弁護士 深澤諭史のブログ

弁護士 深澤諭史(第二東京弁護士会 所属)のブログです。 相談等の問い合わせは, i@atlaw.jp もしくは 03-6435-9560 までお願いします。 Twitterのまとめや,友人知人の寄稿なども掲載する予定です。

カテゴリ: 法律

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ひたすら地面師の手口と裁判例を紹介しつつ、司法書士の責任はいわゆる専門家責任の中でも特殊(そして重い。)という点にも言及しました。
その上で、裁判例では、傾向として、どういうミスがあれば責任を認めやすいのか、逆に、どういうところまでは責任を認定しないのか、そういうあたりについても解説をしました。
あの有名な免許証偽造事件も紹介しましたが、ほか、面白い例として司法書士は責任なし、登記官だけの責任を認めた事例、証明書の偽造透かしを見破るべきだったと判断された事例なども紹介しています。
会場は満員で、この問題に関する関心の高さがうかがわれました。
なお、下は、講演後の懇親会の様子です(・∀・)

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他の弁護士に雇われて仕事をする弁護士を勤務弁護士、イソ弁(イソは、居候という意味ですが、イソギンチャクであるとの説もあります。)、アソシエイト弁護士などといいます
基本的には、最初は勤務弁護士からスタートして、実力をつけていくと、パートナーという事務所の共同経営者になったり、独立して事務所を構えたりします。
勤務弁護士を雇う弁護士を、ボス弁といったりします。

そういうわけで、勤務弁護士は、決まったお金をもらう代わりに、所属先の命令で仕事をする、ということで、一般社会でいうところの社員、従業員、サラリーマンという立場にあります。

ところで、法律上、他人の指揮命令監督下に入って労働して対価をもらう契約を労働契約といいます。働く側を労働者、働かせる側を使用者といいます。

労働契約については、使用者が立場上、労働者より非常な優位にあります。ですから、労働者保護のため、労働基準法をはじめとする労働法と呼ばれる法律で保護されています。
これは、契約に優越し、たとえば、お互いが合意しても最低賃金以下の給料は設定できない、残業代0にできない、などがあります。

ところで、勤務弁護士については、残業代が発生しないとか、休日労働をしいられる、残業について必要な三六協定がないことがほとんど、という問題があります。

もちろん、労働契約でなければ問題ありません。お互いの同意があれば、原則として内容は自由だからです。
ですが、労働契約である場合、つまり勤務弁護士が労働者であれば、法律の定めは、当事者の合意に優越します。ですから、勤務弁護士がどういおうが、残業代は払わないといけませんし、三六協定も必要です。違反があれば違法ですし、場合によっては犯罪にもなり得ます。
そして、労働契約かどうかは、名目ではなくて実質で判断されます

法律事務所が違法行為を、それも犯罪に当たりそうなことをしているかもしれない、ということで、これは由々しき事態です

ですが、実は、勤務弁護士が労働者であるかどうかについては、あまり突っ込んだ議論がなされていません

これは、ボス弁からすれば、労働法の厳格な規制には従いたくないという事情があります。
そして、厄介なのが、イソ弁からしても、指揮命令監督下にあるとはいえ、個人事件(事務所から配点された事件ではなくて、自分で受任して処理する事件のことをいいます。原則として報酬は、一定割合の経費負担を求められる場合があるほかは、自分のものです。)をやる自由、弁護士会の活動に参加する自由は確保したいという事情があります。
これはどういうことかというと、労働者性が明確になってしまうと、だったら普通の労働者のとおり、時間や場所を厳しく制約されることになるのではないか、というものです。

そういうわけで、この議論は、弁護士界にとっては、タブーというか、むしろタブーというより、玉虫色にしておきたい、そういう微妙で、扱いに困る問題だったりします。

もっとも、一部の主張、つまり「自由を認めているんだから、労働者ではない。イソ弁にもメリットがある。」みたいな議論は、間違っていると思います。
労働法の定めは最低基準ですから、一部が最低基準を上回る、恩恵を与えているから守らなくていい、というのは労働法の解釈として、明らかにおかしいと考えています。
これは、ブラック企業の社長が、「俺はたまには労働者をのみに連れて行って、奢ってやってる」「労働者もおれに感謝している」みたいなことを主張しても、労働法の適用は一切免れないのと、同じことです。

