弁護士 深澤諭史のブログ

弁護士 深澤諭史(第二東京弁護士会 所属)のブログです。 相談等の問い合わせは, i@atlaw.jp もしくは 03-6435-9560 までお願いします。 Twitterのまとめや,友人知人の寄稿なども掲載する予定です。

タグ:法律デマ

よくネットで耳にする話

よくネットで、地方裁判所の判決について、自分の感情に合致しないからといって「所詮は地裁だし」という言動がままみられます
これは、要するに、地方裁判所は、高等裁判所、そして最高裁判所より「下」の裁判所であり、しかも、通常は第一審の裁判所(簡易裁判所も家庭裁判所もありますが)から、二軍みたいなイメージが持たれているようです。

これは裁判所に限ったことではなく、弁護士も、特定の人たちにとって都合が悪い仕事をしていると、「そんな仕事はダメな・売れない弁護士しかやらない」みたいな言動がありますが、それと同種であるといえるかもしれません(自分に都合の悪いことをする連中や劣悪な連中だと思い込みたいというのは、自然な心理です。)。

地裁は質が低いのか?

さて、こういう議論は正しいのでしょうか?
賢明な読者諸氏にはお答えするまでもないですが、もちろん間違っています

もちろん、ここの裁判官の資質の問題もありますので、絶対に正しい・間違っているという趣旨ではないですが、基本的に地裁だから能力が劣っているとか、そういうことはありません

地方裁判所の重要性

確かに、高等裁判所には、地方裁判所より経験豊富な裁判官が配置されます。ですが、一方で、地方裁判所の裁判長にも、経験豊富な裁判官が配置されます
地方裁判所が未熟な裁判官で溢れているかといえば、決してそういうことはありません。また、職制上、一人で通常訴訟を担当するには、原則として10年、例外でも5年のキャリアが要求されます(なお、この原則と例外は運用上逆転していて5年が原則です。)。

また、実質的に考えても、地方裁判所は、(簡易裁判所が第一審でない限りは)一番最初に証拠に触れる仕事です。
イメージするとわかりやすいと思いますが、最初に当事者が供述する裁判所でもあります。高等裁判所は、それを書き取った調書を読むだけですが、地方裁判所は、生身の人間に触れます。高等裁判所でも供述をさせることはありますが、それは多くの場合「2回目」あるいは「やり直し」にすぎません。
ですから、重要な裁判所ですし、「二軍裁判所」なんてとんでもない話です。裁判所も、その前提で人材を配置しているはずです。

そういうわけで、個別の裁判官の資質を別にすれば、類型的に地方裁判所の質が低いという議論は誤りだと思います。

控訴のルール

さて、それでも、地方裁判所の判決に納得がいかない、誤りがあるという場合は、控訴という手続きで、高等裁判所で争うということになります。
この場合、地方裁判所での審理との関係はどうなるのでしょうか?
スポーツの再試合みたいに、やり直しになるのでしょうか?
実は、この関係には、3種類ほどの考え方があります。①覆審制、②続審制、③事後審制、というものです。

①覆審制とは、裁判を1からやり直すというものです。控訴というと、みなさんこういうイメージがあるでしょうが、現行法の通常訴訟では、こういう考えは採用されていません。
第一審が軽視される、無駄になる、生身の人間の初回の供述を無視することになるからです。2回目ですと、反対尋問を予想していろいろ対策も可能になるからです。
無駄が多いし、不合理でもあるからです。
スポーツでいえば、再試合でしょう。
②続審制とは、これまでの証拠や主張を引き継いで、さらに、新しい証拠があればそれを採用して、さらに審理を続行し、改めて判決するという仕組みです。
これは、民事訴訟において採用されている考えです。なお、実際には、裁判所の裁量で、あまり証拠採用しないケースもあります。
「自分だったらどう判決するか」という考えに結びつきやすく、さらに新しい主張立証もあるので、③よりはひっくり返りやすい仕組みであるともいえます。
スポーツでいえば、延長試合と例えられると思います。
③事後審制とは、これまでの証拠や主張を引き継ぎますが、審理の対象は事件というより、原審の判決である、という形式です。
新しい証拠提出は原則としてできません。第一審の結果をみて、その判決が合理的かどうか、ということで判断します。
これは、刑事訴訟において採用されている考えです。
ですから、一般的に刑事訴訟においては、控訴審でひっくり返る可能性は高くはないといわれています。同じ証拠関係が維持されるからです。
もっとも、実際には、特に検察官が控訴した場合、大量に証拠採用されるなどして、事実上の続審になっている、などと批判されています。
スポーツでいえば、試合終了後に写真判定をするとか、そういう形式であるといえます。

まとめ

  1. 地方裁判所は二軍裁判所ではない。むしろ重要だし、それにふさわしい人材配置が望まれ、現にされている。
  2. 控訴のルールは、民事事件では延長戦、刑事事件では、事後判定というのが原則の考え方

