弁護士 深澤諭史のブログ

弁護士 深澤諭史(第二東京弁護士会 所属)のブログです。 相談等の問い合わせは, i@atlaw.jp もしくは 03-6435-9560 までお願いします。 Twitterのまとめや,友人知人の寄稿なども掲載する予定です。

カテゴリ: 法律

本人訴訟のリスクについては、いろいろと裁判官や弁護士が指摘しているところです。

そして、本人訴訟に臨む人の多くは、インターネットで情報を集めて臨んでいます。
そうすると、当然、本人訴訟はリスクがある、と専門家である法曹が口を揃えていっている、という情報についても目にしているはずです。
それにもかかわらず、なぜ、人は本人訴訟を選んでしまうことが多いのでしょうか。

これは、別に専門家の話を聞かないとか、判断が間違っているとか、そういう問題ではないのではないか、と思います。それは紛争がもたらす認知の歪みといったものが関わっているのではないかと思います。

すなわち、紛争、特に裁判所まで持ち込まれるような紛争案件というのは、例外(欠席裁判とか、争いがないけれども、債務名義だけ欲しい案件とか)を除けば、基本的には、双方が双方とも自分が正しい、自分の言い分が通るはず(通って当然)だと思っているという事件がほとんどです。

そうすると、自分が正しいと信じている人から見れば、裁判所は正しい方を勝たせてくれるはずだ、そうであれば、わざわざ弁護士の協力を得る必要は無い、というような発想に至ります。
また、そこまでいかないにしても、自分が正しいと言う確信があればあるほど、裁判には勝てるはずだという確信が強まります。
そうすると、絶対に正しい自分が勝つはずの裁判だから、これは簡単な裁判のはずである。簡単な裁判だから、わざわざ弁護士に頼む必要は無い。というような思考にも陥りがちです。

しかしながら、それは、正しくありません。
裁判というのは、民事訴訟法その他の手続法により規律されている、ルールのある手続きであり、勝負です。どんなに体力がある、運動神経が優れている人間であっても、スポーツのルールを知らずして、そのスポーツに勝つことはできません。裁判においても同じことがいえます
サッカーの試合でバットでサッカーボールを打って反則を取られて審判に「審判は不公平だ。俺をいじめている。この裁判官は影の陰謀団の一味だ」などという人はいません。ですが、本人訴訟では、こういう言説は珍しくありません

また、自分の正しさであるとかそういったものは、ルールのある手続きにおいてはそれだけでは絶対的な意味を持ちません。
何も悪いことをしていなくても病気になってしまうことがあります。だからといって、俺は何も悪いことをしていないから病気になるはずはない、だからわざわざ医者にかかる必要もない、などと思う人はいません。しかし、裁判手続き、紛争においては、そのように考える人が少なくありません。

特に、相手が応じて当然の請求なのに拒否されたので裁判をしたというケースでは、だから絶対に誰でも勝訴するはずと誤解し、または無茶苦茶な裁判を起こされたと自分が思っているケースにおいては、こんな無茶苦茶な裁判はスラップ訴訟だなどとと思って、ついつい弁護士をつけなくても大丈夫などと誤解をしてしまいがちです。
 
これはどんな人にとってもいえることなのですが、紛争の渦中にいると、ついつい感情的になってしまいます。そうすると、冷静でそして自分にとって有利で合理的な判断ができなくなります。
せめて、本人訴訟する前に、資格を有する弁護士や認定司法書士(金額が算定可能でかつ140万円までの紛争については、裁判内外で代理し、あるいは専門的判断に基づく書面の作成などが可能です。)に相談をして、見通しなどを相談しておくべきでしょう。
また、本人訴訟のやり方を聞くと言うのも結構ですが、それ以前に、本人訴訟でちゃんとそれが解決できるかどうかについてもしっかりと聞いておくことが必要です。

他人間の紛争に、インターネットを利用して介入をする、それでトラブルになるという例が最近増えているように感じます

これは、具体的にはどういうことかというと、XさんとYさんが争っている、そのことがネットなどで公知の事実になっている場合、XさんあるいはYさんのどちらの味方をする、支援をするというような行為です。
 

もちろん、こういう行為自体が、直ちに問題になる、違法になるわけでありません。もとより表現の自由というものがありますし、紛争そして社会問題について意見を述べたり、あるいは支援をしたりする行為は、健全な市民社会においては、必要であることもあるでしょう。

しかし、これがきっかけで、自分が紛争に巻き込まれてしまう、あるいは、参加することになってしまう、ということも珍しくありません。事実、私も、ネット上で、紛争について投稿したり、支援したり関与したりした行為について、違法であるとして責任を追及された、という相談を受けることは少なくありません。
 

実際にどういう行為が問題になるかというと、たとえば、Xさんの味方をしたいあまり、Yさんのことが憎くて憎くてたまらなくなって誹謗中傷やプライバシー侵害をしたり、フェイクニュースの拡散に協力してしまったり、などです

そんなことそうそうないでしょう、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、珍しくありません。実際に相談を受けてみると、なんらの利害関係もない、恨みもないのに、二人の紛争に興味を持っていくうちに、のめり込んで違法行為に及んでしまうということは、本当によくあることです
 

なぜ、こうしたことが起きるのでしょうか?

