弁護士 深澤諭史のブログ

弁護士 深澤諭史(第二東京弁護士会 所属)のブログです。 相談等の問い合わせは,氏名住所を明記の上 i@atlaw.jp もしくは 03-6435-9560 までお願いします(恐縮ですが返事はお約束できません。)。 Twitterのまとめや,友人知人の寄稿なども掲載する予定です。

2020年04月

発信者情報開示請求に係る意見照会書が,どうやって届くか,というお話です。
被害者(と主張する者)が,ネットで「開示請求やるぞやるぞ」いっているケースで,不安になる方が多いらしく,結構質問を受けますので・・・。
なお,いろいろ情報がつかめたりするフェーズだったりします。
ネット投稿者の責任についてのまとめQ&A(+ネット上の誤解)

AbemaPrime(4月28日)に久々に出演しました(・∀・)
今回のテーマは,SNS等のアカウント売買の問題についてです。
詳しくは,配信を見て欲しいのですが,いろいろと法的問題がある分野です。

なお,今回,Zoomで出演しました。みんなの顔がみられて,不思議な感覚ですが,出演者間の掛け合いがスムーズで,よいと思いました。 

自由と正義の5月号と6月号は中止だそうです。コロナウイルスの影響で,編集委員会も開けないとか・・・。
凄い影響が出ていますね。

なお,自由と正義というのは,日本弁護士連合会の機関誌です。
弁護士向けの情報が沢山載っていますが,実務上,有益な論文なども多数掲載されています。
私も,非弁問題や,弁護士広告について,なんどか書いたことがあります。

「自由と正義」って凄い名前ですが,以前は「正義」ってタイトルだったそうです。すごいですね。
Σ(・ω・ノ)ノ 


正直,この規制,必要性は理解できるのですが,もう少しなんとかならないか,と思うこともあります。
ただ,非弁提携弁護士の業務の「すさまじさ」を何度も見ていますので,安易な規制緩和は絶対ダメだとおもいます。 

弁護士には日弁連の定めた広告規程というものがあり、非常に厳しい規制を設けられています。
この規制の合理性については、私も色々と思うところはあります。ただ、現状、規制として存在していますし、一方で、合理性云々以前の遵守もできていないというケースが散見されるので、憂慮しているところです。

さて、今回のテーマは、弁護士が匿名で依頼を募るという問題です。これについては、どのような問題があるのでしょうか。
まず、前提として、弁護士が匿名でSNSをやる、匿名でSNSをやることは問題ありません。
これについては、「匿名で弁護士を名乗ることは適法か?」を参照してください。
要するに、非弁護士が弁護士と名乗る、つまりは弁護士を詐称することは犯罪です。ですが、弁護士が匿名で弁護士と名乗ることについては、一切の規制はありません。 
匿名であっても弁護士は弁護士ですし、弁護士が弁護士と名乗るにあたって、実名でないといけない、とか、匿名はダメとか、あるいは、弁護士と証明できないとダメとか、そういう規制は一切ないからです。

では、次に、弁護士が匿名で依頼を募る、ということの適法性について検討してみます。
結論からいうと、これは弁護士広告規程違反です。
匿名で弁護士を名乗ることは合法でも、広告規程との関係では、さらに別の規制があるからです。
弁護士の業務広告に関する規程9条1項
弁護士は、広告中に次に掲げる事項を表示しなければならない。
 氏名(職務上の氏名を使用している者については、職務上の氏名をいう。以下同じ) 。
二 所属弁護士会
2号はかなり有名です。法律事務所名は必須ではないのに、所属弁護士会は必須である、ということです。
ところが、氏名を表示しないと、広告の意味がありませんので、1号は問題になることはなさそうです。
ですが、匿名で広告となると、たとえ、真実の所属弁護士会を表示していても、1号を満たさなくなるので、違法な広告、ということになります。

したがって、結論としては、弁護士会を表示していても、匿名で、つまり広告(依頼の勧誘)の中に、弁護士氏名が入っていない、それがわからないと、違法な広告ということになります。

さて、ここまでが原則論です。法律家というのは、ダメダメ言っているだけではダメなんです。もちろん、脱法的行為は慎まなければなりませんが、これについては、解決法があります。
弁護士の業務広告に関する規定9条3項
弁護士等が共同して広告をする場合は、当該広告を代表する者が、弁護士のときにあっては第一項各号に掲げる事項を、弁護士法人のときにあっては前項各号に掲げる事項を、それぞれ表示することをもって足りる。
要するに、弁護士複数名で広告をする場合は、代表者一名についてのみ、それを表示すれば足りる、というものです。
したがって、匿名で広告をしたい弁護士Aがいたとして、実名でSNSで活動している弁護士Bが、その者と共同広告をすれば、問題はない、ということになります。

もちろん、広告に問題があった場合、Bも責任を問われます。また、Bは弁護士会の調査に協力する義務があるので、弁護士会にAの正体について聞かれた場合は、答える義務があります。

ですから、完全に匿名であるとか、違反を糊塗するとか、そういうことはできません。
ただし、適正に広告をしている限りは、実名で協力してくれる弁護士がいれば、合法的に匿名広告ができる、ということになります。

一方で、以上は形式的な解釈です。脱法的である、という批判はあるかもしれません。
つまり、9条3項の趣旨は、複数の弁護士が共同広告をする場合に、全員の表示を要求することは迂遠であるし、冗長だし無駄も多いということで、省略を認めたに過ぎず、実名弁護士と手を組んで匿名広告を許す趣旨ではない、という指摘が考えられます。
この指摘については、私見では、問題ないと考えます。理由は次のとおりです。
確かに、9条3項は、指摘のように匿名広告を許容したものではありませんが、想定もしておらず、したがって積極的に禁止している、というわけでありません。
そして、9条1項の趣旨は、所属会と氏名を明らかにすることで、責任を明確化し、かつ、市民が苦情を述べる場合に、その便宜を図る、というところにあります。

そして、一人でも表示をしていれば、弁護士には調査に協力する義務がありますので、匿名弁護士についても、容易に弁護士会は、これを知ることができます。
ついては、規程は、積極的に匿名広告を認めているわけではないし、純粋な匿名広告はこれを禁じているが、一方で、上記のような広告手法について想定はしていないが、積極的に禁じる趣旨ではないといえます。

ですから、結論として、問題はないと思います。もっとも、立法論として、これを禁じるということもあり得ると思いますが、それは、あくまでも、立法(規程策定)の問題であって、現行の規程が上記のような広告を禁じていると解釈する理由にはならないと思います。
 

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