弁護士 深澤諭史のブログ

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タグ:弁護士紹介

意外と、このあたり、意識されていないんですよね。
なお、現行弁護士法の下で弁護士紹介業を営める可能性については、拙著「非弁対策Q&A」でも検討しております。 

弁護士を紹介してもらうより弁護士に紹介してもらった方がいい理由、についてお話しします。

不貞事件における探偵、交通事故における整骨院など、良い弁護士を紹介すると標榜している業者は少なくありません
中には、非弁行為にご注意を、そうならないためにうちでは弁護士を紹介しています、などと宣伝している業者もあるようです。
もちろん、弁護士を紹介する行為自体は、なんらの違法性もありませんし、利用者の利便にもかなう行為です。

もっとも、このような紹介を受けることについては、可能な限り、慎重になったほうがいいでしょう。
理由はいくつかあります。

まず第一に、繰り返し説明しているように、原則として弁護士を紹介する弁護士紹介業は法律で禁じられています。完全に無料であれば問題はありませんが、有料、そしてここでの有料は、利用者が無料でも弁護士にとって有料(たとえば広告料名目とか)である場合も含みます。

無料紹介かどうかは、外からはわかりません。仮に有料であれば、その紹介料が弁護士費用に上乗せされることになります。しかもそれに気がつくことはできません。
さらに、違法な弁護士紹介を受ける行為は、弁護士にとっては、依頼者のお金に手をつけるのと同じくらい、あるいはそれ以上に悪質な行為であるとされています。
そのような、弁護士生命に関わる非行を敢行する弁護士に、まともな事件処理を期待することは難しいでしょう。横領等を行う危険な弁護士かもしれません。
すなわち弁護士の紹介を受けると、危険な弁護士をつかまされるリスクが高い場合もあるということです。

第二に、弁護士が誠実に仕事をすることを妨げる、もっというと、業者から紹介された弁護士は、誠実に仕事ができるかどうか、疑問が生じることもある、ということです。

これはどういうことかというと、たとえば、不貞事件で、不貞をしていることは間違いないが、証明するための調査には100万円以上かかる、しかし、この事案では裁判でも100万円とれるかどうかわからない、というケースがあったとします。
この場合、弁護士であれば、そのリスクを説明して対応を考えることになりますし、それが義務付けられています。
しかし、探偵業者であれば、このリスクを説明すると、依頼が受けられなくなるので、説明をする動機がありません。それどころか、探偵業者には、こういう判断はできません。また、場合により、法律相談として非弁行為になる可能性があり、そもそも法的にできない可能性が高いでしょう。

一方で、探偵業者から紹介を受けた弁護士の場合、特に、その紹介に依存しているのであればあるほど、探偵業者の顔を潰して、「費用倒れですよ」とは言いにくくなります。そうすると、本来得られる重要なアドバイスが得られないリスクもある、ということになります

また、整骨院のケースでも、交通事故の損害賠償の実務上、整骨院に通院をすることは、正当な賠償を得る上では、マイナスになってしまうケースもあります
弁護士であれば、その点を説明できますし、そして説明するべきです。
もっとも、先ほどと同じ理由で、整骨院から紹介を受けた弁護士は、誠実に仕事をしようとすればするほど、紹介者と利益が相反する可能性があるということになります

最終的に裁判で、あるいは交渉で解決する、全部か一部が法的な問題であれば、まずは弁護士に相談をするべきです。その上で、弁護士以外の手助けが必要であれば、弁護士を紹介してもらうのではなくて、弁護士から紹介をしてもらうべきです。

非弁行為と思しき事業をやっている業者の中には,「交渉すると非弁になるのでしません」とか,あるいは「弁護士が必要なときは弁護士を紹介します」と標榜するようなケースが少なくありません。

ですが,非弁護士が弁護士業務を行うことはできないことはもちろん,弁護士を紹介する業務も弁護士法72条で禁じられています

また,弁護士がそのような者から紹介を受けること,名前を使わせることは,弁護士法27条で禁じられています
更に,弁護士は,弁護士職務基本規程により,弁護士法より更に厳重な規制に服することになっています

あえてここでは,どういう理由で問題があるか,つまびらかにはしません

結論をいえば,非弁行為の疑いのある業者が,「弁護士業務が必要になれば,それはちゃんと弁護士を紹介しますので安心して下さい」というのは決して安心できません

以上のような厳しい規制があるため,そのような紹介は,弁護士法令に違反するリスクが高いからです。

もちろん,全てのケースが違法というわけではありません。ですが,そのあたりの配慮がされていない場合,紋切り型に「弁護士の領域になったら弁護士を紹介するので大丈夫」では,不十分といわざるを得ません。もし,安心できるとすれば,弁護士法令のいかなる条文について,いかなる理由でクリア出来ているか,明示をするべきです

弁護士が行えば非弁/非弁提携にならない,というのは間違いです。特に詳しい説明もなく,弁護士法に触れる疑いのある業務を行う業者,必要に応じて弁護士を紹介すると標榜する業者には,注意が必要です

できる限り,弁護士が必要になれば弁護士を紹介するという業者ではなく,最初から弁護士に相談をすることをお勧めします。

現行法上,弁護士紹介業は違法です。

◯弁護士法72条
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

この法律によると,弁護士でない者は,法律事件に関する法律事務について,周旋を報酬目的で業とすることができない,とあります。

周旋というのは,単純にいうと紹介ということで,この法律で,非弁護士の法律事務の紹介業は禁止されている,ということになります。
更にこの規制は厳格であり,この規制に違反する者から,弁護士が紹介を受けることも禁じられています。

◯弁護士法27条
弁護士は、第七十二条乃至第七十四条の規定に違反する者から事件の周旋を受け、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない

ところで,弁護士法72条は,「弁護士又は弁護士法人でない者は」と定めています。
つまり,弁護士には適用がない,すなわち法律上は,弁護士であれば,法律事件に関する法律事務の周旋業(紹介業)をやってもいい,と読むことが出来ます

そうすると,弁護士としては,弁護士紹介業ができる(?),たとえば,「あなたにピッタリの弁護士を,責任を持って紹介します。弁護士の目から見た最適な弁護士の紹介です。安心してご利用下さい!」ということもできるはずです。

ですが,実際には,弁護士は紹介業をする事が出来ません
それは,法律上は許されているのですが,上乗せ規制,ある意味で弁護士の自主規制として,日本弁護士連合会が定めた弁護士職務基本規程により,禁じられているからです。
これに違反をした場合,資格剥奪を含めた重い処分が下されることになります。

◯弁護士職務基本規程13条
1 弁護士は、依頼者の紹介を受けたことに対する謝礼その他の対価を支払っては
ならない。
2 弁護士は、依頼者の紹介をしたことに対する謝礼その他の対価を受け取ってはなら
ない。

法律上は弁護士紹介業は,弁護士であれば可能であるが,日弁連の規程で禁じられている,ということになります。
逆にいうと,弁護士職務基本規程の改正,つまり,日弁連すなわち弁護士たちだけの意思で「弁護士紹介業」を解禁できる可能性もあるというわけです。

弁護士による弁護士の紹介業,これは解禁するべきでしょうか?それとも,解禁すべきではないのでしょうか?
いままで,あまり議論をされてこなかったところですが,議論があってしかるべきだと思っています。

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