インターネットでは、手軽に、それも匿名で情報交換ができます。
ということで、法律トラブルについても、通常は人に教えたくないことですが、匿名性を保ったまま相談ができます。そういうことで、よく、法律トラブルについてもネット上で情報交換が活発に行われています。 
匿名で情報交換、それも法律情報についてすること、それ自体は、有益なこともありますので、一切を否定するべきではありません。

しかしながら、一方で、その性質上、
  1. 同じ類型の問題について、
  2. 同じ立場の人同士が、
情報交換をするという傾向があります。
しかも、高葛藤の事件(感情的対立の大きい事件のことをいいます。ただ、個人間のトラブルの場合、多くがこれに該当するといってもよいでしょう。)ですと、勢い、自分こそが正しい、それに反する意見は、正しくない、「工作」「陰謀」のせいだ、と思い込みに陥りがちです。
それが進んでいくと、自分の都合の良いデマ、いわゆるネットde真実に目覚める、ということになりかねません。一方で、真実でも都合の悪い情報については、対立当事者の秘密工作であるに違いない、という妄想に囚われてしまうことになります。

最終的には、都合の良いデマばかりが蓄積して通用することになりますので、私は、これをリーガル蠱毒と呼んでいます。
ネットで法律問題について情報交換をすること自体を一切してはならない、ということではありませんが、次のようなフレーズが一部にでもあれば、眉に唾をつけて閲覧した方がいいと思います
  1. 自分の相手方の案件を受ける弁護士は、ダメな弁護士である→弁護士攻撃しても意味ないですし、相手に弁護士がつくことでスムーズにいく案件は多いです。
  2. 自分に請求をしている(請求を拒む)者は、弁護士にそそのかされているに違いない→現実に向き合いましょう。弁護士はそんな力を持っていません。
  3. 自分に都合の悪い情報は、対立当事者の情報工作であるに違いない。→そんな暇じゃありませんし、自分に都合の良い情報しか信じない人たちには、情報工作は通用しないはずなので安心(!)しましょう。
  4. 自分に都合の悪い情報は、弁護士の情報工作に違いない。みんなでネットde真実に目覚めよう→弁護士はいかなる立場でも代理することが通常なので、一方立場に偏った情報工作なんかしません。というか、みんなそこまで暇じゃないです
  5. 法律論について、絶対に〇〇という形式論で決まるはずだ!→不安になると形式論に逃げ込みますが、法律問題はそういうものではありません。
  6. 判例で決まるので、大丈夫(何が?)→同じく。というか、「判例で決まる」事件なんて、めったないです。はい。
  7. 自分の対立当事者の事件は、弁護士の金目当てビジネスに違いない!→こういうこと言われる案件に限って逆に赤字必至だったり、少なくともギリギリの案件だったりします。