弁護士 深澤諭史のブログ

弁護士 深澤諭史(第二東京弁護士会 所属)のブログです。 相談等の問い合わせは, i@atlaw.jp もしくは 03-6435-9560 までお願いします。 Twitterのまとめや,友人知人の寄稿なども掲載する予定です。

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ここでいう「和解」とは,裁判上のものを主にいいますが,裁判外でも概ね同様のことはいえると思います。

さて,和解というのは,大雑把にいうと,紛争がある場合において,双方が譲歩をして一定の合意をして紛争をやめることをいいます。
ここでのポイントは,和解は紛争を終わらせることに主眼があり,決して仲直りであるとは限られない,という点です。

さて,私は,それなりの頻度で「セカンドオピニオン」を求められることがあります。既に弁護士に依頼しているのだけれども,これでいいのだろうか?とか,弁護士の意見についての説明,評価を求められるとか,そういう話です。
その中でも「和解」についての話は,相当程度ある印象です。

弁護士から和解を強く勧められているが,これで問題ないのだろうか,というのはさほど珍しい質問ではありません。
和解が適切かどうかは条件次第であり,その条件が適切かどうかは,事件の見通し次第であり,一概にいうことはできません。

ここでは,何故,弁護士は和解を勧めるのか,ということについて説明をします。
なお,裁判所も和解を勧めることは珍しいことではない,むしろ弁護士のそれよりも頻繁でしょうが,ここでは,専ら弁護士が勧める話についてお話しします。

弁護士は何故,和解を勧めるのか。それは,和解は,メリットが多い,リスク回避ができるからです。

和解をしない場合,最終的には裁判所の判決になります。
判決について,大体の見通しは予想は可能ですが,それは確実ではありません。一方で和解は,お互いが条件を出すので,「どういう内容になるのか」は,明らかです。不確実性がないということで,安全なのです。

また,和解成立後も,お互いが不満が残るとはいえ,一応は合意した内容です。ですから,任意に履行してもらえる可能性が,判決のそれよりも高いです。
ですから,判決で勝ったけれども,任意に応じてくれないので,強制執行する必要がある,強制執行で失敗して空手形になる,というリスクを回避することもできます。

また,和解をすれば,その場で解決です時間もコストも節約することができます。個人間の紛争でしたら,それで嫌な思いをする時間も減らすことができます。これは,大きいメリットでしょう。

更に,和解というのは契約の一種ですから,双方の合意があれば,原則としてどんな内容でも決めることができます。
和解であれば秘密を守るとか,金銭以外のなにかをする,しないなども決めることができます。内容によっては,紛争の抜本的解決,更には予防もできるでしょう。

そういうわけで,和解というものは,相当にメリットがあります。だから弁護士は勧めるわけです。

もっとも,当事者としても不満があります。紛争というのは,お互いが正しいと思うから生じるものです。
ですから,正しい自分が間違っている相手方に何故譲歩をしないとならないのか
悪い相手に正しい自分が譲歩するのは,正義に反するのではないか,というものです。

この不満は,全くもっともなもの,正当なものだと思います

ただ,裁判というのは,純粋にどちらが正しいのかを決める手続きではありません
証拠に基づき,事実を認定し,それに法律を適用して,その結果,生じる法律効果を判定するものです。
全く悪いことをしていない人間が病気になるのと同様,たとえば,真実はお金を貸したのに,借主を信用して借用書を作らなかった貸主が,貸付の事実を証明できず,損をするということがあるのです。

裁判で自分の主張が認められない,つまり負けるということは,直ちに,その人が間違っているとか,極論すれば正義に反するとか,そういうことではありません。それは,基本的にはその人が真実として主張する事実が証拠により認定することができなかったということを意味します。

裁判には証拠に基づく事実認定,その事実に法律を適用して法律効果を判断し,判決するという限界があります。
和解というのは,裁判に普段携わっている弁護士だからこそわかる,司法手続きの限界を意識した提案といえます。

