弁護士 深澤諭史のブログ

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タグ:刑事弁護

ちょっと専門的な話ですので,最初に少し説明を加えます。
今回は,刑事裁判のお話しです。
前置きが長くなっちゃいましたが,ご容赦を。

1.刑事裁判って?
 刑事裁判(刑事訴訟)というのは,ご存じの通り,犯罪にあたる事実の有無等をテーマに争われる(民事と異なり,争いがない場合でも原則として必要なのが特別です。)手続きです。
 民事裁判で訴えた原告と被告がいるように,刑事裁判では,訴える側は原則として検察官であり,訴えられるのは犯人と疑われている者(これを被告人といいます。),ということになります。

2.刑事裁判の事実認定と証拠の扱い
 刑事裁判でも民事裁判でも,事実認定は証拠に基づきます。証拠には書類や物品のほか,被告人の供述とか,証人の供述とかも含まれます。
 ただ,刑事裁判では,証拠の取り扱いのルールが民事裁判より細かい,厳格です。
 基本的に民事裁判では,自由に証拠を出せますし,書面であれば基本的に裁判所は取り調べてくれるのが通例です。
 しかし,刑事裁判では,厳密に証拠採用が行われています。よく刑事弁護人から聞かれる不満ですが,アリバイとか,有利な情状証拠(嘆願書とか)について,なかなか採用してもらえないというものです。

3.伝聞法則
 刑事裁判には,伝聞法則という制度が採用されています。これは,供述の代わりに調書を使ってはいけない,あるいは,「また聞き」の供述を証拠にしてはいけない,という原則です。
 もっとも,これには多数例外があります。たとえば,被告人の自白調書は取調べができる,相手方が「同意」をすればよい,などです。ですから,実務上,特に争いのない事件では「同意」で,調書を沢山取り調べて事実認定するということが行われています。
 同意するかどうかは,書面の作成の正確性などを考慮します。調書であれば,正しく供述者の言い分を聞き取って書かれたのか,というような点です。
 書面が証拠請求されたとき,裁判所が意見を聞くことになっていますが(念のため,意見を聞くのは書面に限りません。),これに対して弁護人・検察官は,「同意」とか「不同意」とか,述べることになります(書面ではない「証人」や「証拠物」だと「しかるべく」とかいったりします。)。
 被告人の調書の場合,違法な取調べ無理矢理しゃべらされたということで争うこともあります。ですから弁護人が,検察官による被告人の調書の取調べについて不同意の意見を述べた場合,検察官は,「任意性を争う趣旨ですか?」と尋ねるのが通例になっています。もし争われるのであれば,取り調べ状況に関する報告書などを証拠請求して適性な取調べを立証する必要があるからです。

さて,以上がルールですが,昔,ちょっとかわったことがありました。(続く)

刑事弁護をやっていると,被疑者から,ペットの餌やりを依頼された,どうしたらいいか,という問題が,弁護士の間でしばしば話題となります。

みんな気になっているトピックで,それでもあまり議論されていなかったのですが,「先を見通す捜査弁護術」で解説しています。

意外と,この手のリクエストに関する解説はなかったと思いますので,お悩みの方は,是非,どーぞ。
(・∀・)

不幸にも刑事事件の被害者,つまり犯罪被害者となってしまった場合,当然のことながら,その損害を加害者に賠償するよう請求する権利を得ます。

そして,これは刑事事件の進捗や結論とは,理論的に無関係です。刑事事件は,犯人(であると疑われた者)と国家との間の問題です。被害者との関係は,賠償責任が問題になります。
つまり,国家は犯人に処罰を求める一方で,被害者は賠償を求める,というのが法的な整理になります

ところで犯罪被害者は,賠償請求を自分からしなくても,加害者側から示談を申し入れられることがあります。これにはどんな意味があり,どんなポイントを把握して対応をすべきなのでしょうか

まとめ

①犯罪被害者は,加害者に対して,生じた損害を賠償するよう請求出来る。
②①は,刑事事件とは直接の関係はない。刑事事件の終結前後,いつでも(賠償請求権の時効にかかるまで)できる。
③加害者が示談を申し入れるのは,刑事処分を軽くすることが,主な目的である。
④加害者の刑事処分は,軽い方から順に,(1)示談が成立する,(2)示談の申入れをしたが被害者に断られる,(3)申入れをしたが被害者が弁護人と会うことを拒否する,(4)示談の申入れをしない,となる傾向がある。

