弁護士 深澤諭史のブログ

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タグ:引用

インターネットでは頻出の話題、論点ですが、引用と著作権の問題について、解説しました。

こちらのリンクからどうぞ
 

ちょっとTwitterで反応が大きかったので,すこし関連することを解説します。
この分野に限らないのですが,法律情報には,「議論が白熱すればするほど,都合のよい法律デマが出てくる」という現象があります。
そこで,ここでは,よくあるデマ,誤解を簡単に解説します。

① 真実であれば何を書いてもよい。
→そんなことはない。真実で免責されることは稀で難しい。
② 有名人などは「公人」であり,その人達については何を書いてもよい。プライバシーも保護されない。
→ とんでもない。「公人」が一律どうであるとかそんな都合のよい法律はない。
③ 悪い人,悪事については,自由に投稿して良い。世直しだ。
本当に多いが,そんなことはない。ただのリンチである。というか,なぜそれを匿名でやるのか。
④ 違法な投稿をしている者については,自由に中傷してもよい。
→同じ穴のムジナである。暴力団同士の抗争だって処罰される。
⑤ 公開情報であれば,他の場所(=ネット)で公開してもよい。
誤解である。これについては先例になる裁判例もある。また,「「うっかり写っちゃった!?」ネット写真投稿の法律問題」も参照。
⑥ 「引用」だから問題ない。
「引用」として適法になる要件は非常に厳しい。
⑦ 苦情が出たら,やめればよい。
もう遅い。法的責任は苦情時ではなく行為時に生じる。

よく「無断転載禁止」などと,イラストや文章に記載してある例がありますが,これにはどういう意味があるのでしょうか?

1.法律上の原則は,無断転載禁止

法律上の原則は,無断転載禁止です。
原則として,全ての創作物には,著作権という権利が作者に発生します。これは,いろいろな権利が含まれますが,無断でコピーされて利用されない(ただ,例外も多くあります。),という権利も含まれます
このような権利を侵害した場合は,不法行為ということで侵害者は,賠償責任を負担します。また,犯罪にもなります
よく,テレビ番組や楽曲の無断アップロードで摘発されるという事件がありますが,それは,これによるものです。

2.基本的に,わざわざ「無断転載禁止」などと書く意味は無い

そもそも,法律上の原則は,著作権者の意思に反して転載,つまりコピーを作成することは違法であり,犯罪なのですから,「無断転載禁止」と書く意味は,法的にはありません
たとえば,「万引き禁止」「万引きは発見次第,警察に通報します」と,お店に書いてなかったとしても,「じゃあ,万引きOKなのか?」というと,そんなことはもちろんありません。

3.それでも「無断転載禁止」などと書く意味

「無断転載禁止」などと書く意味があること「も」あります。
まず,法的なところでいえば,あまり想定し難いのですが,転載自由が原則な発表の場において,自分のものはそうではない,と明確にするという場合です(もっとも,そういう場所が想定出来るのか,できるとして,注意書きとの優劣など,一概にいえない,難しい問題があるでしょう。)。
他,法的な意味はなくとも,警告的な意味はあるかもしれません

4.引用の問題

法律上の引用というのは,著作権の例外(権利の制限)で,適切な引用であれば,他人の著作物を複製して利用・配布出来るというものです
これは,法律上の,著作権の制限ですので,いくら著作権者が「引用も禁止だ」と主張をしても,適切な引用を禁止することはできません
ただ,ネット上で非常に大きな勘違いがあるのですが,引用の要件というのは,非常に厳しいものです。全体のコピーでないならOKとか,出典があればOKとか,そんな生やさしいものではありません
私の感覚的には,ネットで行われている「引用」は,特にアニメと漫画については,9割方は違法・犯罪行為に該当してしまっているのではないか,と思います。
なお,「無断引用」という言葉がありますが,そもそも,引用は無断でできる,著作権の制限なのですから,あまり意味のない用語です。
このあたりの問題については,拙著「そのつぶやきは犯罪です」でも,解説しています。

5.親告罪との関係

これもよくネットで目にする言説ですが,著作権侵害は,親告罪であるから転載が大丈夫とか,そういうことはありませんので,混同しないようにしましょう。
そもそも,親告罪は,告訴されるまで犯罪が成立しないとか,違法性を有しないとか,そういう制度ではありません

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