弁護士 深澤諭史のブログ

弁護士 深澤諭史(第二東京弁護士会 所属)のブログです。 相談等の問い合わせは,氏名住所を明記の上 i@atlaw.jp もしくは 03-6435-9560 までお願いします。 Twitterのまとめや,友人知人の寄稿なども掲載する予定です。

カテゴリ: IT

昨日11日,第二東京弁護士会の会派の一つである「紫水会」主催のシンポジウムにパネリストとして参加させて頂きました。

テーマは「ネット・広告トラブル等への予防・対処法を検討する」というものです。
パネリストは,私の他は,内田陽介氏(弁護士ドットコム株式会社社長)と,その道で知らない人はいない弁護士の板倉陽一郎先生です。

内田社長からは,弁護士ドットコムのサービスについてのお話しがありました。

シンポでは,私と板倉先生とが,ネットの表現トラブル,名誉毀損問題の「あるある」をいろいろ話しましたが,非常に盛り上がりました。

予想以上に好評でうれしかったです。

雑多ですが(懇親会のネタも混じっていますが),以下のような感じのことを話しました。以下は,ネット上の表現トラブルに限っています。

  1. ネット名誉毀損トラブルは増えているねー。
  2. ドットコムでも,かなり相談割合が増えている,特に,掲示板で質問する人が増えているとか。
  3. コンテンツプロバイダ(掲示板とか)によって対応違うよね。
  4. 3について,ちゃんと調べない弁護士が多いよね。
  5. 弁護士も「半年ROMってろ」とか(笑)そういう話ですか。
  6. 経由プロバイダ毎の対応の違いも考慮に入れるのもありかも。
  7. 賠償額の相場について,依頼者が安易にネットの「大勝利体験談」を信じちゃって,それで弁護士と揉めちゃうことあるよね(汗)
  8. 7について,ちゃんと説明しないと。といっても,こういう事件に限った話ではないけれどね。
  9. 最近,判決レベルでは,複数投稿でも20万円か30万円前後が相場だけれども,投稿数とか,内容によるので,あまり相場はないよね。
  10. 弁護士としては,事前説明が大事。思ったように賠償金がとれない,ということで,弁護士と依頼者がトラブルになることが,この手の事件では非常に多いよね。
  11. 優れた書籍が多いけれども,そのせいで,相場観というか,請求や交渉のやり方とか,そのあたりが解らないまま手を出す,「ネットに強い」が自称だけではないかと思われるケースも多い。どんな分野についてもいえるが。
  12. 「被害者」のはずが,弁護士の交渉態度が高圧的だったりなどで,被害者とその弁護士が,一緒に炎上つまり「共炎」するケースも最近はあるよね。
  13. 双方に弁護士がついているのに,連絡毎に返答期限を付けるケースもあるが,通常,あまりみない。依頼者とのコミュニケーションができていないか,経験不足なのではないかな?
  14. 東京地裁と大阪地裁の「差異」を感じることもある。見通しの説明では触れた方がいい。
  15. 「基地外」という言葉の裁判例なんてあるよね。裁判例は誤字だって?

最近,「無断転載禁止」とあえて書く意味へのアクセスが非常に多いです。

本文中では,あまり触れませんでしたが,いわゆる無断転載(ここでは,違法使用の意味で使います。)については,最近は責任追及がしやすくなっています

よく発信者情報開示請求は裁判でないとできない(開示してもらえない。)と聞きます。確かにこれは原則ですが,最近は,裁判外でも開示してもらえるやり,あるいはいろいろな方法があります

また,決しておすすめしませんが,著作権侵害のケースであれば,弁護士を付けずに本人訴訟で開示判決をもらう例もあります。

ということで,泣き寝入りはしない,積極的に権利行使をするか,すくなくともクリエイターはそういう姿勢を示すことが大事です。

ネットトラブルについては電話相談もやっていますが,相談メモを見返すと(見返すまでもなく),頻出の相談,質問というものがありますので,ここらで少しまとめておこうと思います。

なお,答えについては,明確にできない,あるいはそうすることが適切ではない(閲覧者の誤解を招く可能性があるなど)ものについては,あえて抽象的にしてあります。

ご自分の事件について詳しい情報や判断が必要な場合は,弁護士に相談をするようにして下さい。

Q1.ネットは匿名なの?
A.完全な匿名ではありません。

Q2.ネットの投稿を削除したいのだけど
A.それがあなたの権利を違法に侵害するものであれば,そういう請求をすることは可能です。

Q3.Q2について,権利を侵害するとは?
A.ネット上でいえば,名誉権(社会的評価)や,プライバシー,著作権などが「権利」として問題になります。投稿によって,これらを侵害する行為が行われることがあります。