それは、紛争というものの性質に基づくのではないかと思います。紛争というのは、感情的な対立を多くの場合は含みます。双方は感情的になっていることも多いですし、さらに、紛争状態にあるというストレスは相当なものです(少し話はそれますが、だからこそ、代理人になった弁護士は、それを理解する、和らげる、依頼者と一体化してヒステリックな振る舞いや書面を出して足元を見られて依頼者を不利にしない等が求められます。)。

紛争により感情的になってしまうということは、紛争当事者ほどではないにしても、なんらかの形で、最初は興味本位で紛争に触れよう、そして介入しようとした人についてもいえます。
 

こんなことがあるんだ、面白い、楽しい、興味深い、ということから始まって、いつしか、ああ、こいつは許せない、悪いやつなんだ、もっともっと運動して倒そう、私(たち)は、大事な運動に参加している、という気持ちになります。最終的には、紛争当事者のストレス、感情が乗り移ってしまい、まるで当事者あるいはそれに準じる者のように振る舞い、ついつい、違法な行為に及んでしまう、そこまでいかなくても、見境なく「こんな大事な問題があるのに、貴様はなんで協力しないんだ!」とか、あるいは「あいつの味方をするなんて許せない!同罪だ!」いうような気分にすらなってしまいます
 

よく酔っ払ってSNSをやるな、といいます。ですが、アルコールだけではなく、感情、特に自分が義憤だと思っているその怒りの感情は、アルコール以上に酔わせるものであること、よくよく注意をすることが大事です。

 

ちょっと今回は長文になりますが、ダウンロードの違法、犯罪となる対象の拡大について論じます。

前回、違法ダウンロードと犯罪ダウンロードの話をしました。
要約すると、ダウンロードは原則は適法だが、法改正で一部のダウンロードが違法あるいは犯罪になりました。
違法ダウンロードになるのは、違法配信サイトからの動画と音楽のダウンロードです。犯罪ダウンロードになるのは、違法ダウンロードのうち、(他の場所で適法に)有償配信されている著作物のダウンロード、ということになります

今回、さらなる法改正、違法となるダウンロード、犯罪となるダウンロードの範囲の拡大が予定されているとのことです

具体的には、漫画、雑誌、写真もその対象に加えられるとのことです。
法改正後は、音楽や映画だけではなく、漫画、雑誌、写真などの画像やテキストデータを違法配信サイトからダウンロードする行為は違法ダウンロードとなり、それらが有償配信されているのであれば、犯罪となる、ということになります。

方々から批判されている改正案ですが、私も、この改正案には反対です。理由は次の通りです。

まず、第1に、クリエイター保護に一切繋がらないからです。
そもそも、刑事罰を科したところで、極端な話、違法ダウンロードする者を火あぶりにしたところで、クリエイターには、報酬は1円も入りません

第2に、抑止効果も不明だからです。
違法配信を行う者は別格、ダウンロードするユーザーつまり利用者は、ボタン一発でダウンロードし、利用するだけです。楽しむことはできても、それで金銭的利益を得ることはありません。
そうすると、利用者としては、違法ダウンロードへの心理的抵抗がほとんどありません。何が悪いの?あるいは、あまり悪いことではない、程度の認識でしょう。
だからこそ、犯罪化が必要である、ということなのでしょうが、そもそも現在の犯罪ダウンロードについてもほとんど摘発例がないことからすれば、抑止効果があるかどうか、極めて疑問です。

第3に、不公平だからです。
第2で述べたように、摘発例はほとんどないとのことですが、仮に摘発するとすれば、山のようにある違反事例全てを摘発することは不可能です。
必然的に、「選ぶ」必要があります。
では、選んでもらえる被害者はどういう人なのでしょう?ほとんどの場合、著名有力なクリエイターとか、大手出版社になろうかと思います。彼らの場合は、被害も大きいので、必然的にそうなるでしょう。
そうなると、同じ法律に違反された、同じ罪名の犯罪被害者であっても、その社会的地位とか勢力とかで、扱いが大きく変わることになります。
しかし、文化というのは、有力な創作者だけから生じるものではありません。また、今日、著名な創作者も、最初は無名でした。その地位や勢力で格差を設けることに正当性はありません。
この立法は、等しく著作権を保護しようとする考え方となじみません

