁護士 深澤諭史のブログ

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タグ:非弁提携

例のニュース例のニュースについて、私のコメントが掲載されました。

弁護士とコンサル会社元役員ら在宅起訴|NNNニュース

本件の事情はどういうものであるかはわかりませんが、コメントにあるように、カタカナだから非弁にならない、ということはもちろんありません。

カタカナにして、本来の意味を紛らわしくしているので、むしろ、より怪しいと思うべきケースも多くあるとおもいます。私も登録したてのころ、カタカナ非弁に誘われたことが何度もあります。

非弁提携で弁護士が起訴されました


弁護士法72条は、非弁護士が法律事務の周旋業を営むことを禁じています(弁護士であれば周旋業ができるように読めますが、弁護士による周旋業は弁護士職務基本規程で禁じられています。)。

そして、弁護士法27条は、弁護士が、弁護士法72条に違反する者から、事件の周旋を受けることも禁じています。弁護士の側も処罰されるというのが、この規制の特徴です。

なお、記事では非弁活動と書いてあります。間違いではないのですが、非弁活動は弁護士法72条違反をいい、弁護士側の違反、つまり弁護士法27条違反は、非弁提携という言葉を使う方が一般的ではないか、とおもいます。

事実に争いはないとのことですが、もしそうであれば、弁護士制度の根幹、弁護士の職務への信頼を根底から揺るがしかねない事件だとおもいます。

最近は、弁護士会も捜査当局も、非弁行為、非弁提携の摘発に力を入れており、民事でも裁判所は非弁行為の責任を認めやすくなりつつある傾向にあります
これは、良い傾向だとおもいます。


ということで,今後,機会があったら書いてみようかな,と。
ただし,クラウドファンディングと弁護士法令との関係は,皆さん報酬分配にばかり目が行きがちですが,問題の一つに過ぎません。非弁提携一般の問題もあるし,それ以外の問題もあります。

個別のサービス設計の問題もありますので,一概に,いいとか,わるいとかいうのも無責任な話です。
ということで,まずは,問題点の洗い出しからはじめようかなと。

まとめ
① 弁護士法との抵触のリスク(非弁行為のリスク)がある業者の中には,(顧問)弁護士と相談したから大丈夫だと主張する業者がある。
②  ①のようなことは,どの業種でもありうることで,それ自体は問題ではない。
③  しかし,①について,弁護士の検証が不十分な疑いのあるケースもある。
④  ①で大丈夫だというのであれば,最低限,弁護士の氏名,検証の要点,根拠の概略程度は示すべきである。

非弁行為該当性の疑われる業者が,しばしば,「(顧問)弁護士と相談をした。適正にやっている。非弁行為にならないように配慮している。」などと標榜することがあります

事業をやっていくにあたって,法令と抵触しないように注意を払うことは当然のことです。これは,弁護士法の問題に限りません。また,そのために弁護士に相談すること,相談した結果を取引先等の関係者に案内をして安心をしてもらう,いずれも大事なことですし,あるいは普通にあることです。

ただ,非弁行為であることが疑われるような業者の場合,すこし,この表現に疑問を抱かざるを得ないケースもあります。
まず,そもそもウェブサイト上の表示をそのまま信じると,非弁行為をやっているとの疑いが濃厚であるというケースがあります。そうすると,いくら弁護士に相談をしたからといって,果たして非弁行為にならないようにしているのか,大いに疑問です。非弁規制は表示の規制もありますから,果たして,その(顧問)弁護士が指導したのか,指導したとして,その内容が適切か,疑問を抱かざるを得ないこともあります。

私たち弁護士は,もちろん,自分の相談者,依頼者,顧問先が違法ないし犯罪行為を行ったというだけでは,直ちに責任を問われません。
ですが,非弁行為に限らず違法行為,犯罪行為を助長することは禁じられています。更に,これは非弁行為特有の規制ですが,非弁行為を行い,あるいはその疑いのある者に,自分の名義を利用させることは,厳重に禁じられています

ですから,他の業法に関する助言に比して,弁護士法に関する助言については,以上のような非弁提携固有の規制があるので,格別な注意が要求されます。
それにも関わらず,広告の表示上,非弁行為が疑われるのに安易に「太鼓判」を押すことは,問題となる場合もあると思います。

また,利用者の立場からしても,「(顧問)弁護士と相談したのか。なら安心だ。」と安心してよいものか,疑問が残ります。
利用者にとって非弁業者や非弁提携弁護士に依頼すると何が問題なのか。」で解説した通り,非弁行為を行う業者に依頼をすると,思わぬ,そして重大で取り返しの付かない損害を被ることがあります。

そうすると,せめて「(顧問)弁護士に相談してやっています。だから大丈夫です。」という案内については,それだけでは不十分ではないか,と思います。
弁護士の氏名はもちろん表示すべきでしょう。本当に大丈夫なら,その弁護士は名前を出せるはずです。名前も出さないのは,違法の疑いがあると実は思っているとか,そもそも,相談した弁護士なんか実在しないのではないか,とも疑われるでしょう。

また,「大丈夫」「適切」ということについても,いかなる理由でそうであるのか,少なくとも,検討の要点は述べるべきでしょう。弁護士法違反の行為は,依頼者に多大なる損害が生じます。その重要性を理解できているのであれば,安心させる,信頼確保の観点からもこれは必要です。

非弁行為と思しき事業をやっている業者の中には,「交渉すると非弁になるのでしません」とか,あるいは「弁護士が必要なときは弁護士を紹介します」と標榜するようなケースが少なくありません。

ですが,非弁護士が弁護士業務を行うことはできないことはもちろん,弁護士を紹介する業務も弁護士法72条で禁じられています

また,弁護士がそのような者から紹介を受けること,名前を使わせることは,弁護士法27条で禁じられています
更に,弁護士は,弁護士職務基本規程により,弁護士法より更に厳重な規制に服することになっています

あえてここでは,どういう理由で問題があるか,つまびらかにはしません

結論をいえば,非弁行為の疑いのある業者が,「弁護士業務が必要になれば,それはちゃんと弁護士を紹介しますので安心して下さい」というのは決して安心できません

以上のような厳しい規制があるため,そのような紹介は,弁護士法令に違反するリスクが高いからです。

もちろん,全てのケースが違法というわけではありません。ですが,そのあたりの配慮がされていない場合,紋切り型に「弁護士の領域になったら弁護士を紹介するので大丈夫」では,不十分といわざるを得ません。もし,安心できるとすれば,弁護士法令のいかなる条文について,いかなる理由でクリア出来ているか,明示をするべきです

弁護士が行えば非弁/非弁提携にならない,というのは間違いです。特に詳しい説明もなく,弁護士法に触れる疑いのある業務を行う業者,必要に応じて弁護士を紹介すると標榜する業者には,注意が必要です

できる限り,弁護士が必要になれば弁護士を紹介するという業者ではなく,最初から弁護士に相談をすることをお勧めします。

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