無料電話法律相談で,頻出の質問でした。
裁判所からもいろいろ連絡もらい,情報もそこそこ出そろいました。
ということで,いろいろ誤解している人も多かったので,少しまとめておきます。

Q1.とりあえず,先に結論を教えてください。
これが原因で,請求者が本来はできる発信者情報開示請求が出来なくなる,投稿者が責任を免れるということは少ないでしょう。単に結論は先送りになるということです。
ただし,Twitterなど海外の事業者が関係しているケースでは,請求が困難になる可能性があります。

Q2.緊急事態宣言と裁判の関係について教えてください。
原則として,緊急を要する裁判以外は,延期されます。

Q3.延期される裁判,されない裁判を教えてください。
刑事事件の身柄関係,民事保全などについては原則として延期されません。
通常の民事訴訟については,延期されるケースが大多数です。

Q4.発信者情報開示請求との関係はどうなりますか?
民事保全つまりIPアドレス開示の仮処分については概ね予定通り
行われています。
通常訴訟つまり氏名住所の開示については, 延期される可能性が高いでしょう。

Q5.Q4についてもう少し詳しく教えてください。
掲示板などの管理者をコンテンツプロバイダ,接続サービスを提供する通信会社を経由プロバイダといいます

発信者情報開示請求は, コンテンツプロバイダからIPアドレスをもらい,そのIPアドレスを管理する経由プロバイダに氏名と住所の開示を求めるという2段階になります。
民事保全とは略式の裁判で,急速を要する事件について,通常訴訟よりはるかに速いスピードで裁判が行われます。
通信記録は保存期間がありますので,急がないといけません。ですから,コンテンツプロバイダにIPアドレスの開示請求をする場合,急速を要する事件ということで,民事保全ということになります。
一方で,経由プロバイダに氏名住所の開示を請求する場合,経由プロバイダは結論が出るまで,通信記録を保存してくれますし,氏名と住所という最終の個人情報ですので,民事保全ではなくて,通常訴訟ということになります。
 
 Q6.通信記録の保存をお願いすればいいのだから,民事保全は不要なのではないですか?
いいえ。氏名と住所を持っているのは経由プロバイダです。
ですが,どの経由プロバイダに発信者情報開示請求をすればいいかは,IPアドレスを手に入れないとわかりません。
そういうことで,IPアドレスを手に入れないと「通信記録を消さないでください」とお願いする先がわからない,ということで,IPアドレスを入手するためのコンテンツプロバイダへの裁判について,民事保全が認められているわけです。

Q7.以上に例外はありますか?
細かいことをいうときりが無い,基本的にはケースバイケースです。
プロバイダや事案によっては,発信者情報開示請求に裁判外で積極的に応じる場合もあります。そのようなケースは見極めが重要です。
ネット上の法律情報は,とにかく,裁判例で決まるとか,一般化・単純化されている,したがる傾向がありますが,そもそも法的紛争は例外の場面を扱うものですから,通用しません

Q8.海外事業者が関係するケースではどうなりますか?
発信者情報開示請求で,発信者を特定することが困難になることもあり得ます。
海外の事業者がコンテンツプロバイダの場合,民事保全を使います。書類は,国際郵便を使って送付することになります。
ところが,現在,これらは非常に時間がかかったり,引き受けに制限があったりします。
そうなると,そもそもIPアドレスの入手に時間がかかることもあります。
その結果,通信記録の保存期間が経過してしまうこともありえるでしょう。
なお,以上は,原則です。海外事業者によっては,このような手続きは不要な場合もあり,そのようなケースでは,国内の案件と同じく,時間はかかるが責任の有無に影響はない,という結論になります。

Q9.発信者情報開示請求に係る意見照会書については,どうなっていますか?
私の知る限り,通常通りに受け付けて,通常通りの照会がされており,期限も変更はないようです。
ただし,裁判上の請求場合,初回期日が先になる,取り消しになるので,大幅な延長に応じてもらえる可能性はあり得ます。

※一般論については→ネット投稿者の責任についてのまとめQ&A(+ネット上の誤解)