今回は、淺井健人弁護士(東京弁護士会所属)からの寄稿です。
保釈条件について解説します。

1 保釈条件

報道(https://www.nikkei.com/article/DGKKZO42083750W9A300C1EA2000/)によると、


住居は届け出たものに制限される

事件関係者への接触禁止

パスポートは弁護士が預かる

住居の出入口に監視カメラを設置する

パソコンは弁護士事務所のインターネット接続のないもののみ使用可

携帯電話はネットとメールが使えず通話先も限定したものを使用する


等の保釈条件が付けられたとのことです。


このうち、①、②は保釈条件として通常設定されるもので、

③も外国人の場合、外国に逃げられてしまうと困るので、通常設定されます。

今回、特徴的なものは④~⑥です。

 

2 保釈率の上昇と判断の変化

保釈率は裁判員裁判導入の影響もあって、10年で2倍となり、平成28年には28.8%に上昇しています。

https://www.sankei.com/west/news/181227/wst1812270046-n1.html

そのようななかで、従前は、罪証隠滅の可能性を抽象的に判断しているかのような裁判所の判断もありましたが、現在では、罪証隠滅の可能性は具体的に判断されるようになってきています

 

3 本件の特徴

今回の保釈条件④~⑥は、事件関係者との接触可能性を最大限減らすことで、具体的な罪証隠滅の可能性を可及的に低いものとするものです。このような条件のついた保釈はおそらく前例のないものであり、画期的であるとともに、今後の保釈請求の参考にもなるものです(もっとも、本件は司法取引がおこなわれた事件であり捜査機関が早期に証拠収集可能であったことや、外国籍の大企業の社長であり、勾留の継続への批判が強かったことには留意が必要です)。

今回の保釈によって、カルロス・ゴーン元会長との打ち合わせや証拠の精査がしやすくなったことで、裁判に向けてより充実した準備をすることができるようになったことは、公正な裁判のためにも重要なことであったといえます。


参考:刑事弁護士.jp「保釈」