弁護士 深澤諭史のブログ

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タグ:遺言

今回は、淺井健人弁護士(東京弁護士会)からのご寄稿です(・∀・)
1 法改正の概要
自筆証書遺言は、これまで、全文、日付、氏名を自筆で書き、押印をする必要がありました(民法968条1項)。
2019年1月13日からは、自筆証書遺言の財産目録については、パソコン等で作成することや第三者が代筆すること、不動産の登記事項証明書や預貯金通帳の写しを添付し、目録の頁ごとに署名押印をする方法もとることができるようになりました(改正民法968条2項、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の施行期日について(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00237.html)、法制審部会資料24-2(http://www.moj.go.jp/content/001238833.pdf)21頁)。

2 加除訂正について
 訂正については、自筆の部分も自筆でない部分も同様に、法律で定められた方式で行う必要があります(改正民法968条3項)。
具体的には、①×印や抹消線で修正場所を明らかにしたうえで修正し、②修正場所に押印し、③空いている場所に「〇行目〇字削除〇字追加」などと記載のうえ、署名をする必要があります。

3 自筆証書遺言のメリット・デメリット
 自筆証書遺言には、
①誰にも知られずに遺言書を作成することができる、②遺言書作成の費用がかからないというメリットがあります。
 しかし、①方式が誤っているとして無効とされるリスクが大きい、②遺言書が発見されないおそれ、偽造・変造されるおそれが大きい、③遺言書の紛失や他人による隠匿・破棄のおそれも大きい、④死後、家庭裁判所で検認の手続をする必要がある(民法1004条)というデメリットもあります。

4 遺言書の保管制度
 2020年7月10日からは、遺言書の保管制度が新たに施行され(法務局における遺言書の保管等に関する法律について(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html))、法務局で自筆証書遺言を保管することができるようになります。保管制度を利用すれば、3の②~④のデメリットは解消されますが、依然として、①のリスクは残ります。

5 まとめ
 自筆証書遺言は、誰にも知られず似作成することができ、遺言書作成の費用がかからないというメリットはありますが、方式が厳格なため、無効とされ、せっかくの御意思が反映されなくなってしまうというリスクがあります。
また、遺言で何ができるかを踏まえ、かつ、遺留分にも配慮した遺言でないと、相続人の間でもめないように遺言書を作成したにもかかわらず、かえって、紛争を発生させてしまうおそれがあります。紛争が発生するとその解決コストは、時間的にも費用的にも相当なものになりますので、事前に弁護士にご相談されることをおすすめします。
自筆証書遺言よりは費用がかかりますが、相続紛争を予防するため、公正証書遺言を作成すべき場合もしばしばありますので、自筆証書遺言と公正証書遺言のいずれを選択すべきかについても、弁護士にご相談されるとよいでしょう(公正証書の費用については、日本公証人連合会公証事務1遺言(http://www.koshonin.gr.jp/business/b01))。

民法は,市民社会の取引ルールを定める他,相続など親族関係についても定めています。
相続に関するルール,つまり,だれがどの程度,何を相続するか定めた部分を相続法ともいいますが,それが,1980年以来,約40年ぶりに大改正されました。

相続するのも,そしてされるのも,人生においてほぼ避けることはできません。
そういう意味で,私たち全員に直接関わる大事な法律の,大きな改正であるといえます。

今回は,淺井健人弁護士(東京弁護士会)に,改正に関する資料をまとめてもらいました。

なお,今回は個別に解説をしていませんので,専門家向けの記事となります。

Ⅰ 成立
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律及び法務局における遺言書の保管等に関する法律が2018年7月6日に成立しました。
そこで、改正の概要や、施行日、附帯決議、改正経緯をまとめてみました。
ニュース
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32689360W8A700C1EAF000/
 
Ⅱ 法律案
法務省の条文へのリンク
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_0021299999.html
法務局における遺言書の保管等に関する法律案
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00222.html
 
Ⅲ 概要
今回の改正では、以下の点などが新たに設けられました。

① 配偶者が死亡した場合に残された配偶者が希望した場合は、原則として死亡するまで居住し続けることができる配偶者居住権(長期)(民法1028~1036条)
② 残された配偶者が遺産分割の終了時まで無償で居住し続けることができる配偶者居住権(短期)(民法1037~1041条)
③ 婚姻期間が20年以上の夫婦の一方が居住用不動産を遺贈または贈与した場合には持ち戻し免除の意思表示があったとする推定規定(民法903条4項)
④ 遺産分割前の預貯金について、一定額につき審判を経ずに仮払いする制度(民法909条の2)、審判における保全処分の要件緩和(家事事件手続法200条3項)
⑤ 自筆証書遺言の一部を自筆でなくてもよいとする方式緩和(民法968条2項)
⑥ 自筆証書遺言を法務局において保管する制度(法務局における遺言書の保管等に関する法律)
⑦ 遺留分減殺請求権の法的性質の変更(金銭債権)(民法1046条)
⑧ 相続人以外の者の特別の寄与(民法1050条)
 
