弁護士 深澤諭史のブログ

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カテゴリ: IT

せっかくたくさん質問を頂戴したのに、遅くなってすいません。
一部回答です。

Q13.相手に弁護士ついているので、ネットで拾った答弁書とかを使いたいと思います。
Q&A:ネット投稿の責任,発信者情報開示請求(投稿『した』側)

最近,ネット上の表現トラブルについて,ネットに投稿をしたことが原因で訴訟を起こされた,本人訴訟中であるがどうしたらよいか,という相談を沢山頂いています。 
いくつか,頻出の質問がありますので,相談する人のためにも,しない人のためにも,簡単にまとめました。

まず,期日の回数についてよく聞かれますが,大体,弁護士代理の場合,5回前後のことが多いようです(後に述べるとおり,本人訴訟ですと早めに打ち切られる可能性があります。)。
最近は,もう少し短いかもしれません。 

また,尋問があるかどうかですが,基本的には行われないことが多いです。基本的に投稿の事実については争いがなく,評価が争いになるからです。
ただ,被害の事実については,投稿された側つまり原告について,尋問が必要なケースもあるかもしれません。

金額についてですが,単純な悪口であればいくらとか,犯罪事実であればいくらとか,そういう相場は基本的にありません。損害賠償というのは,行為ではなく,被害つまり結果の問題で決まるからです。
もっとも,投稿の内容から,おおよその賠償額を推定することはできますが,このあたりは,値段表をみて簡単に決められるというものではないです。
相場がないこと,それでも相場類似のものは無くもない(つまりある)こと,判決で重視されるポイントというのはあるのですが,かなり難しい話になります。

次に,通常,原告は発信者情報開示請求を先にしていますので,その弁護士費用実費を請求されることが多いです。
これについては,過去に認めた裁判例は多数ありますが,逆に最近は認めないケースも増えています
ということで,これまた定まっていません。
 
もっとも,認められる・認められない裁判例,それなりの傾向があります。自分の事件がどちらに近いか,ということを見据えて,反論をしていく必要があります。闇雲に裁判例を引用するだけでは,裁判所を説得することは難しいでしょう。

多くの弁護士がいうように,本人訴訟はおすすめできません。できませんが,立証責任は原告にあります
ですから,争うだけでよい被告側であれば,本人訴訟という選択肢もあるかも
しれません(ですが,おすすめできません。)。

ネット投稿者の本人訴訟,それも被告側で注意しなければいけない(誤解のある)ポイントですが,あまり少ない回数で期日を終わらせてはいけない,というところです。

なぜなら原告は,発信者情報開示請求の段階で,よく主張立証を練り上げています。そしてそれは訴状の段階で出ています。 
長時間かけて準備万端に練り上げた主張立証に対して,十分な反論機会もなく,1,2回の期日で終わりにするのは,リスクが高いといえます。ただ,本人訴訟ですと,法的な争いはやりにくいので,そういう訴訟指揮になることも珍しくありません。そうなると,原告訴訟代理人弁護士としては「しめしめ」と思うかもしれません。

それと,認否についても,これはネット事件に限らない本人訴訟で顕著ですが,争うべきではない,争いようの無いところまで否認して争うというのも考え物です。
裁判所は,争点を絞り込んで,重要な部分に集中したいわけですから,余りそうすると,こちらの反論がぼやけるリスクもあります(稀ですが,制裁もあります。)。

最後に,ネット投稿の本人訴訟において,一番のリスクは開示費用の問題かもしれません。
近時の裁判例を見るに,被告側本人訴訟においては,大抵のケースで開示費用が認容されてしまっているからです。法律論について裁判所は拘束されないといっても,やはり,この点の法的反論が不十分(すくなくとも裁判所は「争う」だけで実質的反論はしていないとみなしています。)なせいもあるかもしれません。
弁護士を付ければ,絶対に免れるということではないですが,この部分においては,被告本人訴訟においては,相当に不利な戦いになる可能性があることを,よく理解した方がいいでしょう。

このテーマの記事は,これで4つ目ですが最近,まだまだよく目にしますので,言及することにします。

これは今回に限らず何度も言っていることですが,とにかく紛争が生じたときに,その紛争解決,それも自分に有利な形で解決するために,「拡散希望」だのといって広めようとすることは,基本的には百害あって一利なし,です。仮にするのであれば,専門家の慎重な助言が必須です。安易にやっていいことでは絶対にありません。 

