弁護士 深澤諭史のブログ

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カテゴリ: 弁護士

これは弁護士が書いた文章ですか?という質問を法律相談の時に受けることがあります。

弁護士であれば,弁護士が書いた文章か,そうではないか,というのは基本的にわかります。言葉遣いとか,用語の使い方とか,です。

ここで説明するのは難しいのですが,ここでは一般の方でも分かる方法をお伝えします。
それでは,読点に「,」を使っているということ,あと,A4に印刷しているのであれば,1頁26行,12ポイント,それに左側が30ミリ空いている,というところです
見た感じ,かなり行間が広めで,かつ,文字も少し大きめ,という印象を受けると思います。

もちろん,誰だって設定すればできることですし,特に読点の件は一般的ではないので弁護士でも使わず「」の方を使う人も多いです。
ただ,一応,情況証拠の一つにはなる事情です。 

このような設定の理由は私も詳しくは知りませんが,12ポイントくらいの文字サイズが読みやすいということ, 行間も広めの方が読みやすい,特に書き込んで検討することも出来る,ということが影響していると思います。
左側30ミリについてですが,ファイルにとじる場合,「とじしろ」がそれなりに必要ですので,30ミリを確保するわけです。

なお,弁護士でも,それを推察されないように,あるいは文章の趣旨から弁護士作成ではなく本人作成がふさわしい場合,あえて上記の書式から外すことはあります。

ありますが,隙が無いように,かつ,獲得目標を意識して書いたりするわけで,やっぱり弁護士が読むと,「プロの書いた文章だ!」と思うわけです。

(・∀・)つい最近も,そういうものを拝見させて頂きました。 


法的紛争で,相手方やその代理人弁護士について,人格非難するとかありますが,こういう事言っている人に限って,むしろ「負け筋」だったりするのですよね・・。
要するに,事件の本題,内容において,反論の余地がないから,こういう人格攻撃に逃げ込むしかないというか・・。

そして,もちろん,法的紛争においては,一方が一方的に悪いということは珍しいです。もっといえば,仮に一方が一方的に悪いといっても,その一方の言い分を全て飲む必要もありません。

ということで,
ネットでお仲間を集めて共同幻想を育むよりも,(そして,相手方に勝利を献上する前に)早めに法律相談に行くことをおすすめします。 

ネット上では,法律問題について匿名で質問できる,そして匿名(弁護士も,それ以外の者も含む)の答えが戻ってくる,という場所が多くあります。

よく弁護士からはいわれていることですが,「唯一のアドバイスは,ここで質問をしていないで,早く弁護士に相談に行くべき」というものです。 

もちろん,こういうQ&Aサイトも集合知の一種ということで,役に立たないことがないではありません。
しかし,なにかされるかも,という不安を超えて,具体的に請求を受けているというのに,未だにネットで,資格者かどうかどころか,誰が書いたか解らないような怪情報をかき集め続けるということは珍しくありません

私の経験上も,最初の時点で弁護士に相談していれば,お金を1円でも払うどころか不安になる必要すらなかったのに,対応を間違えて大金を支払うことになったり,さらにその段階でも,まだ弁護士を付ければ,元通りは無理でも,なんとかなるのに,それもしない,ということはしばしば目にします。

では,どうして,オウンゴール,にっくき自分の敵対者に色々献上する結果になるのに,弁護士には相談せずにネットで質問を続け,情報を集め続けるのでしょうか。

この理由として,弁護士の敷居が高い,お金がかかる,という指摘があり得ます。
この要素もゼロではないですが,匿名の情報をかき集めるのも大変ですし,今は無料相談もありますので,これだけでは説明は難しいのではないかと思います

やはり,一番の原因は,都合の良い情報だけをかき集めることができる,ということにあるのではないでしょうか。 
エコーチャンバーといって,同じ意見の人ばかりの中で意見交換をして,その意見が唯一無二の真理のように思ってしまう現象があります。
特に法的紛争は,双方が正しいと思っていますから,「自分が正しい。だから自分にとって都合の良い情報は真実であり,都合の悪い情報は真実ではない。」という思い込みをしてしまう下地があるといえます。

すなわち,ネットのQ&Aサイトや掲示板で,法的紛争について質問をし,答えが戻ってきたり,それを閲覧する人の心情としては,

自分に都合の良い情報→やっぱりそのとおり!ネットde真実に目覚めることができた!やっぱり専門家(弁護士)よりすごい!もっともっとネットde真実の法律情報を集めて準備するぞ!

