弁護士 深澤諭史のブログ

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カテゴリ: IT

疑問形でも名誉毀損になるか,報道の影響か,立て続けに質問が寄せられましたので,お答えします。
ネット投稿者の責任についてのまとめQ&A(+ネット上の誤解)

参考:なぜ法律デマは出回るのか 約13万件、弁護士への組織的な「懲戒請求」を考える
参考:ネット投稿者の責任についてのまとめQ&A(+ネット上の誤解)

法的紛争というのは,非常にストレスのかかるものです。そして,訴える方ではなくて,訴えられる方がより大きなストレスがかかります。不安とストレスは,判断力を鈍らせ,ネット上の都合の良いデマに騙される(いわゆる「ネットde真実(の法律情報)に目覚める」状態)という原因にもなります。

ネット上の表現トラブルについては,請求者(ネット上の投稿について,責任追及をする側です。被害者であるかは確定していないので,こういう言い方をします。) については,情報も充実してきて,ある程度はデマが減ってきました。

ところが,投稿者側では,責任追及される側ということで,上記の事情が当てはまること,まだまだ情報が少ないので,デマに騙されてしまうケースが多いようです。

本日,過去の相談メモなどを整理していましたら,ある程度まとまりましたので,列挙してみることにします。回答(正解)については,基本的にはネット投稿者の責任についてのまとめQ&A(+ネット上の誤解)に書いてありますので,参考にしてください。
  1. 裁判にならないと絶対に開示されないので大丈夫!→ウソです。特に最近は。プロバイダと理由を確認しましょう。
  2. 「バカ」「アホ」「クズ」とか,言葉によって慰謝料相場は決まっている→違います。「キチガイ」で賠償どころか開示が否定されるケースもあれば,これらの言葉で相当な金額になることがあります。
  3. 慰謝料額は判例で決まる→それ以前に,この種ケースで厳密な意味での「慰謝料額の判例」はありません。
  4. 訴訟では全部否認すれば大丈夫!→かえって不利になります。あと,肝心なものは裁判所から送られた書式に書いていないので否認になりませんので要注意。
  5. 示談は不利なので「判決に従います」とだけ返事すれば大丈夫→請求者としては,とある反論をされる可能性がほぼゼロになるので,かえって助かる返事です。
  6. 民事は本人訴訟7割8割だから大丈夫→これは裁判所資料とかいろいろ出ていますが,母数を間違っていますよ?
  7. 被害については請求者の証明責任があるから,それを立証できなきゃ大丈夫!→理論的には正しいのですが,実務はそうとは限りません。関連してこの点に触れた裁判例もあります。
  8. 本人訴訟で否認しまくれば,10万から30万円の賠償責任で済むから大丈夫!→私の知る限り,ネット投稿で被告本人訴訟で50万円下回るケースはほとんどみたことありません。半数は100万円超えています。実際に判決文見せてもらいましたか?それと,個人的にはどうかと思うのですが,被告本人訴訟であることを逆手にとって高額判決をとるテクニックを使うケースがあるので,要注意。

プロバイダが発信者情報開示請求について進捗を教えてくれるか,プロバイダの弁護士費用はどうなるか?についてです。たまに,相談があり,あと,問題にするプロバイダもある分野です。
ネット投稿者の責任についてのまとめQ&A(+ネット上の誤解)


最近は,こういう判決もありますので,安易に文言だけから賠償金額を予想するのは危険ですね。

特定の文言から,開示可能性や,慰謝料額を予想したい,という話は,メディアの取材でも頻出です。

ですが,裁判例を精査すればわかるとおり,実務はそういう仕組みにはなっていません。 

むしろ,攻撃的,嘲笑的な単語の関係ですと,公益目的性の否定に使うことが多いですね。
名誉毀損の正当化事由の3つのうち,1つでも否定されれば違法ということになりますので,この観点からの主張は重要だったりします。 

毎回頻出の質問ですが,言及してなかったので。
ネット投稿者の責任についてのまとめQ&A(+ネット上の誤解)

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