弁護士 深澤諭史のブログ

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タグ:自首

毎年,今頃になると一番相談が多いので,少し触れます(ちなみに,この問題については,おそらく,書籍としては初の専門家向け解説を書いていたりしますが,この記事は一般向けの話です。)。

このあたりは法律とか条例とかが沢山あって複雑なのでキリが無いのですが,自首の狙いは,要するに,逮捕勾留を防ぐ,というところにあります(予備的に刑事処分も回避できたりすケースも多いのですが,これは今回,あえて解説から省きます。)。

この手の犯罪は,もちろん,教師と教え子とか,そういう事情があれば別ですが,基本的に実刑になることは稀です。罰金刑までが大部分です

一方で逮捕勾留されるということは珍しくありません。場合によっては,それで報道されてしまうことがあります

まとめると,この種事案については,実刑になって刑務所に行くことは稀であるが,逮捕勾留で留置場にしばらく入れられることは珍しくなく,報道されることもある,ということになります

これは,基本的に,刑罰はやったことの罪の重さで決まるけれども,逮捕勾留は逃亡と証拠隠滅の可能性で決まる,ということが要因です。

つまり,児童ポルノ関係の罪は,一回目でいきなり実刑にするほど重くはありません。ですが一方で,インターネットで児童と知り合うケースが非常に多いです。そうなりますと,証拠はスマートフォンにある,児童と連絡を取って証拠隠滅や口裏合わせをしやすい,ということになります。

要するに,罪の重さの割に証拠隠滅がしやすい,しかもその影響が大きすぎるので,逮捕勾留されやすい,ということになります。

そして,不利益の程度で考えると,数十万円の罰金よりも,逮捕勾留,そして報道が,仕事を失うことにもなりかねず,重大な不利益です。


自首のメリットがあるのは,まさにこの部分です。
つまり,逮捕勾留は,逃亡や証拠隠滅の可能性を考慮されるところ,わざわざ弁護士を付けて出頭して来た人間が,逃げたり証拠隠滅するわけない,ということで,逮捕勾留を避けられる,という仕組みです。

もちろん,自首ができない,すべきではない,別の手段を考えるべき,というようなケースもあります。
いろいろと,文字にできない(実際問題,それで逮捕勾留とか刑事処分はどれくらい回避出来るか,など)ことも多いです。

実際に,一人で「自首」のつもりで出頭したところ,後日,逮捕されたという相談も何度も受けています。不用意に行動する前に,早めに(すぐに)弁護士に相談した方がいいでしょう。

(ただ,セカンドオピニオンを求められたケースの中には,自首までする必要・メリットがないのに,弁護士に不安を煽られて,弁護士費用や時間を無駄にしたとものもあるので,気をつけましょう・・。本当に,こういうことはやめてほしいです・・・。)

今年2月に,共著でこういう本を出しました。

先を見通す捜査弁護術(第一法規)

弁護士向けの専門書で,捜査段階,つまり起訴されて裁判が始まる「前」までの刑事弁護について,いろいろな技術・知識を解説した書籍です。
刑事弁護の分野に限りませんが,意外と活字化されていないノウハウ,テクニックがありますので,その点に重点を置いて解説しました。書面の提出先といった形式的なところから,身柄解放や保釈のための準備などについても解説しています。

なお,私は,ちょっと変わったテーマですが,児童買春の事案をテーマに,「まだ捜査の手が及んでいない」「自首をするべきかどうか」「自首するならどうするべきか」ということを解説しています。
かなり取り扱いの多い分野ですが,あまり解説がないので,これまでの経験を盛り込んで解説をしました。

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