自分に都合の悪い情報→これはデマだ!たぶん,相手方・敵方の情報工作に違いない!陰謀団の秘密工作員には騙されないぞ!ネットde真実に目覚めた私には通用しない!

というものがあると思われます。

一方で,弁護士に相談をする場合は,まさか,「回答が自分の思い通りではない!だから,この弁護士は相手方から派遣されてきたスパイに違いない!」みたいな思い込みは,そう簡単にできません。

専門家は,ウソの気休めで喜ばせるのが仕事ではなく,相談者の将来を予測し,その利益を最大化し,不利益を最小化するのが仕事です。ですから,不利な要素も率直に話します(下手に不正確なことをいって受任してもトラブルになるのが関の山だからです。)。

そうすると,上記の様な思い込みをする「逃げ場」がなくなってしまうので,相談を忌避してしまう,ということもありそうです。 
ネット上の表現トラブルにおいては,当事者双方がネットに親和性があるので,こういう状態に陥りやすい傾向があると思います。
参考: ネット投稿者の責任についてのまとめQ&A(+ネット上の誤解)

最初に一言でまとめると,現在検討されている発信者情報開示請求制度の改正については,権利救済だけではなくて濫用・悪用にも配慮しつつ,基本的には合理化して,開示がスムーズに出来る方向性を持っている,ということになります。
電話番号の開示については,省令改正だけで大丈夫ですので,これはスピーディーに進むと思います。報道によると,この夏のうちに認められそうです。

現在,発信者情報開示請求の制度の在り方,もっといえば今後の改正について,検討されています
「発信者情報開示の在り方に関する研究会」という組織で検討されていますが, 過日,「中間とりまとめ(案)」が作成されました(発信者情報開示の在り方に関する研究会 中間とりまとめ(案) )。


あくまでも,「中間」であり,「案」ではありますが,検討したところ,今後の方針として,おそらくはこれと大きく異ならないのではないか,と思いますので,以下にまとめました。

弁護士向け,というよりも,個人向け(発信者情報開示請求を検討している方,あるいは,されている,もしくはそのリスクのある方)です。
なお,以下は,上記のとりまとめ案を独自に解釈したもので,あくまで私の解釈によるものです。念のため。
  1. 現状について, 匿名の違法投稿の問題もあるが,発信者情報開示請求を悪用する者もあると,双方の問題を認識している。
  2. 特定が困難であること,可能であっても負担が大きいことを問題視し,それの改善をめざしている。
  3. 電話番号の開示を認める方向である。
  4. ログイン型(記事投稿においてIP等を記録せず,ログイン時のみ記録する形式)サービスにおいて,ログイン情報の開示を認めるかは裁判所の判断が分かれている。そこで,これの開示を明文で認める方向で検討する。
  5. 発信者情報開示請求は裁判手続きが必要である。これは発信者情報開示請求の負担を大きくさせるものである。そこで簡略化も検討すべきである。しかし一方で,発信者の権利を適正に保護するため,それなりの手続きは要求するべきである。
  6. 5の帰結として,裁判所における新たな裁判(通常訴訟,民事保全)以外の手続き(新開示手続き。なお,研究会の用語ではない。)を作る方向で検討するべきである。
  7. 新開示手続きにおいては,発信者の権利はもちろん,その意見も反映される様にするべきである。
  8. 新開示手続きにおいては,現行の権利侵害の明白性の要件は緩和するべきではない,という意見が有力である。
  9. 新開示手続きにおいては,表現の自由と被害者の権利回復という両者の利益を適切に確保できるような設計をするべきである。
  10. 恫喝訴訟(スラップ訴訟)への悪用にも配慮するべきである。
  11. ログの保存義務について,一律に保存義務を課すことは適切ではないという意見が有力である。
  12. ログの保存義務について,申し立てにより,必要な範囲で迅速に保全しておく,という手続きは検討するべきである。
  13. 海外事業者への開示請求は困難だが,これは,新開示手続きを海外事業者にも使える様にして解決するべきである。
  14. 裁判外の任意請求においても,開示を促進するために,ガイドラインの整備が有益である。しかし,プロバイダが安易に開示に応じるようにするべきではなく,プロバイダが誤って開示した場合に,その責任を免除するべきではないという意見が有力である。

よろしくお願いしまーす!

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