Q4.Q2について「違法に」って?
A.基本的に権利侵害は違法です。ですが,適法化される場合もあり,特に名誉権で問題になります。

Q5.名誉権の侵害が適法になる場合は?
A.大雑把にいうと,社会の正当な関心事であり,真実である事の証明か,すくなくとも相当根拠があれば適法になります。例えば政治家の汚職報道などが典型です。

Q6.Q5について,名誉権侵害以外は適法化されないの?
A.いいえ。プライバシーでも同様に理解されています。

Q7.賠償額は?ネットでは100万円200万円が当たり前とかきいたけれども?
A.そうではありません。ネットで吹聴されるケースは,不用意な投稿を戒める目的であったり,あるいは,「盛られて」いたり,欠席判決というケースが多いです。要するに武勇伝ということです。

Q8.欠席判決でも賠償額は法的評価だから関係ないって聞いてけど?
A.それは不正確です。確かに,欠席判決でも法的評価は裁判所の専権です。一方で,裁判全体のルールとして当事者主義という考えがあります。要するに,主張立証や争点の設定は当事者に任せるというものです。これは法的評価についても適用があります。法的評価であっても,当事者が争わないのであれば,裁判所は完全に拘束されないとはいえ,当事者の主張を重視します。

Q9.賠償金の相場はどの程度なの?
A.投稿の場所,内容,量,実損によります。日本の法制度は填補賠償といって,実損が賠償額になります。ですから,同じ投稿でも賠償金はいろいろとあり得ます。もっとも,実務上,やはり投稿内容が重視されています。このあたりは,投稿の言葉ごとにそれなりに相場らしきものがあります。

Q10.どうやって投稿者をみつけるの?
A.プロバイダに発信者情報開示請求をします。

Q11.Q10について,プロバイダって?
A.法律上,プロバイダとは通信の媒介者をいいます。掲示板やSNSなど投稿された場所の管理者をコンテンツプロバイダ,接続サービスを提供する通信会社を経由プロバイダといいます。プロバイダというと経由プロバイダだけが思い浮かびますが,コンテンツプロバイダも法律上はプロバイダです。

Q12.Q10についてもう少し詳しく
A.まずコンテンツプロバイダに投稿者のIPアドレスと投稿時間を請求し,次に経由プロバイダに,その時間にそのIPアドレスを利用していた者の住所氏名の開示を請求します。

Q13.Q10について裁判は必要なの?
A.基本的に必要です。コンテンツプロバイダの中には裁判のいらないケースもありますが,経由プロバイダは,基本的に必要です。その場合,被害者が原告,被告はプロバイダということになります。

Q14.Q13について例外は?
A.あります。最近は,裁判無しで開示できる方法等がありますし,そういうケースが急に増えています。事案によりますので,ご自身のケースが当てはまるかは弁護士に相談するといいでしょう。

Q15.通信記録の保存期間は3ヶ月ってきいたけれども。
A.法的に定めはありません。基本的に3ヶ月「以上」といえます。ですから,経由プロバイダの中には1年を超えるケースもあります。

Q16.賠償請求では,発信者情報開示請求に使った弁護士費用が請求できると聞いたけれども。
A.実際に60万円+消費税を認めた裁判例があります。しかし,最近は否定例も増えています。認められる場合も,裁判所は厳格に判断します。開示請求を依頼するときから準備が必要です。

Q17.賠償請求で弁護士費用倒れになることはあるの?
A.この手の事件に限りませんが,開示請求に費用がかかるので,そういう例は少なくありません。ただ,それを防ぐ方針の立て方というものもありますので,よく担当弁護士と打ち合わせましょう。

Q18.自分でやってみようと思うのだけれども
A.実際に本人訴訟で開示が認められたケースもあります。ですから無理ということはありません。もっとも,この手の事件に限りませんが,自分でやってみてダメだったので弁護士に,となると,最初から頼んだ場合より費用は嵩み,結果も悪くなります。ついては,自分でやるなら最後までやる覚悟が必要です。

Q19.刑事事件にしたいのだけれども
A.そう簡単にできません。法律上の名誉毀損となる場合と,捜査機関が動く場合とでは,差異があります。捜査機関は謙抑的に動きます。比較的動いて貰いやすい内容とタイミング,投稿先もありますので,よく弁護士に相談をするべきです。