1.刑事処分と賠償請求の関係

刑事処分は,国家が加害者に行うことです。その内容は懲役や罰金といった刑事罰です。
一方で,賠償請求は,被害者が加害者に請求するものです。その内容は金銭で行うことが原則です。
したがって,両者は,法的理論的には,全く別の手続きです。刑事処分は国家が行いますが,賠償請求は民事事件ですので,被害者が自分で行わなければなりません。

両者は別の手続きである以上,一方が一方に先行しても問題ありません。並行してもいいですし,刑事処分のずっと後で行うことも(時効にかかっていないなら)可能
です。

2.刑事処分と示談の関係

原則は1の通りですが,実際には刑事処分と並行して民事事件である賠償問題についても解決が図られることが多いです。
それがいわゆる示談というもので,これは,一種の契約です。この契約は,概ね「加害者は一定の金額を被害者に賠償する。その代わり,被害者は,加害者の刑事処分を求めない(又は,「許す」ということもある。)。」という内容です。
示談は,基本的に加害者が被害者に,そして多くの場合は,被害者は加害者と直接連絡を取りたがらないので,加害者は弁護人を代理人に立てて,検察官を経由して被害者の意向を確認し,被害者がよしとするのであれば,加害者代理人である弁護人と被害者との間で,交渉がもたれることになります。

3.示談の実情

示談は,刑事処分において非常に重要です。暴行,傷害,痴漢犯罪などは,個人の権利利益を保護するものです。ですから,その被害者が,賠償を受けて納得するのであれば,特に処罰をする必要性は薄れるからです。
示談を行った場合は,刑事処分はかなり軽くなる傾向がある,ということです。

したがって示談においては,通常,民事裁判で認められるであろう賠償金より,高額な示談金で解決がされることが多い(もちろん,事情や加害者の経済力にもよります。)です。
加害者からすれば刑事処分で,たとえば罰金刑を受けるのであれば,その分を上乗せしても,前科が付かない分だけメリットがあるので,「裁判における賠償の相場」より上乗せをする動機もあるわけです。

4.被害者として,頭に入れておくべきこと

まず,第一に,示談は理論的には,いつでもできるし,しなくてもいいということです。示談出来なくても,賠償請求はできます。

第二に,被害回復(端的にいえば,より高額な賠償金)を求めるのであれば,刑事処分「前」に示談をするべき,ということになります。3で述べたように刑事処分が軽くなるので,加害者側に大きなインセンティブがあるからです。

第三に,もし,刑事処分前に示談ができなかった場合,おそらく示談は困難になること,金額も数分の一になる,あるいは実質的に賠償を受けることができなくなるリスクが高い,ということです。加害者のインセンティブがなくなりますし,そうであれば,裁判で認められた法的に必要な金額だけ賠償すればいい,という態度を取りかねないからです。
さらに,示談を加害者から申し込まれる場合とことなり,自分で請求手続きを行わないといけないとなれば,数十万円程度の被害額の場合,弁護士費用倒れとなり,実質的に被害回復が不可能になりかねません

第四に,検察官等を通じて,示談の打診があった場合,話し合いに応じてしまうと,結果的に示談が不成立,つまり1円の賠償も受け取らなかったとしても,加害者にとって,有利な事情になってしまうという点です。特に,金額で折り合いが付かなかった場合が顕著です。
私も経験があるのですが,当方としては,必要十分以上の金額を提案しているが,被害者側はそれ以上を望んだ場合,経緯を検察官に報告し,その点を有利に考慮してもらって,示談不成立なのに不起訴等有利な処分となったケースがいくつかありました。なお,その後,被害者が「やっぱり,さっきの金額でもいいよ」といっても,弁護人の任務を離れているので,被害者が賠償を得ることができなかった,という結論になります。

最近,違法捜査があったということで,無罪になったという報道がありました。

トイレ行かせず職質は違法で無罪

報道だけをみると,違法捜査があったので無罪,というように読めます(もちろん,もっと詳しい報道もありますが。)。
実際問題としてそうなのですが,「違法捜査があっただけで,犯罪があったのであれば有罪にするべきではないか(ただ,この見解は,実際に違法捜査がなければ有罪の立証ができていたという「仮定」に基づくものです。念のため。)」という声が,ネットにはあるようです。

実は,このように考えることは,至極もっともでありまして,前提知識を抜きに考えれば,ごく自然の感想です。

では,なぜ,違法捜査で無罪になるのでしょうか。簡単に解説してみました。

まとめ

①重大な違法性のある証拠は,裁判で証拠から排除される。
②違法捜査により収集された証拠は,程度によっては①にあたる。
③①の結果,証拠が不足して有罪が立証できなければ無罪になる。
④①のような解釈がある理由の一つは,「将来の違法捜査の抑止」のためである。

