弁護士 深澤諭史のブログ

弁護士 深澤諭史(第二東京弁護士会 所属)のブログです。 相談等の問い合わせは,氏名住所を明記の上 i@atlaw.jp もしくは 03-6435-9560 までお願いします(恐縮ですが返事はお約束できません。)。 Twitterのまとめや,友人知人の寄稿なども掲載する予定です。

タグ:法律デマ

標記の件は,大きな話題を呼んでいるようですが,ここらで,誤導にあたる情報や,法律デマについてまとめてみたいと思います。

ネット上をいろいろ検索して,出る順でかき集めたものですので,概ね網羅できていると思います。
デマというより誤解を招きかねない,というレベルのものもあります。

ここでは,あえて一々理由は書きません(分かる人はすぐ分かりますし,分からない人は,弁護士にすぐに相談したほうがいいケースだからです。)。

法科大学院学生,司法修習生の方は,それぞれ「何故ダメか?」ということを,考えてみると面白いかも知れません(といっても,一部は,考えるまでもなく分からないと困りますが。)。

1.訴状は無視すればOK
2.訴状は受け取らなければOK
3.自分が請求書を書いたわけではないといえば証明責任で勝てる
4.お金が無いから大丈夫
5.数百人居るから頭割りで数百円
6.懲戒請求は権利だから大丈夫
7.懲戒請求はだれでもできるんだから責任は問われないはず
8.過去に呼びかけた例で請求棄却の判例があるから大丈夫
9.懲戒請求者の情報が対象弁護士に漏れている!これは個人情報保護法違反
だ!だから(?)大丈夫!
10.署名集めで他人の名前を使うことはよくある!だから,家族名義でも(?)大丈夫!
11.一括処理(?)されたらしいから(?),大丈夫!
12.なんか,懲戒委員会に事案の審査を求めない,ってきたから,自分は大丈夫!請求書の写しも弁護士には行っていないだろう!
13.不当かどうかは判決が出て決まることだからほっといて大丈夫!
14.これはSLAPP訴訟だ!だから(?)大丈夫!
15.弁護士が弁護士法3条1項以外の仕事をすると法律違反だから,懲戒請求は大丈夫。
16.「勝手に名前を使われた。知らない。」といえば大丈夫。
17.綱紀委員会が審査をしたのだから,正当だ!
18.綱紀委員会が懲戒委員会に事案の審査を求めない,という決定をしたのだから,被害は無い!
19.弁護士会が不当な懲戒請求だと認定をしたわけではないので,問題ない!
20.和解の提案に応じない場合は訴訟を行う,という通知は,全て脅迫!
21.移送申立てをすれば大丈夫。原告は手も足も出ない。
(最近追加)
22.賠償を命じる判決があったが,欠席判決だった。だから,これは懲戒請求の違法性を認めたものではないので,大丈夫!

以前,「こいつは悪い奴!拡散希望!」という記事でも解説しました。

こういうことは,以前から散見されますが,不法行為になる可能性が高い行為です。

それにもかかわらず,紛争当事者が紛争について一般公衆に,あるいは,相手方の家族や勤務先,学校等に紛争の事実を伝えるということが少なくないようです。

では,なぜ,こういう行為が横行するのでしょうか?

こればかりは,想像の範疇になりますが,①正しい自分が正しい結果を得るためだから許される(目的が手段を正当化),あるいは,②裁判は公開されているので,第三者に知らせるのも問題ないだろう(問題の誤解による混同),というような発想があるように見受けられます。

しかし,冷静になって考えてみれば,これらはいずれも誤りであり,それは簡単に想像のつくことです

わかりやすい例を挙げてみると,よく分かると思います。

例えば,消費者金融から借りた金を返さない債務者がいるとします
消費者金融は,もちろん債権者として債務者から金銭を回収する権利がありますし,返還請求の裁判をすれば,それは公開法廷で行われることになります。

ですが,だからといって,昔のドラマに出てきそうなシーンですが,その人の玄関に,「金返せ」と張り紙をするとか,勤務先に,「おたくで働いているYさん,借りた金を返さないんだけれども,どうにかしてください」と電話するとか,その子どもが通う学校に知らせるとか,そういった行為はいずれも不法行為であることは,容易に想像できると思います。

これらの行為については,不法行為責任が認められた裁判例もありますし,これを援助助長した弁護士に弁護士会の処分が下されたケースもあります

冷静になって考えてみればわかるのに,なぜ安易にこんな不法行為に及んでしまうのか

それは,やはり紛争の持つプレッシャー,紛争が人を感情的にさせてしまう,ということが大きな原因ではないかと思います。

だからこそ,紛争については弁護士や認定司法書士に依頼をするとか,少なくとも,それらから客観的なアドバイスを受け,かつ,それに冷静に従うようにすることが重要であるといえるでしょう。