Ⅳ 施行日
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律は、2019年7月までに施行されることが予定されています。なお、自筆証書遺言、秘密証書遺言については2019年1月まで、配偶者居住権は2020年7月までに施行されることが予定されています。
法務局における遺言書の保管等に関する法律は、2020年7月までに施行されることが予定されています。
 
◯ 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案
附則第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
二 第一条中民法第九百六十八条、第九百七十条第二項及び第九百八十二条の改正規定並びに附則第六条の規定 公布の日から起算して六月を経過した日
四 第二条並びに附則第十条、第十三条、第十四条、第十七条、第十八条及び第二十三条から第二十六条までの規定 公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日
法務局における遺言書の保管等に関する法律
附則 この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
 
Ⅴ 附帯決議
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案、法務局における遺言書の保管等に関する法律案には、それぞれ附帯決議が出されています。
 
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(衆議院)
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Futai/houmuEE07E0F85FCC24AF492582B1002A32CA.htm
 
一 現代社会において家族の在り方が多様に変化してきていることに鑑み、多様な家族の在り方を尊重する観点から、特別の寄与の制度その他の本法の施行状況を踏まえつつ、その保護の在り方について検討すること。
 
二 性的マイノリティを含む様々な立場にある者が遺言の内容について事前に相談できる仕組みを構築するとともに、遺言の積極的活用により、遺言者の意思を尊重した遺産の分配が可能となるよう、遺言制度の周知に努めること。
 
三 法務局における自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度の実効性を確保するため、遺言者の死亡届が提出された後、遺言書の存在が相続人、受遺者等に通知される仕組みを可及的速やかに構築すること。
 
四 法務局における自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度の信頼を得るため、遺言書の保管等の業務をつかさどる遺言書保管官の適正な業務の遂行を担保する措置を講ずるよう検討すること。

 
法務局における遺言書の保管等に関する法律案に対する附帯決議(衆議院)
http://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Futai/houmuFCC244D52C7AEFE9492582B1002A62E8.htm
 
一 現代社会において家族の在り方が多様に変化してきていることに鑑み、多様な家族の在り方を尊重する観点から、特別の寄与の制度その他の本法の施行状況を踏まえつつ、その保護の在り方について検討すること。
 
二 性的マイノリティを含む様々な立場にある者が遺言の内容について事前に相談できる仕組みを構築するとともに、遺言の積極的活用により、遺言者の意思を尊重した遺産の分配が可能となるよう、遺言制度の周知に努めること。
 
三 法務局における自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度の実効性を確保するため、遺言者の死亡届が提出された後、遺言書の存在が相続人、受遺者等に通知される仕組みを可及的速やかに構築すること。
 
四 法務局における自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度の信頼を得るため、遺言書の保管等の業務をつかさどる遺言書保管官の適正な業務の遂行を担保する措置を講ずるよう検討すること。
 
Ⅵ 議事録
 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案、法務局における遺言書の保管等に関する法律案に関する、衆議院、参議院の議事録は以下のとおりです。

第196回国会 衆議院法務委員会 第20号
平成30年6月13日議事録
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000419620180613020.htm
第196回国会 衆議院本会議 第39号 
平成30年6月19日議事録
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000119620180619039.htm

第196回国会 参議院法務委員会 第19号
平成30年6月28日議事録
http://online.sangiin.go.jp/kaigirok/daily/select0103/main.html


Ⅶ 改正経緯
1 諮問
平成27年2月24日に法務大臣によって以下の諮問(法制審議会第174回会議)がなされました。
http://www.moj.go.jp/content/001136891.pdf
高齢化社会の進展や家族の在り方に関する国民意識の変化等の 社会情勢に鑑み、配偶者の死亡により残された他方配偶者の生活 への配慮等の観点から、相続に関する規律を見直す必要があると思われるので、その要綱を示されたい。
2 審議会
その後、法制審議会-民法(相続関係)部会において検討が重ねられました。
http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00294.html
 
(1)中間試案
第13回会議(2016年6月21日開催)では、中間試案が提出されました。
民法(相続関係)等の改正に関する中間試案
http://www.moj.go.jp/content/001201997.pdf
民法(相続関係)等の改正に関する 中間試案の補足説明
http://www.moj.go.jp/content/001198631.pdf
自筆証書遺言の方式(全文自書)の緩和方策として考えられる例
http://www.moj.go.jp/content/001198632.pdf
(2)追加試案
第23回会議(2017年7月18日開催)では、追加試案が提出されました。
中間試案後に追加された民法(相続関係)等の改正に関する試案(追加試案)
http://www.moj.go.jp/content/001231522.pdf
中間試案後に追加された民法(相続関係)等の改正に関する試案 (追加試案)の補足説明
http://www.moj.go.jp/content/001231524.pdf
(3)要綱案
第26回会議(2018年1月16日)では、要綱案(案)が作成され、法制審議会第180回会議(2018年2月16日開催)において要綱案が報告されました。
民法(相続関係)等の改正に関する 要綱案
http://www.moj.go.jp/content/001250062.pdf
補足説明
http://www.moj.go.jp/content/001246035.pdf
(4)法案提出
 その後、2018年3月13日に国会に法案が提出されました。
 

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