弁護士 深澤諭史のブログ

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カテゴリ: IT

ブログの機能から質問もありましたので,更新しました。
ネット投稿者の責任についてのまとめQ&A(+ネット上の誤解)

*令和2年4月1日,Q15追加
インターネットの表現に関するトラブルは,年々増加傾向にあります。
私も,よく取り扱う分野で,なんどか論考や書籍も出しているところです。
以前は,投稿された側の相談や依頼が多かったのですが,最近は投稿をした側の相談も増えてきており,下手したら半分くらいがそうである,という時期もありました
なお,中には,適法な表現に対するスラップ訴訟に近いのではないか,違法であっても過大請求ではないか,請求の内容と方法に問題があって,請求者(投稿された側)にとっても利益になっていないのではないか,というケースも散見されました。

このあたりの経験を踏まえ,賠償請求の訴訟外交渉や訴訟の実務をまとめた書籍が「インターネット権利侵害 削除請求・発信者情報開示請求“後"の法的対応Q&A」です(なお念のため,この書籍は弁護士向けの専門書です。)。

これは,ネット上の表現トラブルに限ったことではなく,法律問題全般,もっといえば,医療関係についてもいえることですが,ネット上には,それぞれの立場にとって都合の良いデマが流通しています。
法律問題の当事者は,特に訴えられた方は不安になりますので,そういった中で,自分に都合の良い「ネットde真実」に目覚めてしまうのは,やむを得ないこともあります。ただ,そのせいで,本来あるべき権利救済を受けられなかったり,逆に,投稿者が,それ以上に責任を認められてしまうことは健全なことではありません。
最近,複数の相談者から,そういうネット上の情報をいくつか教えてもらいましたが,ネットde真実のオンパレードで,誰かのいたずら?(そんなことないでしょうが)と疑うレベルでした。

前置きが長くなりましたが,同じような誤解に繰り返し答えるのも非生産的ですので,上記書籍の情報を一般向けにまとめ,かつ,相談者や,ブログのコメント欄からよく寄せられる誤解について,これにハマらないように情報をまとめました

Q1.発信者情報開示請求ってなんですか?
大雑把にいうと,ネットで投稿をした人の個人情報(住所・氏名)を特定する手続きです。
最初にコンテンツプロバイダ(掲示板などの管理者)からIPアドレスを取得します。その後,IPアドレスから割り出した経由プロバイダに対して,住所氏名等の開示を求めます。
あくまで,被害を主張する者が,プロバイダに請求をするという点が特徴です。
なお,裁判外でも,裁判上でも請求が出来ます。

Q2.発信者情報開示請求に係る意見照会書ってなんですか?
Q1の請求があったときに,投稿者(発信者)に対して,プロバイダから送られる書面です。
Q1のとおり,発信者にとっては,自分の個人情報が開示されるかどうかは重大事です。
ですが,匿名で請求や裁判に関わることは出来ません。事実上,プロバイダが相手をする代理戦争になります
そこで,プロバイダとしては,開示をしても良いか,してもダメな場合は,裁判外で自分の判断材料にするために,裁判の場合は,裁判所に出す主張の参考にするために,意見を発信者から受け取るということになります

Q3.裁判外だったら拒否すれば,開示されませんよね?
いいえ。されることがあります
特に,特定のプロバイダや特定の権利ですと,しばしばあります
このあたり,都合の良いデマが多いですが,プロバイダに応じた対応が必要です。
特に,一定のプロバイダは,積極的に開示に応じています。

Q4.必ず意見照会はくるのですか?
いいえ。来ないことがあります。
プロバイダの義務ですが,その義務を履行しないケースもあります。
また,発信者情報開示請求以外の方法で開示が認められるケースも増えており,この場合は,そもそも意見照会の制度はないので,来ません

Q5.投稿者ですが,開示・非開示になったら連絡はもらえますか?
非開示の場合は連絡がなく,開示の場合は連絡があることが多いです。
ただ,最近は,開示になっても連絡しないケースも増えています。

