非弁行為該当性が疑われるサービスについて,「廉価(安価)であると非弁リスクがある」等の言説が存在するようです

まず,前提として,非弁行為は報酬目的性が必要ですが,基本的にその多寡は問いません。また,第三者から得る場合でも,実際に得る必要はありません。

ですから,報酬が高いから安いからといって,非弁リスクが変動することは原則としてありません

もっとも,事実上の問題として,報酬の多寡と非弁リスクが連動をする事があります。
それは,意外にも「報酬が高いと非弁リスクがあがるということではないかと思っています。

ある事業で提供しているサービスが非弁に該当するかどうかという問題は,要するに,そのサービスが,弁護士法72条本文にいう,法律事件に関する法律事務に該当するかどうか,という問題です。

報酬の多寡と法律事務に該当するかは,一見して別問題です。すくなくとも法律上,形式的には関係がありません。

ですが事実上の問題として,報酬というのは,そのサービスの難易度,分量,コストに応じて設定されるものです。そのサービス提供に高度の技術が必要とされるとか,分量が多いとか,それらは,報酬が高く設定される要因となります。

一方で,法律事務に該当する行為は,広範に及びますが,裁量を委ねられて「代理」して交渉をするとか,専門的法律知識に基づいて判断を提供して「鑑定」するとか,あるいは,法律効果を発生させたり,それを保全して明確化する(=その他の法律事務)行為と考えられています。

これらは,どれも相当の専門知識,技術が要求される行為ですので,それを提供するコストは相当なものになり,必然的に相当な報酬が設定される可能性が高くなります。

これを逆の方向,つまりサービスから報酬を設定するのではなく,報酬からサービスを推定してみると次のことがいえるかもしれません。
つまり,報酬が高額であれば,法律事務に該当するような行為を行っている,すなわち非弁行為に該当する行為を行っていることが推定されます。

たとえば,数千円や,1万円2万円程度(この数字は,提供サービスの性質にも依存するでしょう。)ではなく,それを超える費用が設定されている場合,言い分をそのまま,あるいは,当初設定した言い分から選んでもらって転送つまり「代行」する程度であるとは,通常は考えがたいと思います。必要な労力に比して,費用が高いと考えられるからです。

その金額に見合う程度の,「鑑定」や法律事務が行われているのではないか,という疑いが必然的に生じることになります。もちろん,これを覆す別の事情があればそうではありませんが,それがないと疑いは生じるであろう,ということです。

そういうわけで,法的,形式的には報酬の多寡と非弁行為該当性は直接につながりませんが,事実上,これが高いと非弁行為になるリスクは高くなるのではないか,と思います。