なお、これは、私見ですが、私はほとんど全てのイソ弁は、労働者で(タブーに触れるため省略されました。ここをクリックしても続きは表示できません。)。

何かトラブル(ネット上はもちろん、そうでないものも含みます。)に遭遇した際、「拡散希望」といって、事件の情報を「拡散」して、それで解決を図ろうとする人がいます。

もちろん、ケースによっては有効なこともあるかもしれませんが、はっきりいって、おすすめしません。むしろ、やめるべきです。どうしてもというのであれば、弁護士に相談をしてからにすべきです。

そもそも、「拡散」をして、どうやって解決するというのでしょうか。それを聞いた人が助けに来るとか?友人知人になぜ求めないのか?
あるいは、拡散されて一方当事者が困るから?それで自分のいうことを聞くだろうから?しかし、それでは強要とかわりありません。正当な権利の実行でも、違法な方法は許されません
適法にお金を貸しても、かえってこないからといって、「何処何処に住んでいる〇〇はお金を返しません!」と言いふらすことが許されるのでしょうか?
玄関に張り紙をして回った悪質金融と手口は変わりません

こういうことがあると、せっかく、もとから勝てる案件であっても、逆襲されるリスクが高くなります。また、相手方にそういう損害を出すと、そもそもこちらの要求を聞く能力と意思を失う可能性も大いにあります。

私は以前は労働者側、それも残業代請求事件ばかりやっていた頃もあり、いまでも、それなりにやっています。
最近ですと、使用者側のほうが比率が高かったりします。
そういう私ですが、世の中には労働者側弁護士ですごい先生がたくさんいらっしゃるので、私がコメントしていいのか、よくわかりませんが、よくある残業代に関する誤解を列挙してみたいと思います。

1.管理職だから残業代は不要

一番多いです。係長になると出ないとか。
管理職に残業代は不要なんて法律はありません。
おそらく、勘違いのもとは、管理監督者(労働基準法41条3号)の規定だと思います。
はっきりいうと、この定めの適用ができるケースは本当に稀です。少なくとも、私が労働者側で担当した事件で、これが認められたケースは一つもありません
正直、いちいち反論するのが面倒なレベルの主張です(一応しますが、トナーと紙の無駄遣いですね。)。
実際に、管理監督者として残業代の支払いが不要になるのは、出退勤自由、待遇や裁量が経営者と一体である、というレベルです。
とりあえず、年俸1000万円だからokとか、そういうレベルじゃありません。

2.実際に働いていない時間があるから、その分差し引く

これも多いです。
コーヒー飲んでいる時間、トイレ時間も控除すべき、とか、真顔でいう人もいますが、冗談としてもつまらないですし、本気で言っているなら、いろいろとタチが悪いです。
労働時間というのは、働いている時間ではありません。指揮命令監督下の時間、つまり、働く可能性のあった時間を労働時間といいます
月額1000円で見放題の動画配信サービスを契約したとして、30日720時間ではなくて、7時間しか見なかったから10円しか払わないとか、そういうのが通用しないのとおなじです。

3.年俸制なので残業代は払いません

とっくに絶滅したかと思いますが、未だにあります。
絶滅危惧種に指定したいところですが、保護する理由もないので、やめておきましょう。
残業代、労働時間の規制は、強行法規です。
つまり、契約よりも優先されます。反社会的勢力に嫌がらせの依頼をしても、その約束が法的に保護されないのと同じです。

4.固定残業代を払っているのでok

これも3と同じ理由です。固定残業代を払えば、他に払う必要はない、という法律はありません。
固定残業代を支払っていても、実際の残業代がそれを上回れば、その分の支払い義務が生じます
また、固定残業代は、しばしば無効になります。そうなると、全額が基本給に算入されて、残業代がとんでもない金額になることがあります。
固定残業代で固定できるのはリスクだけで、残業代は固定できません。誤解の固定は解きましょう。
ところで、これって、どこの誰がはじめたんでしょう?