第4に、最終的に権利保護に逆行するからです。
そもそも、著作権者、もっといえばクリエイターがもっとも望んでいることは、権利侵害に対する制裁ではありません。
それも望んでいるとしても、一番望んでいることは、そのような違法配信の根絶であり、それによる正当な対価の取得です。仮に、違法配信が行われたとして、2つ目の希望は、それら違法行為に対する正当な賠償でしょう。制裁は3番目にはいるべきものです。
第1で述べたように、刑事処罰では、クリエイターの被害は回復されません
しかし、今回、こういう立法がされることで、「著作権は十分に保護している」という誤った認識が広がりかねません。そうすると、著作権侵害について被害回復をする立法が遅れる、もっといえば、それらをしなくてもいい、ということになりかねません。
必要でもないことをやることで、本当に必要なことが行われない可能性もあるのではないか、と思います
本当にクリエイターの権利を保護したいのであれば、権利侵害者を速やかに特定する手続き、それに対する賠償請求をするにあたって、被害金を算定しやすくする、場合によっては、懲罰的損害賠償制度(悪質な権利侵害について実損害よりも大きい賠償を認める制度であり、被害回復だけではなくて違法行為を抑止するものです。)の導入を検討すべきでしょう
本当に必要だけれども大変で面倒だから、わかりやすい法改正でお茶を濁している、という非難は免れないのではないでしょうか。

第5に、刑事罰として広範にすぎるからです。
刑事罰は、社会にとってよく効く薬ではありますが、副作用も大きいものです。
また、刑事罰によって被害は回復されないのですから、極めて悪質な行為にのみ限定して適用するべきです。これは、何も特別な考えではなく、今の日本の法律もそういう思想で作られています。
ところが、ダウンロードは、要するに情報を取得する行為です。そして、インターネットにおいては、無意識のうちに自動的に無数の情報を取得することになります。
そうすると、知らないうちに犯罪者として疑いを持たれてしまう、ということも十分にあり得ます。
たとえば、まとめサイトにたまたま違法に掲載された漫画あった場合、アクセスした者全員について、犯罪の疑いが生じます
もちろん、他の犯罪(過失犯を除く)と同様、著作権侵害もわざと、知りながらやらないと成立しません。
しかし、知っているかどうかなんて、外から見てわかりません。実務上、客観的に犯罪にあたる行為があれば、基本的には逮捕や勾留の理由として十分です
「知っている、知らない」に大幅に頼ることになってしまう、ダウンロードの犯罪化は、日本のネットユーザーを「総被疑者」にするもので、不当という他ありません。

以上のとおり、ダウンロードの犯罪化、その範囲の拡大は、著作権の保護の観点からはなんの役にも立ちません
むしろ、ネットユーザーを「総被疑者」にしかねないもので不当です。
それどころか、長期的には、著作権保護の流れに逆行しかねない、悪法というより「愚法」という他ないと思います。

1.違法ダウンロードのまとめ
違法ダウンロードについて、簡単にまとめると、概ね、以下のとおりです。

すなわち、
① 原則として、著作権者の許可なしにコピー(複製)をする事はできません。
② コピーにはダウンロードも含まれます。
③ しかし、私的使用のためのコピーは例外として許されています。


したがって、
④ 権利者に無断で公開された著作物であっても、あくまで私的使用のためであれば、ダウンロードは例外として適法になります。

ただし、
⑤ 違法ダウンロードというのは、この例外の例外、つまり原則である違法に「戻す」制度です。一定の場合(後述)にダウンロードは違法になります。
⑥ ⑤の帰結として、④の場合でも、違法になることがあります。


2.複製権について
著作権者は、著作物について複製する権利を独占しています。ですから、その許可の無いかぎり、複製物を作成することは出来ません。これを行った場合、著作権の侵害ということになります。

なお、よく勘違いがあるのですが、禁止されていないなら大丈夫、ということではありません。許可されていないとダメ、ということです。
勝手に他人の持ち物を持ち出すと原則として窃盗罪になる、「私の持ち物を勝手に持っていかないで」と言われていなくて犯罪である、ということと同じ理屈です。

3.複製権の制限について
著作者の以上の権利を複製権といいますが、この権利は、一定の制限があります。大雑把にいうと、私的使用のためであればよい、たとえば、お気に入りの楽曲だけをあつめて「マイベスト」を作るとか、そういう行為です(私的使用のためであっても、違法になることがあります。違法ダウンロード以外にもあり得ます。)。

4.違法な配信元からのダウンロードであっても適法な場合がある理由
いわゆるダウンロードは、複製ではありますが、私的使用のための複製ですから、著作権侵害にならないことが原則です。これが、違法に配信されているものでも、それは変わりがない筈です(現在、一部の行為が違法、犯罪になっていますが、これは、いわゆる違法ダウンロードの問題です。)。