まず最初に,紛争が生じたということ自体,基本的にプライバシーに属するということを忘れてはなりません。

紛争がある,トラブルを抱えているという事実は,基本的に秘密にしておきたいことです。病気の事実がプライバシーであると同様に紛争もプライバシーであり,だからこそ,医師も弁護士も守秘義務を負担するわけです。

紛争とは,これはあなたにとってのプライバシーでもありますが,相手方にとってのプライバシーでもある,ということです。
すなわち,お互いの秘密という事ですので,これを安易に公開するべきではないのは,当然の常識です。

また,プライバシーの問題を別としても,例えばこれは相手方が企業の場合にも問題になりますが,紛争とは,名誉の問題ということでもあります。
紛争があるということ自体,不名誉な事実という可能性もあります

また,更にわざわざ一方が「拡散希望」という場合には,通常は,相手方が間違っているということを主張する,暗示することが多いです
その事実は,相手方にとって不名誉な事実ですので,名誉棄損の可能性が出てくるということです。
(少し話がそれますが,ネット上で誹謗中傷の被害を受けていると主張している人が,発信者情報開示請求をして手に入れた情報の一部または全部をネットで公にする行為も,同じような問題があり得ます。)

このブログを読むような人にとっては常識だと思いますが,名誉棄損というのは,真実でも成立します。
不名誉な事実があれば,例えば虚名を暴くような行為であっても,それは名誉毀損になり得る,というのが現実です。

名誉棄損が適法化されるという場合もありますが,その要件は厳しいものです
自分の個人的な紛争を有利にするために,「拡散希望」といっている場合には,基本的には認められない可能性が高いと考えた方が良いでしょう。

紛争を公にするのであれば,弁護士などの法律専門家がしっかりと,検討する必要がある難しい問題です。

さらに,これは経験上の問題ですけれども,通常,紛争が生じた場合に「拡散希望」などと言っているケースでは,そういうことをいっている方こそが,間違っているケースも多いということです。

真に自分に正当性がある,適法に権利を主張しているというのであれば,そんな拡散希望等といって,第三者を巻き込む必要は無いはずです。
正々堂々と相手方に,そのことを主張すれば足りるはずです。

もし,それが通らないのであれば,つまりは相手方が従わないというのであれば,裁判といった手続きを取るべきです。それが法治国家,法治社会というものです
拡散希望などということをするべきありません。手段が間違ってると言う事は,目的が間違っていることも疑われかねないということです。

これは,例えるならば,金融業者が貸した金が返ってこないからといって「こいつは借りた金を返さない奴だ!どう思いますか!拡散希望!」などというようなものです。このような行為は,悪徳金融の手段であって,こういう行為をすること自体,その権利の正当性を大いに疑わせるものです。 

そもそもの問題として,自分の希望,要求を通すために,無関係の第三者を大勢集めて,その第三者から,意見を聞きたい,というようなふりで,その力を借りようとする行為は,常識的に考えても,到底正当性がないと思います。

本当に,自分が正しい,自分の請求が妥当であると思っているのであれば,正々堂々と,法律に則って,これを行うべきです。反社会的勢力の真似事のようなことをすべきではありません

ちょっと質問を募集したところ,多数の質問がありましたので,追加しました。
全部に答えきるのは難しいですが,順次,やっていこうかと思います。

なお,具体的な案件の個別評価,見通しなどは,法律相談を利用してください。
法テラスの援助を利用すれば無料で済みますし,そうでなくても,無料相談を実施している事務所はあります(私も無料電話法律相談も行っています。)。

Q12.ネット上の表現トラブルで,本人が法廷に来る必要はあるのですか? 
Q&A:ネット投稿の責任,発信者情報開示請求(投稿『した』側)

意外にかなり反響や,追加の質問がありましたので,加筆しました。
意外とネットの情報の間違い,もっというとQ&A質問掲示板で誤解(情報が間違っているのもあれば,そもそも質問が間違っている,かみ合っていないなど)もあるようですので,その点も加筆しました。

Q10.請求書を無視したら不誠実ということで問題になりますか?
Q11.ネットの掲示板で弁護士に質問して情報を集めましたが・・。

Q&A:ネット投稿の責任,発信者情報開示請求(投稿『した』側)

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