弁護士は,裁判,司法手続きの限界をよく知っているからこそ,和解を勧める。このことは,弁護士の意見を聞く上で知っておいた方がいい話です

弁護士は,よく「明らかである」と書面に,特に裁判所に提出する書面に書くことがあります。

ですが,よく同業者間でも話題になりますが「『明らかである』という書くときに限って,『明らか』ではない,証拠関係が苦しいときに,ついつい書いてしまう」という実情もあったり(なかったり)します。

たしかに,たとえば「借した金を返せ」という裁判で,ちゃんとした借用書があれば,あえて「明らかである」って連呼しません。ですが借用書がなくて,振込明細とか被告の言動,金銭の支出とかから,借入れの事実を推認しないといけないときは,思わず「明らかである」と,繰り返し書いてしまいそうになります。

もちろん,こういう表現で,直ちに裁判に有利とか不利な影響はないでしょうが,場合によっては,手の内を見せてしまっていることになりそうで,ちょっと気になります。

子どもや学校の問題に詳しい,淺井健人弁護士(東京弁護士会)からの寄稿です。

第1 いじめの第三者調査委員会とは

 学校の設置者(公立の場合は教育委員会、私立の場合は学校法人)または学校は、いじめによって重大事態が生じた疑いがある場合には、いじめの調査組織を設置します。調査組織は、公平性、中立性が確保された組織が、客観的に事実認定をすることができるよう構成することとされ、一般に、いじめの第三者調査委員会と呼ばれています。

 重大事態とは、

1 いじめにより児童生徒に生命、心身または財産に重大な被害が生じた場合

 たとえば、自殺を企図した場合、身体に重大な障害を負った場合、金品等に重大な被害を被った場合、精神性の疾患を発症した場合などが想定されています。

 軽症で済んだものの自殺を企図した場合や、多くの生徒の前でズボンと下着を脱がされ裸にされた場合、スマートフォンを水に浸けられ壊されたといったケースでも重大事態として取り扱われたことがあります。

2 いじめにより児童生徒が相当期間学校を欠席することを余儀なくされた場合

 相当期間は年間30日が目安とされていますが、あくまでも目安であり、欠席が続く場合はより短い期間での設置も想定され、実際に30日より短い期間で重大事態として扱われた例もあります。

いじめとは

 何らかの関係がある子どもから、心身の苦痛を感じさせられる行為をされた場合は、「いじめ」にあたるとされています。

 法律では、

①児童等に対して、

②当該児童等が在籍する学校に在籍している等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等が行う

③心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、

④当該行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じているもの

とされています。

第2 調査の目的

 いじめの第三者調査委員会は、学校の設置者及び学校が事実に向き合うことで、事案の全容解明、当該事態への対処や、同種の事態の発生防止を図るためのものとされ、民事・刑事上の責任追及やその他の争訟等への対応を直接の目的とするものではないとされています。

第3 調査について

 いじめの第三者調査委員会は、児童生徒や教職員に対していじめの事実関係や学校の設置者及び学校の対応等について、アンケート調査や聴き取り調査を行います。

 調査においては、学校いじめ防止基本方針に基づく対応は適切に行われていたか、学校いじめ対策組織の役割は果たされていたか、学校のいじめ防止プログラムや早期発見・事案対処のマニュアルはどのような内容で、適切に運用され機能していたかなどについて、分析を行います。

 いじめの第三者調査委員会は、いじめがあったかどうか、いじめと重大事態との間に因果関係があったかどうかなどを分析・評価したうえで、再発防止策を検討します。

 調査結果については、公立の場合は当該地方公共団体の長に、私立の場合は当該学校を所轄する都道府県知事に報告されます。

 調査結果の公表については、学校の設置者及び学校が事案の内容や重大性、被害児童生徒・保護者の意向、公表した場合の児童生徒への影響等を総合的に勘案して判断しますが、特段の支障がなければ公表することが望ましいとされています。

第4 再調査について

 報告を受けた地方公共団体の長や都道府県知事などは、重大事態への対処または再発防止のために必要があるとき(調査不十分であるときや調査委員の公平性、中立性に疑義がある場合など)は、調査の結果について、新たに第三者調査委員会を設けるなどして再調査を行うことができるとされています。