Q6.開示請求が来てから,どれくらいのタイミングで結論が出ますか?
ケースによりますが,請求の内容,文面から予測は可能です。
ただ,裁判になれば,少なくとも3ヶ月とか時間がかかります。
危険なのは,相場だのなんだのと決め打ちをしてしまうことです。

Q7.開示判決について,プロバイダは控訴してくれますか?
基本的にはしてくれませんが,ケースによります。プロバイダにもよるところが大きいです。
最近ですと,「荒らし行為」について開示を認めた事件について,控訴がされたケースがありました(結論は控訴棄却でした。)。

Q8.名誉権侵害(名誉毀損)ではなくて,名誉感情とか,プライバシー,著作権侵害だったら,開示の可能性は低いですよね?
そんなことありません。むしろ,逆です。
名誉感情は事実の摘示の要件がないですし,プライバシーは,有名人でも認められますし,むしろ,有名人だからこそ認められるプライバシー侵害も存在します。つまり,一般人だったら同じことかいてもプライバシー侵害にならないのに,著名人だとなるケースもあるということです。
著作権侵害も同様に一般化できません。
法律問題全般の「ネットde真実」に多いのですが,無理矢理類型化してわかりやすくすることで,誤りに陥るという典型です。

Q9.意見照会ですが,延期してもらえるのですか?
基本的にはしてもらえます。
すぐに連絡をするようにしましょう。

Q10.発信者情報開示請求を検討していますが,弁護士費用の方が高くついてしまわないでしょうか。
そのリスクは高いです。
ですが,高額の賠償を狙う方法,それが可能な投稿,ケース,あるいは,そもそも弁護士費用を節約して,投稿者を突き止める方法など,いろいろあります
弁護士には,「発信者情報開示請求をして賠償請求をしたい」と固定して相談をするのではなくて,被害の実情とか,希望を述べて,むしろいろいろな方法を提案してもらうといいでしょう。

Q11.慰謝料は判例で決まって,相場は○○ですよね?
勘違いです。ネット上の表現トラブルには,いわゆる赤い本(交通事故の慰謝料額をはじめとする賠償基準を集めた書籍)がありません。
無いのは作れないからで,それは,賠償額は,投稿の内容だけではなくて投稿の場所でも変動するからです。
同じ投稿,同じ場所というケースはめったにありません。交通事故であれば,一週間の入院という事件は沢山あるので類型化できますが,ネット上の表現トラブルでは,それが出来ないからです。
ネットde真実の法律情報には,「判例が,判例が」というのが多くありますが,判例というか,裁判例は,そういう使い方をするものではありません

Q12.発信者情報開示請求に使った弁護士費用は発信者に請求できる/できない,と聞きましたが,本当のところは?
数年前は,認められる傾向が強かったのですが,最近は,認められない傾向があります
もっとも,事案に応じますし,それぞれの主張と反論の内容次第といえます。
投稿者が本人訴訟だと,認められる傾向が強いようです。たとえば,近時,20万円の慰謝料に対して90万円の弁護士費用が認容された事例がありました。近時で,発信者情報開示請求の弁護士費用実費が認められたほとんどの事例は,被告が本人訴訟のケースのようです
ですから,被害(を主張する)者としては,発信者が本人訴訟で応訴するかどうか,その見通しも大事ということになります。そうしてくれたら,「しめたもの」といえるでしょう。

Q13.発信者としては裁判前に示談しない方が安く済むよね?
そんなことはありません。
交渉というのは自分ではなくて,相手方のことを考える必要があります。このあたり,なかなか弁護士でないとわからないポイントですが,交渉で大事なのは,相手方の利害です。
請求をしている側からすれば,裁判をすれば,別に費用がかかるので,損益分岐点が動きます。となると,裁判中に安く和解することは難しくなってしまいます。
一方,裁判前に和解できるのであれば,そういうリスクが回避できるので,安く和解するというインセンティブが生じます
実際に,当初は200万円300万円といった請求であっても,20万円程度や,0円で解決できたケースもあります