以前、大量懲戒請求事件にみる誤導・法律デマのまとめという記事を書きました。

基本的に網羅したつもりでしたが、まだまだ追加があるようでした。

ということで、以下に追加します。なぜ間違っているかの詳細については、関係者の方は弁護士にご相談を。

23.弁護士会が懲戒請求を受理したのだから適法だ!少なくともわるいのは弁護士会だ!
→受理とはなにか、どういう制度か、よく勉強する必要があります。
24.懲戒請求の内容は、その体をなしていない(自分で言うの?って話ですが)、実際に処分される可能性はなかったのだから損害はない!
→その論法が通じれば、振り込め詐欺はほとんど無罪になりますね。
25.国際関係などをたくさん主張することが有効!
→法廷の外で、どうぞ。本件ではまず意味ありません。
26.非専門家が不十分な知識で行ったことなので責任を問うべきではない
→被害者が弁護士で類似の裁判例が最近でておりますが、読みましたか?
27.「〇〇」の「〇〇」で「〇〇」だから問題ない。
→なんか用語を括弧書きすることが流行っているみたいですが、カッコ書きしても意味はわからないです。裁判文書でもそうですが、用語は正確に、自分も相手も共通の理解ができる使い方をすることが大事です。そうしないと、裁判でも不利になります。



なんどもなんども強調していますが、ネットの体験談をあてにしてはいけません
それは、その人にとっては正しいかもしれませんが、あなたにとっても正しい可能性は、実際にはほとんどありません
少しでも法律実務かじっていると、ネットには「法律問題に関する創作実話(実話っぽく見せかけた創作)」が溢れていることに気がつきます。
あと、破産=すべて終わり、ではありません。そんな制度だったら誰も使いません。また、会社が破産しても事業を生き残らせることができる可能性もありえます。
甘い言葉を囁く〇〇コンサルに騙されないようにしてください
彼らは最後まで付き合う気はありません。付き合うことができないからです。だから、あなたの歓心を買うためなら、なんでも都合のいい言葉を並べ立てる、悪質な者も、中にはいます。最後まで付き合えないのなら、最後の責任を取らなくてもいいからです
一方、弁護士は、危機時期の者から相談を受けた場合には、かなり厳重な法的責任が課せられます。

なお、弁護士は何でもかんでも破産させる、という声も聞こえますが、中にはひょっとしたらそういう弁護士もいるかもしれませんが、基本的に考え難いことです。
そもそも、破産という手続きはかなり大変ですし、破産しないで解決できるのであれば、それに越したことはありません。お金の取り立てで、裁判せずに解決できるのに、あえて裁判を起こすことは通常考えられないことと、同じことです。

インターネットの普及により、誰もが手軽に情報の発信者となることができました。
それに伴い、これまで、放送業界や著述業など、プロだけが意識をすればよかった名誉権、プライバシー、著作権の問題について、一般市民も発信をする以上は意識をすることが必要になってきました。

と、こういう枕詞を、もう述べることが野暮というか、古臭く感じるくらい、市民による情報発信は普及し、あるいは常識になっています。

ここでは、著作権に関するデマ、特にネットで流布され、行われているデマについて、紹介しようと思います。

ちかく、ひょっとしたら、権利者側(無断転載の被害者)からのデマについても解説するかもしれません。

1.引用だから大丈夫
一番多いのですが、過去に解説した通り、引用の要件は、かなり厳しいです。出典を明記すればよいとか、そういうものではありません(そもそも、正確に言えば、出典の明記は引用者の義務ですが、引用の要件ではありません。)。

2.少し転載しただけだから大丈夫
よく漫画の転載である話ですが、一巻丸ごとではないから大丈夫とか、そういう話があります。
一話丸ごとであれば、基本的に引用の要件は満たさないでしょう。また、場合によっては1ページ程度でも、引用の要件を満たさない場合がありえます。
この辺りは、形式的に決められる話ではありません。

3.お金を取っていないから大丈夫
そういうルールはありません。転売目的でないなら泥棒しても良い、というようなレベルの話です。

4.苦情があれば削除するから大丈夫
そういうルールもありません。
万引きしてもばれたら商品返すから大丈夫って、ネットで言ったら袋叩きにあいそうな話と、同レベルです。

5.親告罪だから大丈夫
親告罪は、告訴されないと犯罪にならないという意味ではありません。また、それが不法行為であることとも関係ありません。
一例を挙げれば、器物損壊罪も親告罪ですが、だからといって、気軽に日常的に人の車のエンブレムを剥ぎ取っていいわけがありません(どこかの漫画の主人公がやっていましたが)。
4についてもいえますが、「ずーっと、苦情を言われなかったので・・・」ということになると、賠償額が積算されてとんでもないことになる可能性もあります。

6.二次創作だから大丈夫
これは、二つ意味があって、二次創作についても、二次創作者は著作権を有します。
ですから、二次創作を勝手にコピーなどすると、二次創作者の著作権侵害となります。
一方で、原著作者は、二次創作物についても権利を保持します。
ですから、自分が作ったといえども、それが二次創作であれば、原著作者の許可なく、公開すると著作権侵害に問われかねません。
イラストではなくてグッズだとまずいとか、いろいろな言説があるみたいですが、法的には同列です。
二次創作物の頒布等は基本的に犯罪です。訴えられたらどうとか、そういう以前の話です。
(もっとも、私はこういう規制は厳しすぎるし、ファンアートは素晴らしい文化なので、これに一定の配慮をする必要もあると思います。緩和する立法をするか、それがないのであれば、ぜひ、権利者は、二次創作ガイドラインを策定してほしいと思います。)

法律デマについては、しばしばネットで発信してきましたが、一定の傾向があるようです。

それは「悪い奴を懲らしめる」という場面で、単純明快で、形式的な行為をすれば、それで解決する、というものが、かなりウケがいいようです。

もちろん、これさえすれば、形式的な対処で万病が治る治療法がないことと同じく、法律問題についても全く同じことがいえます。

他者からの権利侵害など、法律問題でお悩みの方は、ぜひ、ネットの法律デマではなく、実際に弁護士に相談することをお勧めします。 

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