弁護士 深澤諭史のブログ

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カテゴリ: IT

最近、ネット投稿について、投稿された人から、あるいは投稿した人双方から、よく相談を受けます。

いずれも、弁護士に相談前によくお調べになっているようで、多くの場合、話はスムーズです(念のため、そんな予習しなくてももちろん相談は問題ありません)。

ところが、最近は、インターネットの投稿で名誉棄損されるなどの被害にあった場合の慰謝料額や(支払いを請求できる)弁護士費用の関係で、やや誤解があるようなのでちょっとここで補足して解説しておきたいと思います。

1.慰謝料制度について

まず、日本の法律制度では、慰謝料というのは、その精神的苦痛を慰謝(見合う?癒す?)するのに足りるような金額、ということになっています。
ただ、これはある意味でフィクションでありまして、例えば、本人の死亡の慰謝料や親族の死亡の慰謝料は、いくらお金をもらったところ慰謝しようがありません。
と言うことでこれは、一種の擬制、フィクションであると考えてください。

2.慰謝料金額を決めるもの

さて、この慰謝料の金額というものは、当たり前ですが、その精神的な苦痛に比例します。
したがって精神的な苦痛が大きい事案ほど、その金額も大きくなります。逆もまた然りです。
ただ、これは主観的なものではなく、客観的に判断することができる範囲で、ということになります。

そして、ネットの投稿による被害については、ちょっと誤解を生じやすいところもあります。
この場合の精神的苦痛というのは、そういう投稿をされたことによる苦痛です。もっと言えば、自分がそういう投稿を読んで、自分自身が傷ついたというのは、一定程度考慮される可能性はあるかもしれませんが、基本的に基準となるものではありません

具体的にどういったものが基準になるかというと、第三者つまり一般読者がそれを読んで、どの程度の、どういう気持ちを抱くかによって決まります。つまり、基準は、書かれた人間が読んでどう思うかではなくて、一般読者が書かれた人間についてどう思うか、というのが中心となります。

3.実際の判断考慮要素

ですから、厳密には、同じ内容であれば、書かれた人間はそれを読んで同じような気持ちを抱くでしょう。しかし実際は、同じ内容であっても、誰もアクセスしない、あるいは信用性が著しく乏しいサイトに書かれた内容と、著名なニュースサイトに書かれた内容、あるいは新聞や週刊誌に書かれた内容では、同じ内容でも、被害の程度が違ってきます。
ですから、慰謝料の算定に当たっては、内容はもちろん、書かれた場所とか、書かれた人の立場とか、これまでの言動であるとか、そういったいろんな事情を考慮する必要があります。
投稿内容だけで決まるということではありません。

4.実際の金額とその問題

最終的な金額については、同種案件を多数取り扱っている弁護士にとってもその予想は極めて難しいものです。
また、残念ながら通常は、被害者が思うほどは金額が高くならないことがほとんどです。これは、ネットトラブルに限らず、慰謝料全般についても言えることです。
しかし、ネットトラブルは被害者の被害感情が、当然のことではありますが、非常に強いことが多いです。ですから、自分が望む慰謝料額と実際の裁判で認められる金額の乖離が問題になることもとても多いです。

すこし例を、それもここ最近の例(つまり最新傾向)に絞って例を挙げますと、次のようなものがあります。
とある会社の著名な製品について、専用のサイトを作ってまでひたすらダメな製品であると中傷を続けた事件で65万円、30件以上も、その業務について、客に対して暴力をふるとか、ひどいことを繰り返したなどの投稿をした事件で40万円、暴力団関係者だの逮捕されただの、犯罪者呼ばわりした投稿について36万円、さらに女性に対して、性的に乱れているとか、性産業に従事しているなど、ここにはとてもとても書けないような汚い言葉で10件以上も投稿を繰り返した件について39万円ということになっています

これらの金額は、いずれも数百万円、あるいは1000万円などの金額を請求したが、最終的に裁判所で判決で認められた金額です。

したがって、発信者情報開示請求のための弁護士費用も、損害賠償請求裁判をするための費用も、全部この中から出さなければなりません
ですから、多くの被害者にとっては、納得がいかないというケースも多くあるのではないかと思います。

