弁護士 深澤諭史のブログ

弁護士 深澤諭史(第二東京弁護士会 所属)のブログです。 相談等の問い合わせは, i@atlaw.jp もしくは 03-6435-9560 までお願いします。 Twitterのまとめや,友人知人の寄稿なども掲載する予定です。

タグ:本人訴訟

まとめ
①  本人訴訟支援とは,弁護士等代理人をつけない本人訴訟において,書面作成や相談等のサポートをすることをいう。
②  本人訴訟支援は資格がないとできない
③  本人訴訟支援は,弁護士と司法書士が行える。
④  司法書士が行える本人訴訟支援は,言い分の整理や形式的な手続の助言等に限られる。それを超えるときは,自分の裁判上の行為が無効と判断され,却下判決や反論無しということで敗訴するリスクがある。
⑤  弁護士や認定司法書士(ただし,簡裁における手続に限る。)による本人訴訟支援は,④の制限がない

解説
本人訴訟支援」というサービスがあります。
本人訴訟とは,訴訟を,弁護士や認定司法書士(司法書士の中でも特別な資格を得た司法書士で140万円以内の事件について,簡易裁判所で訴訟代理したり,あるいは裁判外で交渉代理ができます。)に依頼せずに行うことをいいます
「本人訴訟支援」とは,本人訴訟について,主に書類作成やそれに関する相談を行うサービスをいいます。

さて,本人訴訟支援は,訴訟という法律事件について,意見を述べるという鑑定や,書類を作成して訴訟法上の法律効果を発生変更したり,保全明確化するので法律事務にあたります。ですから,弁護士法72条本文の適用があります
したがって,(業務として報酬目的での)本人訴訟支援は,無資格で行うことはできません
弁護士資格以外であれば,司法書士の資格があれば,本人訴訟支援をすることができます(ただし,以下に述べる範囲の制限があります。)。
司法書士は,裁判所に提出する書類の作成業務とそれに関する相談を行うことができますので,本人訴訟支援を行うことができます。
なお,たまに勘違いがありますが,司法書士の裁判書類作成業務は,審級や訴額の制限がありません。ですから,簡易裁判所だけではなく,地方裁判所や高等裁判所,最高裁判所への提出書類の作成業務も可能です。

それでは,司法書士の本人訴訟支援の範囲はどのようなものでしょうか?法廷に立たない,代理をしない,形式的に本人の名義での書類であれば,いかなる相談,支援もできるのでしょうか
いいえ,そうではありません。これについては,「司法書士・行政書士の書類作成業務の範囲について」で解説したとおりです。つまり,誤解を招かない程度に言い分を整理して書類にする,直す行為が可能であり,かつ,それに限られ,専門的法律知識を用いて何か内容を提案をしたり,あるいは判断を提供したりする行為は含まれない,ということになります。

それを超えた場合,どのような扱いになるでしょうか。その場合は非弁行為という扱いになりますので,裁判上の効果は無効と扱われる可能性があります。
裁判所は,訴え提起が無効であるとして却下判決をすることができますし,そのような先例もあります。また,被告側であれば,反論が無効ということで,反論無しとみなされて,敗訴することもあるでしょう。
また,相手方はそれについて指摘するでしょうし,紛争と関係のないところでリスクを負う,弱みを抱えることになります。
ですから,司法書士による本人訴訟支援を利用するのは,自分の言い分が決まっているので,それを整理して欲しいだけである,専門的な判断は要らない,大丈夫であるという自信がある場合に限るべきでしょう。要するに,手続や形式面でだけの助言が欲しい,あとは書面を整理して欲しいという場合にだけ利用するべきということになります

それを超えて,自分の希望を実現するよりよい方法,すべき主張や証拠の助言や専門的法的な判断,助言が欲しい場合は,弁護士か認定司法書士(ただし訴額が決まっており,かつ,それが140万円以内の場合)に相談をするべきであるということになります。

その際,そもそも本人訴訟支援を利用することの適否についても,助言が得られると思います。

弁護士によりますが,ほとんどの弁護士にとって紛争を取り扱う,一方の代理人になって交渉や裁判をすることは,日常業務の一つです。

さて,紛争について相談を受けるとき,特に既に交渉を始めているとか,そこまで行かなくても相手方から最初の通知・請求を受け取った時点であると,精神的負担を訴える相談者は少なくありません

それは至極もっともなことです。そもそも紛争というのは非日常のことです。特に法的なトピックということになると,人生でそうそう何度もあることではありません。更に,紛争・トラブルといったことについて,この社会は,強い忌避感があります。

