弁護士 深澤諭史のブログ

弁護士 深澤諭史(第二東京弁護士会 所属)のブログです。 相談等の問い合わせは, i@atlaw.jp もしくは 03-6435-9560 までお願いします。 Twitterのまとめや,友人知人の寄稿なども掲載する予定です。

タグ:法律相談

最近は,インターネット上の掲示板で,法律問題,法的事項について質問するということが一般的になってきました。

法的な質問専用の掲示板で,回答者が弁護士に限定されているものもあります。また,そうではないもの,一般的な質問も行われる掲示板で,回答者が弁護士に限定されないというところもあります。

よく相談されるような法律相談のキーワードで検索すると,質問も回答も沢山出てきます。
そこで今回は,こういった質問サイトで法律問題を尋ねる場合の利用法,価値について,考えてみたいと思います

最初に,質問事項が法律問題に限られない,回答者も弁護士に限られない掲示板サイトで,法律問題を質問する場合について考えてみます。

結論からいうと,このようなサイトで法律問題を質問することは,基本的に避けた方が無難でしょう。
もちろん,中には弁護士の,それもその分野にかなり明るい弁護士からの回答を顕名(名前の表示がある。)で得られる場合もあるでしょう。

ですが,ほとんどの場合は匿名の,それも非弁護士からの回答であることが想定されます
もちろん,弁護士でなくても,正しい回答が絶対にできないというわけではありません。日本においては,法曹資格を有しない者が法務の大部分を担っているという現状があり,資格がなくても法律分野に明るいことは珍しくはないからです。

もっとも,このような場での回答は,構造的に非常に質が低い,不正確な内容になります。
匿名で資格もない以上,そもそも回答として相当に無責任になる可能性が高くなります。

また,無資格であるにも拘わらず,質問されている法律問題に解答が可能であるということ,つまり,知っている(と思い込んでいる。)ということは,そのトラブルの(元)当事者である可能性が高いです。
そうなると,客観的な法制度よりも自分の願望が優先され,その願望に沿った独自の見解を示すという可能性も高まります

必然的に,匿名で,責任のない,それも紛争の当事者で資格を有しない者からの,願望の入り交じった回答を受け取る可能性が高くなります

ですから,単に興味本位であるとか,関連する資料のありかとか,間違っていても問題がない,あるいは間違っていたらすぐ分かるような質問以外は,しないこと,利用しないことが無難でしょう。

次に,法律問題に限定されている掲示板サイト,回答者が弁護士等有資格者に限定されている場合について考えてみます。
これも,先ほどの例ほどではないですが,利用には慎重になった方がいいでしょう。ただ,注意さえすれば,活用の余地は十分にあります。

弁護士が回答をしている以上,十分に正確なはず,無責任な回答はないはず,と思われるかも知れません
ですが,回答者が充分な知識を有することは,この手の質問掲示板サイトの正確性を担保しません。回答者が十分に知識を持っているだけでは,正確な回答は期待できないのです。

これは,どういうことかというと,法律問題について正確な有益な回答をするには,その前提として,問題について検討するに必要な充分な情報が必要です。これは,医師が診察をするのに問診をする,あるいは採血等の検査をすることが必要なことと同じような話です。

これを質問をする掲示板サイトについてみると,質問者は,自分が話したいこと,聞きたいことだけを投稿します。しかし,弁護士であれば常識ですが,法律問題で一番大事な事実は,しばしば相談者が自分から話さない,そして話したがらない事情であることが珍しくありません

そうすると,回答者がいくら正確に回答をしようとしても,そもそも前提となる情報が不十分なのですから,回答も不正確,不十分にならざるを得ません。

すなわち,質問サイトにはおいては,必要な事情が明白な簡単な事件,客観的な制度や処理の流れに関する質問であれば有益なことも多いでしょう。ですが,そうではない,複雑な問題,争いがある問題については,あまり有益ではない,リスクがあるということがいえると思います。

そういう場合は,回答者だけではなくて,質問者も,自分の問題を的確に把握し,必要な情報を網羅して適切な質問をする,つまり回答者だけではなくて質問者すらプロになる必要があります。もちろん,それは現実的ではありません

また,残念ながら,専ら営業目的で,抽象論一般論をコピー・アンド・ペーストだけして,見かけ上の回答数を稼いでいる弁護士もいるようです。そのような回答は有害ということは珍しいでしょうが,無益です。基本的な部分で間違っている,架空の法律をでっち上げた(!)のではないか,という回答の話も耳にしたことがあります。

ネット上の質問サイトの有益性を一切否定するものではありませんが,以上のような点に留意して利用することがいいでしょう。最近は,弁護士が電話相談を実施する事も多い(私も分野等によりますが,電話相談をすることはあります。)ですので,そういったサービスを利用することも有益です

もちろん,名前を名乗って,実際に電話で相談することには,少し心理的抵抗があるかもしれません。でも,大事な問題に関することですし,取り返しが付かないことになる,損をする,そして悔しい思いをしないためにも,相談に踏み切ることは,必要なことです。

参考:インターネット上の法律問題の注意点

以前,こんなツイートをしたことがありました。


実際問題として,相談を受ける際,私に限らず弁護士は,聞き取った事情を整理して,双方の主張はどういうものか,証拠はどういうものがあるのか(あると想定出来るのか。)を把握して,見通しを立てます。
話を聞いていると,十分に勝てそう,望む結果が得られそうだと想定して「大丈夫です。確実なことはいえないですが,概ね,ご希望に添う結果が期待できます。」っていったところ,その直後に,
「ですよね!それで,自分で●●やってみたら●●になっちゃったんで,それで相談に来ました!」
等といわれると,「やはり,もう難しそうですね」と,見通しを撤回せざるを得ない,残念な思いをしたことが何度かあります。
弁護士に相談したからといって依頼する義務があるわけではないので,自分でやってみる前に,成功をふいにしたり,あるいはできないことに無駄なコストを費やす前に,相談をした方がいいと思います。




ときどき,「自分でやってみる。それでダメだったら,弁護士に頼む。」という方がいらっしゃいます。
実は,事件類型によっては,それが有効であることも,全くないわけではない(珍しいけれども)のですが,基本的にお勧めできません。

通常,途中から依頼しても最初から依頼しても,弁護士に支払う費用は変わらないことがほとんどです。弁護士としては,「途中まで自分でやってみた」事情についても把握,検討しないといけないので,費やす労力が増えることはあっても,減ることはあまりないからです。特に本人訴訟ですと,かなりの割合で,自分に不利な主張をするという,いわばオウンゴールのケースがよく見られます。

また,逆に,費用が増える,あるいは結果が悪くなる,ということはしばしばあります。例えるなら,初期のガンが見つかったにもかかわらず,効果の無い民間療法だけを利用し,進行・転移をしてから病院にかかるようなものでしょうか。病気も法律問題も早期発見と治療が,そして,何よりも予防が大事です

相談だけであれば,あまり費用もかからないでしょうから,まずは相談してみること,「やってみてダメだったら」という発想は危険であるということに,留意は必要でしょう。

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