ここでいう「和解」とは,裁判上のものを主にいいますが,裁判外でも概ね同様のことはいえると思います。

さて,和解というのは,大雑把にいうと,紛争がある場合において,双方が譲歩をして一定の合意をして紛争をやめることをいいます。
ここでのポイントは,和解は紛争を終わらせることに主眼があり,決して仲直りであるとは限られない,という点です。

さて,私は,それなりの頻度で「セカンドオピニオン」を求められることがあります。既に弁護士に依頼しているのだけれども,これでいいのだろうか?とか,弁護士の意見についての説明,評価を求められるとか,そういう話です。
その中でも「和解」についての話は,相当程度ある印象です。

弁護士から和解を強く勧められているが,これで問題ないのだろうか,というのはさほど珍しい質問ではありません。
和解が適切かどうかは条件次第であり,その条件が適切かどうかは,事件の見通し次第であり,一概にいうことはできません。

ここでは,何故,弁護士は和解を勧めるのか,ということについて説明をします。
なお,裁判所も和解を勧めることは珍しいことではない,むしろ弁護士のそれよりも頻繁でしょうが,ここでは,専ら弁護士が勧める話についてお話しします。

弁護士は何故,和解を勧めるのか。それは,和解は,メリットが多い,リスク回避ができるからです。

和解をしない場合,最終的には裁判所の判決になります。
判決について,大体の見通しは予想は可能ですが,それは確実ではありません。一方で和解は,お互いが条件を出すので,「どういう内容になるのか」は,明らかです。不確実性がないということで,安全なのです。

また,和解成立後も,お互いが不満が残るとはいえ,一応は合意した内容です。ですから,任意に履行してもらえる可能性が,判決のそれよりも高いです。
ですから,判決で勝ったけれども,任意に応じてくれないので,強制執行する必要がある,強制執行で失敗して空手形になる,というリスクを回避することもできます。

また,和解をすれば,その場で解決です時間もコストも節約することができます。個人間の紛争でしたら,それで嫌な思いをする時間も減らすことができます。これは,大きいメリットでしょう。

更に,和解というのは契約の一種ですから,双方の合意があれば,原則としてどんな内容でも決めることができます。
和解であれば秘密を守るとか,金銭以外のなにかをする,しないなども決めることができます。内容によっては,紛争の抜本的解決,更には予防もできるでしょう。

そういうわけで,和解というものは,相当にメリットがあります。だから弁護士は勧めるわけです。

もっとも,当事者としても不満があります。紛争というのは,お互いが正しいと思うから生じるものです。
ですから,正しい自分が間違っている相手方に何故譲歩をしないとならないのか
悪い相手に正しい自分が譲歩するのは,正義に反するのではないか,というものです。

この不満は,全くもっともなもの,正当なものだと思います

ただ,裁判というのは,純粋にどちらが正しいのかを決める手続きではありません
証拠に基づき,事実を認定し,それに法律を適用して,その結果,生じる法律効果を判定するものです。
全く悪いことをしていない人間が病気になるのと同様,たとえば,真実はお金を貸したのに,借主を信用して借用書を作らなかった貸主が,貸付の事実を証明できず,損をするということがあるのです。

裁判で自分の主張が認められない,つまり負けるということは,直ちに,その人が間違っているとか,極論すれば正義に反するとか,そういうことではありません。それは,基本的にはその人が真実として主張する事実が証拠により認定することができなかったということを意味します。

裁判には証拠に基づく事実認定,その事実に法律を適用して法律効果を判断し,判決するという限界があります。
和解というのは,裁判に普段携わっている弁護士だからこそわかる,司法手続きの限界を意識した提案といえます。

弁護士は,裁判,司法手続きの限界をよく知っているからこそ,和解を勧める。このことは,弁護士の意見を聞く上で知っておいた方がいい話です