先日,テレビに出演する機会がありました。
出演するにあたって,こういうことをしゃべって下さい,というようなことをお願いされるのですが,人気のトピックは,「●●すると犯罪に!?」というものです。
やはり「意外なことが犯罪になる!」というのは,キャッチーらしいです。

ただ,ここで悩ましいのが,犯罪にならなくても違法行為になりますよ,という点です。

実は,法律違反でも犯罪になる行為というのは一握りなのです

すこし概念を整理してみます。

◯違法行為
法律に違反する行為をいいます。そして,ややこしいのですが,法律に明確に「●●してはならない」と書いてある行為はもちろん,明確に書いていなくても,法律の趣旨や他の条文から禁じられていると解釈できる行為は,違法行為になる可能性があります
たとえば,不倫は違法行為ですが,不倫をしてはならない,とは法律には直接書いてありません。ですが,不倫は裁判で離婚の理由になると法律に書いてありますので,違法行為であると考えられています。
違法行為をして誰かが被害を受けた場合,その損害を賠償する責任があります。この責任を不法行為責任といい,この文脈では,違法行為のことを不法行為と呼んだりします。

◯犯罪行為
犯罪に当たる行為をいいます。違法行為と異なり,法律に明確に犯罪になることが書いていないといけません。これを罪刑法定主義といいますが,国家が,気まぐれに市民を処罰することを防ぐために,犯罪として刑罰を科すためには,何が犯罪になるのか,それに対していかなる刑罰が科されるか,明確にされていないといけない,と考えられています。
そして,犯罪行為は基本的に不法行為になり,被害者に賠償する責任が生じます(ただし,覚せい剤の自己使用など,個人的な被害者のいない犯罪はその限りではありません。)。
たとえば,人の物を壊した場合は,器物損壊罪ということで犯罪になりますが,同時に,被害者に賠償をしないといけない不法行為でもある,というわけです。


基本的な構造,姿勢としては,法律違反の行為の中でも,特に悪質な行為だけを犯罪とする,ということになります。
ですから,不倫については不法行為ではあるが,刑罰で抑止するほどではない,ということで,不法行為になっても,犯罪にはしていないということになります(なお,かつては,姦通罪といって犯罪になる場合がありました。)。

このあたり,基本といえば基本ですが,なかなかイメージの持ちにくいところですので,メディアで説明するときはもちろん(といっても,時間等の都合で,なかなかそうはいかないのですが。),法律相談でも意識して解説をするようにしています。