◯青森中2生徒自殺のいじめの第三者調査委員会について

 報道(https://mainichi.jp/articles/20180716/k00/00m/040/066000c)によると、2016年8月に中2生徒が自殺した問題については、市教育委員会設置の市いじめ防止対策審議会が2017年3月に報告書案をまとめたものの、遺族側が見直しを求めた結果、2017年5月末、報告書の答申をしないまま全員が任期満了で退任し、2017年12月に新たなメンバーで調査が再開されました。

その結果、2018年8月2日、自殺の主要な原因はいじめであったとする報告書が答申されました。

 答申前に遺族が見直しを求めた結果、事実上の再調査が行われた本件は、イレギュラーな流れですが、遺族および遺族代理人の強い思いと粘り強い働きかけが功を奏したケースといえるでしょう。


一時期,Twitter(法クラ)で話題になりましたので,解説です。

弁護士が,「自分でやってみてダメだったので」という事件は,受任に慎重になるという話ですが,それは,何故なのでしょうか?

いくつか理由があります。

①途中からであっても弁護士の手間暇は,増えることはあっても減ることは珍しい。

途中まで「事件の処理」が進んでいたとしても,弁護士は,事件を一から検討する必要があります。その上で,その途中までの処理状況も把握する必要があります
そして,自分でやってみて,それでも思い通りにならないので弁護士に依頼している以上は,それまでの処理に誤りがある可能性があります。そうなると,その誤りの有無を検討し,リカバリーつまり取り返すが付くか,つかないか,つくとしてどうしたらつくのか,その見込みはどうか,ということも検討する必要があります。
むしろ,弁護士の仕事は大幅に増えます

②処理方針について,依頼者の理解を得ることが難しいことが予想される

そもそも,「自分でやってみてダメだったので」というケースでは,依頼者は自分でできると考えていた,ということになります
そうすると,少なくとも一時期は,自分の考えた方針が正しいと信じていた,ということになります。
ところが「自分でやってみてダメだった」わけで,弁護士としては,その方針を変更しなければいけません。
そうなると,正しいと信じていたものを,実はそれは誤りであったということで修正の必要が生じます。これについて,理解を得ることに差し支えがあることは容易に想像できます。

③依頼者の期待値が高く,納得を得られにくい

依頼者は,自分でやってみた時点で,「自分でもできる」「自分でもよい結果が得られる」ということで,事件についての見通しが楽観的,期待値が高い傾向があります

そうなると,「せっかく弁護士に頼んだのに,思い通りにならなかった。」「これなら自分でやったほうがよかった(はずだ)。」という感想を持ちやすいということになります。

弁護士としては,そういうトラブルは回避したいのは,やはりこういう観点からも,受任を回避しようとすることになります。

もっとも,以上のような傾向がありますが,弁護士が絶対に「自分でやってみてダメだったので」という事件を受任しないというわけではありません。むしろ,傷が浅いうちに,そういう事件を受任して,正当な権利が実現できるように取り組むことは,弁護士として重要な業務であるともいえます。

ただ,以上のような懸念がある,ということは,自分でやってみる前,そして,その後に依頼するときに,弁護士をより上手に利用するために,理解しておいたほうがいいでしょう。

不幸にも刑事事件の被害者,つまり犯罪被害者となってしまった場合,当然のことながら,その損害を加害者に賠償するよう請求する権利を得ます。

そして,これは刑事事件の進捗や結論とは,理論的に無関係です。刑事事件は,犯人(であると疑われた者)と国家との間の問題です。被害者との関係は,賠償責任が問題になります。
つまり,国家は犯人に処罰を求める一方で,被害者は賠償を求める,というのが法的な整理になります

ところで犯罪被害者は,賠償請求を自分からしなくても,加害者側から示談を申し入れられることがあります。これにはどんな意味があり,どんなポイントを把握して対応をすべきなのでしょうか