Q20.発信者情報開示請求について,他に注意点はある?
A.発信者情報開示請求をすると,発信者情報開示請求に係る意見照会書というものが,発信者つまり投稿をした人に送られます。これで開示請求のあったことや,場合によってはその内容が明らかになります。気をつけないと,かえって炎上の原因になります。弁護士と依頼者が一緒に炎上する「共炎」ということもあります。

Q21.賠償請求について,他に注意点はある?
A.Q20と同じですが,共炎を演じることのないように注意をして下さい。賠償額の設定や,文面,期限設定を誤ると,被害者のつもりが問題のある者扱いをされてしまうリスクすらあります。

ネットトラブルの無料電話相談をやると,遠方の方からの相談もあり,そのなかでよく聞かれるトピックです。
また,つい先日も,弁護士同士ですこし話題になりましたので,一般向けに少しまとめてみることにします。

まとめ
  1. 裁判は原則として被告の最寄りで行う。
  2. ネットの表現トラブルでは,プロバイダ相手の裁判(開示訴訟)と投稿者相手の裁判(賠償訴訟)がある。
  3. プロバイダはほとんど東京なので,開示訴訟はほとんど東京で行われている。
  4. 賠償訴訟の原則は,投稿者の最寄りの筈だが,実際は東京地方裁判所で行われるケースも多い。
説明

まず,ネット上の表現トラブルの裁判は2種類あります。プロバイダ(サーバーレンタル会社も含む。)に,発信者情報開示請求をするための裁判,これで,投稿者を特定します。

もう1種類は,投稿者への賠償請求です。この2種類の裁判がネットの表現トラブルでは問題になります。
書き込まれた人間からすればこの2種類両方が,書き込んだ人間からすれば,後者1種類だけが問題になるということです。

まず,裁判の原則ですが,その原則は被告の最寄り(それ以外のケースもあります,念のため)の裁判所で行うというものです。
裁判というのは自由に起こせます。しかも,放置すると敗訴します。となると,被告の応訴(裁判に対応すること)のコストを下げるため,こういう原則が取られています。

したがって,開示訴訟の場合はプロバイダの最寄りになります。ほとんどのプロバイダは東京にありますので,東京地方裁判所が原則です。更に,海外のプロバイダの場合も東京となります
なお,著名なレンタルサーバー会社の中には,大阪の会社もあるので,その場合は大阪地方裁判所となります。

次に2種類目,つまり賠償請求ですが,原則は被告の最寄りということになります。
ですが,被告の最寄りというのは原則です。いろいろ例外があります。
たとえば,事件・事故の場合,その現場の最寄り,ということも可能です。
ネットの投稿は,日本中で被害が発生しますので,それを利用して東京ということも可能です
また,他にもいろいろと原告の最寄りに寄せる方法があります。

以上をまとめると,ネットの表現トラブルでは東京地方裁判所で裁判するというケースが多数であるということがいえます

そして,両当事者が東京でない場合に,東京地方裁判所というケースも珍しありません。私も,お互いが東京からはるかに離れた裁判を東京地方裁判所でやったことはなんどもあります(相手方代理人弁護士も東京に事務所がある。)。

どこの裁判所でやるか,それで争いになることも多いのですが,私の経験上,当事者双方がどこに居ても,基本的に東京地方裁判所ということで,場所が争いになることは稀であるという認識です


けしからん!という感情は、非常に刺激的なものです。
とくに、何かの事件で、自分も被害者になりかねないようなケースですと、なおのことです。
こういうケースですと、怒りだけではなくて、恐怖も感情に加算されて、なおのこと行動が先鋭化、それだけではなくて、よく確認もせずに感情的に、間違った行動をとることが多くなります。

今回の件は、人違い ということでしたが、問題は、人違いに限られません。
こういう奴が許せない、ということで、しばしばリンチのようなことが行われてしまいます。

私は、投稿者の側を弁護することも多いのですが、最近の傾向として、義憤を強く感じて暴走するケースが非常に増えています。

漫画や映画のように、天に代って悪を討つと、盛り上がってしまうと、判断力が失われます。

「けしからん」 の酔いを覚ました後に待っているのは、現実です。

厳しい責任を問われる現実からは逃げられません。
そうならないように、仮になってしまっても、落ち着いて、適切に行動をするべきでしょう。 

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