弁護士 深澤諭史のブログ

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タグ:書面作成

非弁行為について,よくある誤解をまとめてみました。

なお,他に「非弁行為とは?:書面作成/代行だから非弁ではない!?」でも解説しています。

よく,「●●だから非弁ではない」という主張がありますが,その●●全てが非弁になるわけではない≠●●であれば非弁ではない,という理論的関係があります。
このあたり,あえて誤解を招くような宣伝をしているケースもあるので,簡単に説明します。

①代行・使者だから非弁ではない
代行や使者であっても,その代行に至るまでの間に,法律関係を明確化するための作業や,法的評価,見解を明らかにする「鑑定」などの法律事務が含まれれば,非弁行為になり得ます。

②交渉・代理していないから非弁ではない
非弁行為になる法律事務には,代理が含まれますが,代理以外の鑑定や一般の法律事務も含まれます
代理をしている場合,多くの場合は非弁行為になりますが,代理していないからといって,非弁行為にならないというわけではありません
「法律顧問」という肩書きで,交渉等を一切しなくても,相談助言という,鑑定・法律事務を行っているのであれば,非弁行為になります。

③定額だから非弁(提携)ではない
これは,非弁提携(弁護士が非弁護士と提携をする,依頼者の紹介を受ける等)でもよくいわれるのですが,報酬が定額であるとか,会費名目であるからということは,非弁行為,非弁提携を否定する事情にはなりません
むしろ,最近の非弁提携では,会費等の別名目で定額にして誤魔化すケースが多数です。

④書面作成だから,非弁ではない
書面作成であっても,弁護士法72条本文の法律事務に該当するなら,非弁行為になり得ます
なお,司法書士等の他士業の資格があれば,その他士業の資格の範囲であれば法律事務が一部取り扱えます。
他士業の資格については,書面作成が認められているケースが多いのですが,この場合の書面作成とは,言い分を法的に整理して,文書の受け取り人が誤解しない程度にする,という程度の関与しか認められていません。要するに言い分をそのまま整理するだけであり,有利な主張,証拠を検討・提案するといった行為は認められないのが原則です。
このような書面作成型の非弁行為については,事後的に,その書面でなした行為が無効と判断されて,取り返しの付かない被害が生じていることもあるので,利用者としては,注意が必要です。

⑤カタカナ語なので非弁ではない
論外の主張ですが,最近は,意識高い系非弁・非弁提携というべきようなケースも散見されますので,カタカナ語にまどわされないことが大事です。

運転免許がないと自動車を運転できないように,医師免許がないと医業ができないように,弁護士資格がないと弁護士業務をすることはできません。
 
ところが,無免許運転が今でもなくならないように,弁護士資格がないにもかかわらず,弁護士業務を行う例が後を絶ちません。弁護士業務を違法に無資格で行うことを「非弁行為」あるいは単に「非弁」といいます。
 
ここでは,非弁について,簡単な説明をします。
 
まとめ
 
①弁護士資格がないと弁護士業務が出来ない。
②「非弁」「非弁行為」とは,弁護士資格がないのに弁護士業務を行うこと
③非弁行為は犯罪であるし,頼んだ行為が「無効」にされたり,疑義を差し挟まれるなどトラブルの原因になる。
④弁護士業務(法律事務)のうち,一部の業務は,司法書士や税理士等の有資格者でも行える。
⑤書面作成だから,代行だから非弁ではない,というのは間違い。
 
1.非弁とは
 
非弁とは,弁護士資格がないにもかかわらず,弁護士業務を行うことをいいます。非弁行為ともいいます。
また,弁護士が,こういう無資格者に協力をすることもあります。弁護士が非弁行為のために名義を貸す等することを「非弁提携」といいます
 
2.弁護士業務とは
 
弁護士でないと行えない弁護士業務の内容は,弁護士法72条本文に定められています。
それによると「法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務」と定められています。
大雑把にいうと,他人の具体的な事件,案件に関する「法律事務」であり,この中には,代理して交渉をするとか,法律相談に乗るとか,法的な文書を作成するとか,そういった行為等が含まれます(自分の法律事務を自分で取り扱うことは,もちろん問題はありません。保険会社が示談代行できるのは,あくまで保険会社は自分自身の保険金支払いに関する法律事件を扱っているからです。)。

なお,他に報酬目的,業務性などの要件もあり,また,いわゆる「事件性(?)」の議論もありますが,かなり細かい・専門的な話になりますので,今回は省きます。
また,司法書士・税理士等の資格があれば,弁護士法の例外として,その資格の範囲内で法律事務が取り扱えます
 
3.なぜ非弁行為が流行るのか
 
運転免許における運転や医師免許における医業等ほどには,他人の事件について行う法律事務には資格が必要である,という意識がさほど浸透していない,ということが主な理由だと思います。
 
また,イメージの問題ですが,弁護士は敷居が高い,料金が高い,というような理由から敬遠され,あるいはそうであると宣伝する業者が,「うちは安いですよ」というように勧誘する例が多いようです。実際には,むしろ,弁護士より高額であるケースがほとんどです
 
4.非弁行為を依頼するとどうなるか
 
非弁行為そのものは犯罪です。無免許運転が犯罪であることと同じことです。ただし,依頼者側では,非弁行為を依頼しただけでは,通常は直ちに犯罪が成立しないとされています。
 
もっとも,非弁業者に依頼して行った行為,契約は,事後的に無効と判断されるリスクがあります。また,仮に有効であるとしても,法的知識等について資格の裏付けがない者が関与している以上,解決に結びつかない,あるいは,内容において不利になるなどリスクもあります。
 
また,私の経験上,そもそも非弁業者の「料金」は,弁護士より高いか,少なくとも,広告内容と実際にやってくれることの一致がなく,「高くつく」ことがほとんどです。この点で,非弁行為の問題は,消費者被害の問題であるといえます。
 
5.「非弁ではない」という主張もあるが・・・
 
中には,これは書面作成である,代行に過ぎないから,非弁ではない,という主張がなされることもあります。
しかしながら,書面作成だから,代行だから,非弁行為になる/ならない,という解釈は,裁判例上も,実務上もとられていません。だから理由にならないのです。
法律上は,「法律事務」と定められており,これには代理が含まれますが,代理でなければ法律事務ではない,とももちろんいえません
 
もちろん,非弁行為にならないような書面作成や代行もあり得ます。
ですが,裁判例では,インターネット掲示板の管理者に投稿の削除を請求する行為や,債権の取立てや交渉のみならず,支払いを受け取ったり,登記の手続きといった,かなり形式的な行為も法律事務であるとしています
そうすると,法的な事項について,書面作成やなにかの通知の代行を行う場合,アドバイス等,依頼者に言われたことをそのまま伝える以上のことをすると,非弁行為に該当する可能性が高いのではないかと思います。

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