5.俺はこいつに●●してあげたから、あるいは、こいつは●●したから残業代を払わなくていい

残業代は強行法規で、他に特別の法律が無い限り、これから逃れられません。
こういう言い訳は多いのですが、会社側の主張の信用性を減殺する効果しかないので、やめましょう。
とにかく、使用者が何か労働者に「おめぐみ」を下したからといって、法律上の義務は免れません
飲食店の常連客だからといってたまの食い逃げがokとかにはならないですよね?それと同じことです。

6.残業代請求対策のためにタイムカードを廃止した!法律に強いコンサルから聞いた!

流石に絶滅危惧種だと思いますが、未だにあります。
使用者には労働時間把握義務があります。
ですから、その義務に違反しますし、そうなると、過労死、残業代請求の場面で、使用者が反論できなくなり、逆に労働者側の立証が非常に強くなりますので、逆効果です。

今回は、淺井健人弁護士(東京弁護士会)からのご寄稿です(・∀・)
1 法改正の概要
自筆証書遺言は、これまで、全文、日付、氏名を自筆で書き、押印をする必要がありました(民法968条1項)。
2019年1月13日からは、自筆証書遺言の財産目録については、パソコン等で作成することや第三者が代筆すること、不動産の登記事項証明書や預貯金通帳の写しを添付し、目録の頁ごとに署名押印をする方法もとることができるようになりました(改正民法968条2項、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律の施行期日について(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00237.html)、法制審部会資料24-2(http://www.moj.go.jp/content/001238833.pdf)21頁)。

2 加除訂正について
 訂正については、自筆の部分も自筆でない部分も同様に、法律で定められた方式で行う必要があります(改正民法968条3項)。
具体的には、①×印や抹消線で修正場所を明らかにしたうえで修正し、②修正場所に押印し、③空いている場所に「〇行目〇字削除〇字追加」などと記載のうえ、署名をする必要があります。

3 自筆証書遺言のメリット・デメリット
 自筆証書遺言には、
①誰にも知られずに遺言書を作成することができる、②遺言書作成の費用がかからないというメリットがあります。
 しかし、①方式が誤っているとして無効とされるリスクが大きい、②遺言書が発見されないおそれ、偽造・変造されるおそれが大きい、③遺言書の紛失や他人による隠匿・破棄のおそれも大きい、④死後、家庭裁判所で検認の手続をする必要がある(民法1004条)というデメリットもあります。

4 遺言書の保管制度
 2020年7月10日からは、遺言書の保管制度が新たに施行され(法務局における遺言書の保管等に関する法律について(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html))、法務局で自筆証書遺言を保管することができるようになります。保管制度を利用すれば、3の②~④のデメリットは解消されますが、依然として、①のリスクは残ります。

5 まとめ
 自筆証書遺言は、誰にも知られず似作成することができ、遺言書作成の費用がかからないというメリットはありますが、方式が厳格なため、無効とされ、せっかくの御意思が反映されなくなってしまうというリスクがあります。
また、遺言で何ができるかを踏まえ、かつ、遺留分にも配慮した遺言でないと、相続人の間でもめないように遺言書を作成したにもかかわらず、かえって、紛争を発生させてしまうおそれがあります。紛争が発生するとその解決コストは、時間的にも費用的にも相当なものになりますので、事前に弁護士にご相談されることをおすすめします。
自筆証書遺言よりは費用がかかりますが、相続紛争を予防するため、公正証書遺言を作成すべき場合もしばしばありますので、自筆証書遺言と公正証書遺言のいずれを選択すべきかについても、弁護士にご相談されるとよいでしょう(公正証書の費用については、日本公証人連合会公証事務1遺言(http://www.koshonin.gr.jp/business/b01))。

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