5.ネット投稿における判決と和解金額の注意点

以上は、判決までもつれたというケースです。そして、私の経験上からいっても、この種事件で判決で出てくる金額というのは、和解する金額よりも低いことがほとんどです。
となると被害者としては、判決が出る前に和解をまとめる方が、金銭的には有利であることが原則であるといえます。ですから、交渉においても、その点も考慮する必要があります。
そして和解の金額というのは、判決と言う形を公になることもありません。

また、発信者情報開示請求に使った弁護士費用は、相手方に請求できると言う主張があり、実際にこれにそう判決も複数出ています
もっとも、ごく最近の裁判例、つまりここ1年位に限ってみると、この費用を否定するような見解もまた有力であり、それに従った判決も複数出ています。どちらかというと否定例が有力(ただし絶対ではありません)です。

特に、実費費用が60万円ないし70万円を超える程度になりますと、判決は実費を認めてくれない傾向があるようです。
また、弁護士との契約のやり方とか、そういったものも大きく影響します。ですから、金額と形式については、絶対に事前に、どうすれば実費が認められやすいかを弁護士と相談して慎重に決めておきましょう。その配慮を欠くと、あとで取り返すことは極めて難しいです。

6.まとめ

ネット上の法律情報、特に表現活動に関するそれは、お互いが感情的ということもあり、かなり不正確だったり、正確でも誤解を招く情報が多々あります。
特に、揺れ動きというか、傾向の変化も早いので、弁護士向け書籍に活字になっている情報が、もう古くなっている、その古い情報で助言をされてしまうリスクもあります。

また、実際には双方の主張次第という側面もあり、なかなか予想が難しい問題です(私の経験上も、事業上の重大な損害が生じたので賠償金300万円程度を主張された事案で、きめ細かく反論したら判決では数万円になったという事案もあります。)。
ですが、安易に、投稿で200万円取れるとか、弁護士費用も別に取れるとかそういった言葉を信用するのは、後で弁護士との間でトラブルになりかねないので、注意が必要でしょう。
実際に私も、相手方代理人弁護士と相手方本人が喧嘩を始めてしまったのではないか、というようなケースは度々遭遇しています。
またそうなってしまった方からの相談というのも何度も受けたことがあります。

ですから、見通しが難しいと言うと、厳しくなることもありうるという事、これらについては、ちゃんと依頼する弁護士とよく打ち合わせ議論をしておく必要があると思います。そうしないと、どちらも不幸になってしまう、ということもあります。

今週は、かなり人前でしゃべることが多かったです(・∀・;)

①第二東京弁護士会で倫理研修
②AbemaPrimeでネットの違法な取引について解説
AbemaPrimeで不祥事を起こした著名人の出演作品を「お蔵入り」させることの是非について解説
④Professional Lawyer Japan 2019にて、非弁規制、広告規制、他士業規制と他士業連携の問題について講演
⑤文化放送「エジソン」にて著作権について解説

喉はなんとか大丈夫です(・∀・)
なお、⑤では、間近で声優さんの演技を聞きましたが、本当にプロってすごいですね。
一瞬で別の世界が出現したみたいでした。驚き(^ω^;)


電子書籍のスクショは合法? 実際に逮捕されるの? 弁護士が解説する「違法ダウンロードの対象拡大」

AbemaPrimeで、漫画家・実業家の赤松健先生と出演させていただきました。

AbemaTVには、何度か出演させていただいているのですが、インターネットの反応を見ながらトークしたり、社会問題に深く切り込んだりする、非常に楽しいメディアです。
今回も、赤松先生がインターネットで集めた質問に答えていく方式で、解説させていただきました。
なお、ネットでしばらく見られますので、そちらも是非どうぞ(・∀・)

非常によく聞かれるので、すこし語ります。
ただ、申し訳ないのですが、ここでは具体的な数字を出しません。というのも、相場はここ数年で結構動いた感がある、そしてここ1、2年で概ね傾向が出てきた、という感があるからです。
また、ひとことに相場といっても、他の事件分野以上に、和解と判決の相場に差がある、それだけではなくて、その差がどうなるか、別の因子というか要素が重要になるということもあります。

そういうことで、なかなかここでは申し上げられないですし、おそらくは、この種案件を扱う他の弁護士もそうだと思います。

もっとも、投稿内容と、周辺事情を説明すれば、相場というか予測をある程度立てることも可能です。ですから、ネットで相場を検索するよりは(そもそも、法律事件における「相場」は、それを人に聞かないとわからない人が数字だけ知っても、使うことはできません。)、早めに法律相談をして見通しを立てることが重要でしょう。

