弁護士から内容証明郵便が届いた時に、それを公開してもいいのか、という問題があります
中には、弁護士が、公にしないように求める内容を記載していることもあります。 
そういう場合は、どう考えるべきでしょうか。

まず原則として、内容証明郵便を公にすることは違法になる可能性が高いということがいえます。
紛争の存在や事実は、双方にとってのプライバシーだからです。つまり、相手方のプライバシーを違法に侵害した、ということになります。
なお、相手方の個人情報をマスキングして公開した場合は、どう考えるべきでしょうか。
これについても、事件の内容から当事者が推知できるなどの場合には、やはり、プライバシー侵害の可能性が残るというべきです。
ただ、裁判例については、固有名詞を匿名化処理して、その上で公開する、ということがよく行われています。判例データベースもそうなっています。
これについては、裁判の場合は、一定範囲でプライバシーの放棄があったといえることなどを理由にすることができると思っています(勘違いしないでほしいのですが、裁判は公開されているから、その内容の公開が無制限に適法になるということではありません。これは裁判例もあるところです。)。一方で、内容証明郵便の場合には、第三者が一切関与しないですし、かつ、双方もその前提で行動していますので、匿名化処理をしても公開が違法になる可能性はあると思っています。
さらに、これはそんなにないことでしょうが、事件について社会の正当な関心事といえる場合は、公開が例外的に適法化されることもあり得ます

一方で、著作権を根拠にできるか、つまり、内容証明郵便に著作物性が認められるかという問題があります。
これについては、ケースバイケースでしょうが、一定の法的見解を示す、請求を明らかにする、という程度ですので、著作物であるということはいえないことが多いと思います。
もっとも程度問題ですし、準備書面(裁判所に出す書面)並に複雑であるとか詳細とか、そういう事情があれば、著作物であると認められる可能性も高くなると思います。

さて、これは、ネット上の表現トラブル(発信者情報開示請求をするようなケース)でよく生じる問題です。
ただ、内容証明郵便を公開することが違法になるということと、弁護士として、それの対策・配慮をしない、ということは別問題です。
公開することが違法であったとしても、そもそも、内容証明郵便を出す時点で、相手方が違法行為をしたという主張をしているわけです。違法行為をした相手方が、違法行為を今後絶対にしない、つまり内容証明郵便を公開しない、 と安易に期待することは弁護士としては不注意です。

ですから、弁護士としては、内容証明郵便を公開して欲しくないのであれば、それを記載するだけではなく、仮に公にされたとしても、第三者がそれを見て、こちら側に非難が生じないように注意が必要です。
そのため、文面であるとか、法的な意味合い、法的に微妙な請求をしない、過大請求も慎む、ということは大事になってきます。

仮に、恫喝的であるとか、過大な請求とかをする、あるいはそのような感想を持たれる内容証明郵便を出した場合、それが公開され、依頼者と弁護士が共同で炎上(共炎)するということもあり得ます。
ネット上の表現トラブルについては、請求される側に弁護士がつかないことも多いところ、それに乗じて恫喝的であったり、過大な請求をするケースが少なくありません
ついては、このような共炎リスクには注意が必要でしょう。