弁護士 深澤諭史のブログ

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タグ:ネット法律

インターネット上には,様々な有益な情報が掲載されており,法律に関する情報もまた,例外ではありません。
しかし,弁護士としてネットで法律情報を集めてきた,という方の相談を受ける中で,一見便利に見える一方,実は,非常にリスクのある行為であると思うようになりました。
なお,過去にもこういうコメントをしたことがあります。

まとめ
①インターネットの法律情報は不正確なものも多い
②仮に情報が正確であっても,正確に適用できないと意味がなく,それは難しい
③必然的に,間違った情報だけをかき集めてしまう構造になっている

1.インターネット上の法律情報の正確性

インターネット上の法律情報は,全部が全部,間違っているとはいいませんが,不正確なものも多々あります。
これには,やむを得ない理由があります。法律というのは,事案によりますが,大部分が何らかの紛争の解決指針であったりします。つまり,紛争の時,どちらが正しいか,ということを決めているルールだ,という側面があります。

そういうわけで,紛争の当事者が,「正しい自分」に都合のよい解釈,理論を述べているだけ,ということも珍しくありません。

2.情報が正確であるということと,それを正確に使えることとは別の問題
法律情報というのは,それだけでは,通常はほとんど役に立ちません。
法律というのは,事実に適用して初めて法律効果が発生することが原則です。となると,正しく事実を把握すること,把握した事実と証拠により証明可能な事実の差異を把握するなどの作業が必要です。

いくら法律情報が正しくても,自分のケースに正確に当てはめなければ意味がありません。
薬が100%正しく製造されていても,自分の病気に当てはまる薬を,正しい用法用量で使わないと意味が無い,かえって危険であることと,同じことです。

3.インターネットで自分に都合のよい法律情報を漁る旅に・・・
以上で紹介した記事でもお話ししましたが,「自分は正しい」→「法律は正しい者の味方」→「だから正しいと信じている自分に味方する法律情報だけが正しい」という構造があります。

こういった状態に陥ると,誤った対応で事態が悪化する,本来の正当な権利を実現できない,負担するべきでもない義務を負担する,ということになりかねません。更に思いこみを深めてしまうと,適切なアドバイスを受け入れて行動することも難しくなってしまいます。

インターネットを利用した情報収集を否定するわけではありませんし,しばしば有益ではありますが,ご自身の問題,特に紛争については,法律デマの迷路に嵌まる前に,早めに弁護士に相談すべきだと思います。

弁護士として法律相談をすると,典型的な誤解を持ち込まれて,その解消をする,ということがあります。昔,よくあったといわれているのは,破産すると戸籍にのる,というものです(もちろん,そんなことはありません。)。

実際に法律相談でいわれることはほとんどないのですが,インターネットでよく聞かれるのは「問題があったら,被害者・権利者から請求されるので,そのとき対応すればいい」「裁判所が決めるまで違法ではない」というものです。

いずれも間違いですが,今回は,このことについて解説します。

なお,この問題については,「そのつぶやきは犯罪です」でも解説をしています(同書は,インターネットに出回る法律に関する誤解についても重点的に取り上げています。)。

まとめ

①権利義務の発生,違法行為の責任は,行為した瞬間に発生する。
裁判所は,事後的に判断するだけであり,「判決がない」ことで責任は免れない。

1.よくいわれていること

「(無断)転載をしたが,権利者から請求があったら対応すれば大丈夫」
「賠償を請求されたが,裁判所の判決は出ていないので,判決が出るまで無視で大丈夫」

2.権利も義務も,行為(事件)の瞬間に発生する

1のようなことは,よくいわれていますが,これらは基本的に間違いです。
権利も義務も,不法行為の成立(賠償責任の発生)も,裁判所の判決で発生するものではなく,その行為の瞬間に発生します。
裁判所は,事後的に判断をするに過ぎません(なお,判決の確定ではじめて権利義務が変動する訴えの種類もありますが,それは例外です。)。

例えば,交通事故に遭って救急車で運ばれて,搬送先の病院でレントゲンをとって骨折があると診断されたとします。
このとき,骨折をしたのはいつか,診断をしてはじめて「骨折」したのではありません。事故の瞬間に骨折したのです

法律についても同様のことがいえます。
普段は,法律のことを意識することはありませんし,その必要もあまりないかも知れません。
ただ,他人の名誉権やプライバシー,著作権といった権利を簡単に侵害してしまいがちなインターネット上では,注意が必要であるといえるでしょう。

3.ネットの法律問題で注意をしたいこと

ネット上に他人の名誉やプライバシー,著作権を侵害する投稿をした場合,その責任は,投稿の瞬間に発生します。
請求されたら対応すればいい,と考えているかもしれませんが,その時点では遅いのです
責任は,請求に対応をしない・削除をしない,ということではなく投稿に生じるということを,くれぐれも注意をしたほうがいいでしょう。

要するに,請求者(被害者)に任せるのではなく,自分の判断で「いいのか・わるいのか」責任をもって判断する必要がある,ということです。

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