違法に配信されている映画や楽曲をダウンロードする行為も、これは自分で見るためという私的な目的のための私的使用ですから、かつては複製権の侵害になりませんでした。

5.4にかかわらず、違法な配信元からのダウンロードが違法になる理由
しかしながら、違法配信を視聴するユーザーが増加し、権利者の被害が増大したため、それを防ぐ目的、一定の範囲で、違法配信をダウンロードする行為が、違法化され、また、犯罪化されました。

6.どのようなダウンロードが違法になるのか
その要件は、次の通りです。

① ダウンロード元が違法であること(著作権者の許可が無い、著作権侵害であることです。)。
② 配信であること(一度アップロードすると、あとは自動的にダウンロードを受け付ける仕組みになっていること。動画投稿サイトやウェブへのアップロードは、基本的に全部該当します。)。
③ 録音または録画であること(対象は音楽や動画だけということになります。)。
④ ①から③を知っていること。


ですから、漫画の違法配信サイトから、漫画をダウンロードする行為は、③を満たさないので、違法ダウンロードにはならない、ということになります。

7.どのようなダウンロードが犯罪になるのか
全ての違法行為は、法律上犯罪になるわけではありません。

違法行為の中でも、特に刑罰で禁圧すべきものが犯罪とされています。例えば、不倫は違法行為ですが、犯罪ではありません。一方、殺人は違法行為ですし、犯罪です。不倫は違法行為ですが、私的な問題という側面が強く、犯罪として禁圧する必要がないこと、一方で殺人はその必要があるから、です。

違法ダウンロードでも同じく、一部の違法ダウンロードだけが犯罪となります。その要件は、次の通りです。

① 違法ダウンロードであること。
② 著作物が有償で提供されているものであること。


つまり、違法ダウンロードのうち、問題の著作物が有償で提供されていることが必要になる、ということです。
ですから、無料配信された音楽をダウンロードする行為は、違法ダウンロードですが、犯罪ではありません。一方で、有料で配信されている映画をダウンロードすると、これは違法ダウンロードであり、犯罪になる、ということになります。

さて、この制度については、色々と批判多いです。今後、拡大が予定されていますが、これも同じく批判が多いです。
そこで、近く、この制度の問題について、論じてみたいと思います。

著名人、あるいは企業が、法的措置、具体的には訴訟などをされた場合、あるいはこれからしようとする(場合によっては、それをした後)場合に、ネット上でそれを公表することがあります。

要するに、「これから弁護士に依頼して訴えます(あるいは、訴えることを検討します。)」とか「訴えられたとの報道があったので、これから適切に対応します。」などです

結論からいうと、極力、こういう発表は弁護士に依頼して、その後に弁護士の助言に基づき行うべきでしょう
理由はいろいろありますが、要するにリスクがある、不利になるかもしれないからです。

まず、裁判を起こす、起こした、当事者の情報というのはプライバシーにあたることもあります。
事案や当事者によっては、裁判を起こしたという情報を公表するだけで不法行為責任を問われる可能性も、ないではありません。

次に、訴えを予告する過程で、あるいは、訴えられた事情を説明する過程で、不利な事実をしゃべってしまう、あるいは、余計なヒントを相手方に与えてしまうリスクというものもあります

繰り返し述べていますが、自分にとって不利な事実をしゃべった場合、それはそのまま信用されてしまう、という原則があります。お金を借りていない、という話は信用できるかどうか吟味が必要ですが、お金を借りた、という話は信用されるのが通常です。要するに、人はわざわざ自分に不利な嘘はつくことは、あまりないだろう、ということからです。

弁護士として、「これから訴えます」「訴えられたけれども・・・」というような言動をネットでしている人をみると、しばしば、なんでそんなオウンゴールみたいなことをするのか、ネットで公表するのだろうと思うことがよくあります

実際に、最近も、あるゲームソフト会社が訴えられた、ということで、そのゲーム会社の広報が「お知らせ」をしているのを見ました。

そんなに長くない文章なのですが、一読しただけで、まだ弁護士に依頼や相談をしていないか、すくなくともその助言を得て発表をしていないこと(弁護士であれば絶対に間違えない手続き上の説明の誤りがあったためです。)、さらに、裁判において不利になるだろう事実が含まれていることに驚きました
私が相手方代理人であれば、証拠として保存しておき、提出を検討するレベルです。相手方の自白ほど、有力な証拠はないからです。

ですから、訴える、訴えることを検討している、あるいは訴えられた場合は、ぜひ、それを公にする前に、弁護士に相談することを強く勧めます

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