Q14.立証責任は請求者(被害を受けたと主張する者)にあるから,全部否認すれば,大丈夫ですよね?
そんなわけありません。ネットde真実の法律情報の中には,立証責任のことを,直接証拠で立証しない限り不存在が推定されるとか,そういう誤解があるようですが,大間違いです
あと,請求の趣旨に対する答弁は別としても,単に全部否認,といっても,肝心なものに争いがあっても否認にならず自白扱いになります。このあたり,不親切なことに,裁判所から送られてくる答弁書の書式にも入っていません。
以上を別としても,立証責任があっても,原告が一応の根拠を持って主張立証をしている場合,これについて,合理的な反論が出来なければ,全体的な裁判所の心証として,その事実の存在を認める方向に傾くでしょう。また,仮に証明が出来た,というレベルに達していなくても,ネット上の表現トラブルにおける慰謝料算定の実務といて,証明ができない=賠償が認められない,と単純にいうことができるものではありません(ただし,主張立証責任の原則を動かすものではありません。)。
このあたりを勘違いすると,高額な慰謝料になったり,あるいは,Q12の様に,数倍の弁護士費用を払うことになります。
逆に言えば,請求する側からすると,請求される側が,ネットde真実に目覚めたり,あるいはその他の理由で,本人訴訟をしてくれるかどうかは,重要なポイントになります。

Q15.ネット上の情報は,書き込まれた人/書き込んだ人が,書き込んだ人/書き込まれた人をだまして,自分が有利になるように工作しているのですよね?
そこまで暇な人がいるか,かなり微妙な話だと思っています。
ただ,同種事件の取り扱い経験,関係者からの相談をこれまでずっとやってきた経験からいうと,概ね,次のようなことがいえると思います。
つまり,参加者は情報工作をするというよりも,「自分にとって都合の良い情報を真否確認せずに投稿し,賛同し,逆に,都合の悪い情報は嘘だと決めつける」,そういうことをお互いに繰り返しています
そういう中で,せっかく自分が見つけた都合の良い情報が否定される,それは「工作員」の仕業だ,と信じたがる,そういう構図があるのではないか,と思います。
それにしても不思議なのが,自分の敵が偽情報を流しているかもしれない(と思い込んでいる)にもかかわらず,そういう情報を集めてネットde真実に目覚め続けるのか,ということです。
そこまで工作だのデマだのがあると思っているのであれば,早くちゃんと,法律上の守秘義務や善管注意義務のある法律事務所に相談に行った方がいいと思うのですが・・・。

質問等あれば,また,付け加えるかもです。
長くなったので,続きは後日・・・。

最近,非常に多くの相談,質問,問い合わせを頂戴しています。
ツイートを読んだ方,あるいは,ツイートで投稿した内容と重複するものも多数あります。
Twitterはその性質上,「流れて」しまいますので,いくつか抜粋して掲載します。
このあたり,弁護士向けにはいろいろ情報があります(拙著の「インターネット権利侵害」もそのひとつです。)が,市民向けのものがあんまりないので,反響があれば,そのうち折を見て,わかりやすい,Q&Aにまとめようかなと思います。

NHK「クローズアップ現代+」新型ウイルスでもネットに拡散 追跡! トレンドブログでコメントさせていただきました。

内容としては,法的な評価であるとか,責任追及の難易度などです。

なお,とても手前味噌ですが,弁護士の立場から責任追及や被害回復,裁判や和解相場について論じた書籍として「インターネット権利侵害 削除請求・発信者情報開示請求“後"の法的対応Q&A」というものを出しています。
また,企業の法務部・総務部向けには,「インターネット・SNSトラブルの法務対応」というものを出しています。こちらは弁護士が使うというより,弁護士「を」使う立場の方のための書籍です。 

ということで,良かったらご覧ください(・∀・) 

せっかくたくさん質問を頂戴したのに、遅くなってすいません。
一部回答です。

Q13.相手に弁護士ついているので、ネットで拾った答弁書とかを使いたいと思います。
Q&A:ネット投稿の責任,発信者情報開示請求(投稿『した』側)

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