まとめ

①犯罪被害者は,加害者に対して,生じた損害を賠償するよう請求出来る。
②①は,刑事事件とは直接の関係はない。刑事事件の終結前後,いつでも(賠償請求権の時効にかかるまで)できる。
③加害者が示談を申し入れるのは,刑事処分を軽くすることが,主な目的である。
④加害者の刑事処分は,軽い方から順に,(1)示談が成立する,(2)示談の申入れをしたが被害者に断られる,(3)申入れをしたが被害者が弁護人と会うことを拒否する,(4)示談の申入れをしない,となる傾向がある。

1.刑事処分と賠償請求の関係

刑事処分は,国家が加害者に行うことです。その内容は懲役や罰金といった刑事罰です。
一方で,賠償請求は,被害者が加害者に請求するものです。その内容は金銭で行うことが原則です。
したがって,両者は,法的理論的には,全く別の手続きです。刑事処分は国家が行いますが,賠償請求は民事事件ですので,被害者が自分で行わなければなりません。

両者は別の手続きである以上,一方が一方に先行しても問題ありません。並行してもいいですし,刑事処分のずっと後で行うことも(時効にかかっていないなら)可能
です。

2.刑事処分と示談の関係

原則は1の通りですが,実際には刑事処分と並行して民事事件である賠償問題についても解決が図られることが多いです。
それがいわゆる示談というもので,これは,一種の契約です。この契約は,概ね「加害者は一定の金額を被害者に賠償する。その代わり,被害者は,加害者の刑事処分を求めない(又は,「許す」ということもある。)。」という内容です。
示談は,基本的に加害者が被害者に,そして多くの場合は,被害者は加害者と直接連絡を取りたがらないので,加害者は弁護人を代理人に立てて,検察官を経由して被害者の意向を確認し,被害者がよしとするのであれば,加害者代理人である弁護人と被害者との間で,交渉がもたれることになります。

3.示談の実情

示談は,刑事処分において非常に重要です。暴行,傷害,痴漢犯罪などは,個人の権利利益を保護するものです。ですから,その被害者が,賠償を受けて納得するのであれば,特に処罰をする必要性は薄れるからです。
示談を行った場合は,刑事処分はかなり軽くなる傾向がある,ということです。

したがって示談においては,通常,民事裁判で認められるであろう賠償金より,高額な示談金で解決がされることが多い(もちろん,事情や加害者の経済力にもよります。)です。
加害者からすれば刑事処分で,たとえば罰金刑を受けるのであれば,その分を上乗せしても,前科が付かない分だけメリットがあるので,「裁判における賠償の相場」より上乗せをする動機もあるわけです。

4.被害者として,頭に入れておくべきこと

まず,第一に,示談は理論的には,いつでもできるし,しなくてもいいということです。示談出来なくても,賠償請求はできます。

第二に,被害回復(端的にいえば,より高額な賠償金)を求めるのであれば,刑事処分「前」に示談をするべき,ということになります。3で述べたように刑事処分が軽くなるので,加害者側に大きなインセンティブがあるからです。

第三に,もし,刑事処分前に示談ができなかった場合,おそらく示談は困難になること,金額も数分の一になる,あるいは実質的に賠償を受けることができなくなるリスクが高い,ということです。加害者のインセンティブがなくなりますし,そうであれば,裁判で認められた法的に必要な金額だけ賠償すればいい,という態度を取りかねないからです。
さらに,示談を加害者から申し込まれる場合とことなり,自分で請求手続きを行わないといけないとなれば,数十万円程度の被害額の場合,弁護士費用倒れとなり,実質的に被害回復が不可能になりかねません

第四に,検察官等を通じて,示談の打診があった場合,話し合いに応じてしまうと,結果的に示談が不成立,つまり1円の賠償も受け取らなかったとしても,加害者にとって,有利な事情になってしまうという点です。特に,金額で折り合いが付かなかった場合が顕著です。
私も経験があるのですが,当方としては,必要十分以上の金額を提案しているが,被害者側はそれ以上を望んだ場合,経緯を検察官に報告し,その点を有利に考慮してもらって,示談不成立なのに不起訴等有利な処分となったケースがいくつかありました。なお,その後,被害者が「やっぱり,さっきの金額でもいいよ」といっても,弁護人の任務を離れているので,被害者が賠償を得ることができなかった,という結論になります。

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