SNSやブログを通じて積極的に情報発信をしていると、誹謗中傷などの被害を受けることは珍しくありません。
このような場合、投稿者は通常は匿名ですので、発信者情報開示請求という手続きを通じて、投稿者の住所氏名を割り出して、責任を追及するという流れになります。通常の事件と異なり、投稿者を見つけるという、ワンステップが挟まれるというのが特徴です。

このような事件類型はネットトラブルとしては、非常にメジャーなトラブルです。最近は、優れた解説書も多数出版されていますので、多くの弁護士が通常業務として取り扱っています。

請求をされた方としては、発信者情報開示請求に係る意見照会書という書類を使っているプロバイダーから受け取ることになります。この時点で、自分が責任追及されていると言うことを初めて知るということです

ところで、発信者情報開示請求は、必ず認められるというものではありません。色々と要件がありますが、基本的には、権利侵害が明白であるということの証明が必要です。どちらかといえば違法であるとか権利を侵害されたかもみたいな程度では開示されないことが多いです。
もっともこれは、プロバイダーの主張や、意見照会への回答次第というところもありますので一概にはいえません
ですが、他の事件と同様に、多数の裁判例が積み上がっており、ある程度の傾向であるとか基準といったものを見出すことはできます。

私も、この種の事件は、請求者だけではなく発信者・投稿者の側でも扱うことが多いのですが、常に裁判例等を収集して分析しています。

ところで最近、注意を要するような傾向を感じています。
というのも、以前は、開示が認められるかどうかについては、投稿者・発信者はどういう投稿したかという点だけ(つまり投稿内容だけ)でほとんど決まっていました
しかしながら最近は、請求者側の事情も考慮する、特に言動については考慮するという傾向が強くなっているように感じます

目につくのは、中傷、名誉棄損にあたりそうな表現をされていたとしても、そのされている側つまり請求者側が、日常から辛辣な言動をしている、他人に対して厳しい表現をしている、批判をしているという場合には、違法性を否定する、というものです。

これを、大雑把に言ってしまうと、普段から辛辣な批判とかを自分がしているのであれば、同じようなことを他人からされたとしても、それについて違法性を主張すべきではない、ということになります。
要するに、乱暴にいえば、どっちもどっちであり甘受すべきであるというような話です。私は、これを勝手に、甘受基準と呼んでいます。
典型的には、辛口の批評家が、その業務である批評の内容について、辛辣な批判を受けた場合、一定程度甘受すべき、というようなケースが考えられます。 
 
もちろん、このような理論には、妥当性に疑問がないわけではありません

名誉棄損の法解釈を従前通りインターネットに当てはめてしまうと、表現の自由の観点からはやや問題が起きそうなケースもあります。そこで裁判所は、その微妙な調整を、特に名誉棄損の従来の法理を大きく変更することなくするために、このような考え方を持ち出したのかもしれません。

そういうことで、ここでの教訓としては、SNSなどで積極的に発信する場合には誹謗中傷の被害などにも警戒すべきだということ、それについて的確に被害回復・責任追及を図りたいのであれば、言動については自分自身も慎む必要がある場合もあるということ、それをしないのであれば、ある程度の強い批判については、甘受すべきであろうということではないでしょうか。
また、そういう立場で発信者情報開示請求をするのであれば、提訴の段階から(訴状というのは、裁判所に事件に予断を持ってもらえる最初で最後のチャンスです。)、これを意識した主張立証をすべきでしょう。 

一方で、発信者情報開示請求を受けた人としては、この点を考慮して、相手方の言動についても主張立証していくという必要があるでしょう。ただ、この点については、不要な主張立証をすると逆に自分にとって不利になるということがよくあります。
かなり微妙なさじ加減が必要なところですし、一般に想像されているルールと、実際の名誉棄損のルールはかなり乖離のあるところですので、できれば弁護士に相談した方が良いでしょう(上記の話も、単に、辛辣な言動をしていれば適法化されるとか、そこまで単純ではありません。裁判例は、一定の基準をもって、問題となる投稿との関連性を検討しています。)。

自分が出した書面に、自分にとって不利な事実が含まれると、裁判は一気に不利になります

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