簡易裁判所と少額訴訟手続について,用語が創作されたり,概念がごっちゃな例がありますので,すこし整理してみました。
※少し追記しました。

まとめ

①簡易裁判所は裁判所の一つの種類で,民事裁判では140万円以下の事件を扱う。
②簡易裁判所行う手続の中で,「少額訴訟」というものがある。
③「少額訴訟」は,簡易裁判所で,60万円以下の事件について,希望すれば行える簡易迅速な手続である。
④「簡易裁判」という制度はないし,「略式裁判」というのは,おそらく他制度と混同した表現である。
⑤本人訴訟を簡単にやるための手続ではない。

解説

裁判所には,いろいろな種類がありますが,その中でも,民事では少額(140万円以下)の事件を扱う裁判所が,簡易裁判所です(なお,簡易裁判所ではこれ以外の事件も扱います。念のため。)。

簡易裁判所での裁判は,若干の特例はありますが,基本的には地方裁判所で行う通常の裁判と同様に行われます(法律上の例外はそれなりにあるのですが,実務上の扱いは地方裁判所とあまりかわりません。)。

簡易裁判所では,更に60万円以下の金銭請求について「少額訴訟」という簡易な手続を利用することができます。原則として1回の期日で終了するなど,様々な特例があります。

つまり,簡易裁判所では,140万円以下の裁判を扱うが,手続は地方裁判所はあまり変わらないのが原則である。少額訴訟という手続も使えるが,こちらは60万円以下で,それを利用する手続は別に必要,ということになります。

このあたり,インターネット上の法律情報では,簡易裁判とか簡易訴訟とか,略式裁判(刑事事件で略式命令請求という手続はありますが)とか,用語や概念がごっちゃになっています。

ですが,要するに,簡易裁判所が担当する裁判は140万円まで,さらに,60万円までの裁判で希望があれば,少額訴訟という特別で簡単な手続がある,ということにまとめられます。

法律には類似の名前があったり,よくインターネット上の法律情報では勘違いされるところなので,注意が必要です。

更に,昔から一部では,少額訴訟は,本人訴訟を簡単にやる手続だと勘違いされています。そういう制度趣旨もあることは否定しませんが,基本的に,一期日で,しかも即時に調べられる証拠に限定されますので,準備も大変です。
また,少額訴訟は,被告が異議を述べれば直ちに通常訴訟に移行するので,これを当て込むこともできません。
少額訴訟は,本人訴訟のための魔法の杖ではありませんので,この点は間違えないようにしましょう。

インターネット上には,様々な有益な情報が掲載されており,法律に関する情報もまた,例外ではありません。
しかし,弁護士としてネットで法律情報を集めてきた,という方の相談を受ける中で,一見便利に見える一方,実は,非常にリスクのある行為であると思うようになりました。
なお,過去にもこういうコメントをしたことがあります。

まとめ
①インターネットの法律情報は不正確なものも多い
②仮に情報が正確であっても,正確に適用できないと意味がなく,それは難しい
③必然的に,間違った情報だけをかき集めてしまう構造になっている

1.インターネット上の法律情報の正確性

インターネット上の法律情報は,全部が全部,間違っているとはいいませんが,不正確なものも多々あります。
これには,やむを得ない理由があります。法律というのは,事案によりますが,大部分が何らかの紛争の解決指針であったりします。つまり,紛争の時,どちらが正しいか,ということを決めているルールだ,という側面があります。

そういうわけで,紛争の当事者が,「正しい自分」に都合のよい解釈,理論を述べているだけ,ということも珍しくありません。

2.情報が正確であるということと,それを正確に使えることとは別の問題
法律情報というのは,それだけでは,通常はほとんど役に立ちません。
法律というのは,事実に適用して初めて法律効果が発生することが原則です。となると,正しく事実を把握すること,把握した事実と証拠により証明可能な事実の差異を把握するなどの作業が必要です。

いくら法律情報が正しくても,自分のケースに正確に当てはめなければ意味がありません。
薬が100%正しく製造されていても,自分の病気に当てはまる薬を,正しい用法用量で使わないと意味が無い,かえって危険であることと,同じことです。

3.インターネットで自分に都合のよい法律情報を漁る旅に・・・
以上で紹介した記事でもお話ししましたが,「自分は正しい」→「法律は正しい者の味方」→「だから正しいと信じている自分に味方する法律情報だけが正しい」という構造があります。

こういった状態に陥ると,誤った対応で事態が悪化する,本来の正当な権利を実現できない,負担するべきでもない義務を負担する,ということになりかねません。更に思いこみを深めてしまうと,適切なアドバイスを受け入れて行動することも難しくなってしまいます。

インターネットを利用した情報収集を否定するわけではありませんし,しばしば有益ではありますが,ご自身の問題,特に紛争については,法律デマの迷路に嵌まる前に,早めに弁護士に相談すべきだと思います。

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