ですから,紛争当事者が紛争について,それ自体に大きなストレスを抱えてしまうことは,至極自然なことです。

また,紛争というのは,双方に見解の相違があるから生じるものです。相手方の意見,言い分を聞く必要があります。普段,私たちは日常生活で自分の考え,意見を真っ向から否定されることには慣れていません。仕事の現場でそういうことはあるかもしれませんが,通常は,配慮された表現がされます。ですが,交渉の場では,そんな配慮はなく,真っ向から否定されます。

そうすると,一方当事者としては,自分が正しいのに,間違った相手の言い分で否定をされた,という強いストレスを感じることになります。勢い,それが実際にそうであるかどうかは別にしても,内容以前に,無礼であるとか高圧的であるとか,そういう感想まで抱くという事になります。

悪い奴の味方をしている悪い弁護士が,自分に酷い態度を取っているに違いない,などと勘違いして,不合理な逆恨みにつながる事もよくあることです。

これは非常に大きなストレスです。そして,ストレスを感じるだけではなくて,冷静で合理的な判断への大きな支障となります。勢い,特に自分が本人で交渉し,相手方に代理人弁護士が付いているケースでは顕著ですが,そのストレスから免れようとして,感情的な対応,行動をとってしまい,結果的に不利な合意をしてしまう,ということは珍しくありません

また,そうなってしまった場合,間違っている,無礼な相手に自分は譲歩してしまった,得をさせてしまって,自分は損をしてしまった,という事実が残ります

これは事件後も大きなストレスになります。そういう悔しさ・ストレスを忘れることができればいいのですが,そうでない場合は,「自分の思う通り・感情通りにやったのだから,いいのだ」などと,ある意味,自分で自分に言い訳をしながら過ごすということになります。

よく,相手方に代理人弁護士が付いているのに自分はつけないと不利になるといいます。それはそれでその通りなのですが,その原因は交渉技術とか,見通しへの判断の適切さとかだけではありません

弁護士に代理をさせることで,その弁護士を盾にすることができる,ストレス原因から遠ざかれること,それにより,より合理的な判断が可能になるということも,弁護士に代理をさせる大きなメリットです。
逆に紛争を自分で取り扱う場合,更に相手方にだけ弁護士がついている場合,ストレスを抱えるだけではなくて,そのせいで不利な結果になる,それを事後に引きずるというのは,リスクであるといえます。

弁護士を付けるかどうかは,以上の点も考慮して決めるべきでしょう。

以前,こんなツイートをしたことがありました。


実際問題として,相談を受ける際,私に限らず弁護士は,聞き取った事情を整理して,双方の主張はどういうものか,証拠はどういうものがあるのか(あると想定出来るのか。)を把握して,見通しを立てます。
話を聞いていると,十分に勝てそう,望む結果が得られそうだと想定して「大丈夫です。確実なことはいえないですが,概ね,ご希望に添う結果が期待できます。」っていったところ,その直後に,
「ですよね!それで,自分で●●やってみたら●●になっちゃったんで,それで相談に来ました!」
等といわれると,「やはり,もう難しそうですね」と,見通しを撤回せざるを得ない,残念な思いをしたことが何度かあります。
弁護士に相談したからといって依頼する義務があるわけではないので,自分でやってみる前に,成功をふいにしたり,あるいはできないことに無駄なコストを費やす前に,相談をした方がいいと思います。




ときどき,「自分でやってみる。それでダメだったら,弁護士に頼む。」という方がいらっしゃいます。
実は,事件類型によっては,それが有効であることも,全くないわけではない(珍しいけれども)のですが,基本的にお勧めできません。

通常,途中から依頼しても最初から依頼しても,弁護士に支払う費用は変わらないことがほとんどです。弁護士としては,「途中まで自分でやってみた」事情についても把握,検討しないといけないので,費やす労力が増えることはあっても,減ることはあまりないからです。特に本人訴訟ですと,かなりの割合で,自分に不利な主張をするという,いわばオウンゴールのケースがよく見られます。

また,逆に,費用が増える,あるいは結果が悪くなる,ということはしばしばあります。例えるなら,初期のガンが見つかったにもかかわらず,効果の無い民間療法だけを利用し,進行・転移をしてから病院にかかるようなものでしょうか。病気も法律問題も早期発見と治療が,そして,何よりも予防が大事です

相談だけであれば,あまり費用もかからないでしょうから,まずは相談してみること,「やってみてダメだったら」という発想は危険であるということに,留意は必要でしょう。

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