1.刑事裁判と証拠の関係

刑事裁判の事実認定は,証拠に基づかなければなりません。この証拠には,物的証拠ではなくて,人の供述等も含みます。
これを証拠裁判主義といいますが,要するに,神のお告げとか,占いとか,そういうもので裁判をしてはいけない,という意味です。
そして更に進んで,ここでいう「証拠」とは,適法な証拠をいいます。適法な証拠とは,適法に収集され,そして,適法な手続で裁判所に提出されて調べられた証拠,という意味です。

2.違法捜査で得た証拠の評価

違法捜査で入手された証拠であっても,捏造とかを別にすれば,証拠の信用性に変化はないはずです
たとえば,無令状で内緒で被告人の住居に忍び込んで,殺人事件の凶器である包丁を盗んできたとしても,その包丁の証拠としての価値は,かわらないはずです。
ですから,ある意味自然に考えれば,違法捜査であっても証拠の価値に変化はないのだから,違法捜査の責任者を処分すればいいのであって,証拠としての効力を否定する必要はないはずです
仮に否定すると,本当は犯罪の証明ができる,真犯人であると裁判で認定できるはずの被告人を,無罪ということで野に放つことになります。市民の通常の感情として,不思議に思うのは,ある意味では通常の感想かも知れません。

3.それでも違法捜査で得た証拠を裁判から排除する理由

しかし,現在の判例実務においては,違法収集証拠排除法則という考え方が採用されています。
これは,収集について重大な違法性がある証拠は,裁判所は証拠として採用しない,採用後は排除する,証拠として利用出来ない,という考えです(正確にはもう少し詳しく話す必要がありますが,概ねはこういう趣旨です。)。
2で述べた考えからすると,責任者を処罰すれば足りるはずで,「やりすぎ」に思えるかもしれません。
ですが,違法捜査について,責任者が必ず処罰されることは保証できません。また,違法捜査というのは,多くは行き過ぎで生じます。そして,その行き過ぎの原因の多く(これは異論もあるでしょうが)は,捜査官の「犯人を捕まえたい」という熱意からくるものです。
そうすると,仮に捜査官個人を処分をするとして,「処分覚悟で犯人を捕まえるんだ」というような覚悟をもたれてしまうと意味がありません。
そこで,そういう違法捜査で得られた証拠は,裁判で使えないことにすれば,犯人を捕まえたいという「熱意」で違法捜査をしても,その証拠は使えなくなる,逆に犯人を逃がしてしまう,ということになれば,あえて違法捜査をする意味が無くなります
違法捜査で手に入れた証拠を裁判で使えなくする,ということは,違法捜査の抑止のために効果的な解釈なのです

4.違法捜査で結論が無罪になる理屈

収集に重大な違法性がある証拠は,証拠から排除されます。その結果,裁判所は,その証拠があると知りながらも,それが無かったということにして,残りの証拠から判断をすることになります。
違法捜査で証拠が排除されても,残りの証拠から有罪を認定出来るのであれば有罪に,そうでなければ無罪になります。
冒頭の事件では,覚せい剤という物と,それを任意提出された経緯に関する捜査報告書等の証拠が排除されたと思われます。
残りの証拠から,覚せい剤を所持していたという事実を認定する事ができず,無罪になったものだと予想できます

※インターネットにおいては,しばしば,強引と思われる職務質問が問題視されていますが,この事件は,まさにその違法性が認められた事例です。ところが,インターネットで,この判決には批判が集まっているのは,少し興味深い現象だと思います。

今年2月に,共著でこういう本を出しました。

先を見通す捜査弁護術(第一法規)

弁護士向けの専門書で,捜査段階,つまり起訴されて裁判が始まる「前」までの刑事弁護について,いろいろな技術・知識を解説した書籍です。
刑事弁護の分野に限りませんが,意外と活字化されていないノウハウ,テクニックがありますので,その点に重点を置いて解説しました。書面の提出先といった形式的なところから,身柄解放や保釈のための準備などについても解説しています。

なお,私は,ちょっと変わったテーマですが,児童買春の事案をテーマに,「まだ捜査の手が及んでいない」「自首をするべきかどうか」「自首するならどうするべきか」ということを解説しています。
かなり取り扱いの多い分野ですが,あまり解説がないので,これまでの経験を盛り込んで解説をしました。

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