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弁護士 深澤諭史(第二東京弁護士会 所属)のブログです。 相談等の問い合わせは,氏名住所を明記の上 i@atlaw.jp もしくは 03-6435-9560 までお願いします(恐縮ですが返事はお約束できません。)。 Twitterのまとめや,友人知人の寄稿なども掲載する予定です。
大学入試改革と平成の法曹養成制度改革って怖いくらい類似している。結末も同じくらいひどいことになりそう。それどころか社会的影響ははるかに大きい。
— 深澤諭史 (@fukazawas) January 21, 2020
1.表現力だの国際ナンチャラだのと抽象的な目標で中身がない。
2.現状否定から始まるが現状の何がどう問題なのか分析的検討がない
続
これについては、弁護士法上の問題がありまして、無資格の弁護士活動となる可能性があります。
これは交渉すればもちろんですが、交渉に至らない書面の作成であっても、非弁行為になる場合があります。ただ、今回はそれについて詳しくは解説しません。
今回は、非弁行為以前の問題について語ります。
行政書士に慰謝料請求の内容証明郵便を依頼することは、非弁云々の問題以前に、まったくの有害無益です。
こういうこというと、特定の資格の意義を軽視しているとか、いろいろと勘違いされますが、そもそも資格の役割の内外の問題です(もっというと、私は行政書士の業務範囲について、近時の裁判例よりも広くとらえる解釈を支持しており、その前提で執筆もしています。)。
慰謝料請求とは何か、慰謝料とは何か、そういう基本的な法的知識、そして交渉のルール、考え方といったものをごく簡単にでも知っていれば、行政書士として慰謝料請求の内容証明郵便の作成は受任しないでしょう。
仮に受任するとすれば、そのあたりを知っていながらもあえて受任しているか、もしくは知らずに受任しているか、のどちらかである可能性が高いと思います。
さて、法的に何らかの請求をする書面を送るというのは、交渉の1つです。そして交渉というのは、お互いがお互いの希望を出し合って、それぞれに説得する材料を出し合い、お互いがお互いのリスクを考えながら、その上で、お互いが合意を目指して活動する、というものです。
とりあえず威勢のいいこといっておけばいいとか、そういうものではありません。議論と口喧嘩が違うのと全く同じことです。
非弁業者が作成した書面の中には、とりあえず恫喝的文言をずらずら並べているものもしばしばありますが、全く無意味なことです。
さて、なぜ行政書士が受任した慰謝料請求の内容証明郵便が、無駄なのでしょうか。
それは、その請求に応じるメリットが、受け取った方に全くないからです。
それを受け取って、相手の言い値通りにお金を支払ったところで、こちら側は何の得にもなりません。お金が出ていくだけだからです。
また交渉して、その一部を支払うにしても、そのお金が出ていくだけで、こちら側としては、何のメリットもありません。何の得にもなりません。
「それは、弁護士が作成して代理して送付する内容証明郵便でも同じではないか」と思うかもしれません。しかし決定的に違います。
行政書士の場合は、それを断ったところで、その後で訴訟提起して代理するという事はできないからです。裁判をされない限りは、少なくとも法的に支払いを強制される事はありません。だから無視しても何の問題もない、ということになります。
もちろん、そのあとで本人訴訟するとか、弁護士に依頼するかもしれません。でも、問題は自分の考えではありません。受け手がどう思うかというと、やはり上記のようになります。
一方で弁護士(+簡易裁判所における認定司法書士)の場合には、交渉がまとまらなければ、裁判で代理して請求をする、と言うこともできます。そうなると、交渉して裁判前に解決することができれば、お互いに裁判のためのコストを節約できるというメリットがあります。要するにお互いに、交渉するメリットがあるということです。
特に慰謝料請求は、金額の予想、算定が難しく、裁判されるかもしれないことを前提とした交渉では、お互いに譲歩の余地・動機があります。
もっとわかりやすくいえば、 交渉が決裂すれば、裁判のためのコストと、結果も正確には読めないリスク(慰謝料事案で顕著です。)の2つを抱えます。交渉であれば、このコストとリスクは負担せずに済みます。そうなると、条件が折り合えば、自分の希望と離れていても、コストとリスクを回避する代償として譲歩の余地があるということです。
さらに、弁護士ではなくて行政書士から書面が届いているという事は、相手方には、裁判をする意思がない、ということがわかります。仮に裁判をする気があっても、受け取った方としては、そう考えざるをえません。何度もいいますが、交渉とは主に相手方の問題なのです。自分のお気持ちではありません。
そうなると、法的措置がどうこうなどと、威勢の良い言葉がたくさん並んでいても、それは結局、口だけであるだろう、ということになります。ますます、交渉に応じるメリットはなくなる、ということです。
以上、要するに慰謝料請求する内容証明郵便を、行政書士に依頼して出した時点で、こちら側は、裁判までやる覚悟がない、と相手に教えてしまう、私の請求は無視してもかまいませんよ、というようなメッセージを発信してしまうということです。ですから百害あって一理なし、ということが言えるわけです。
ひょっとしたら、無視したらリスクがあるかもしれません。でも、それは相手に伝わらないと意味がないのです。交渉とはそういうものです。
それでは、行政書士に文面を依頼するが、名義は自分で出して、行政書士に依頼したことがわからないような書面にした場合はどうでしょうか。
結局、それでも上記と同じようなことがいえます。受け取った人が弁護士に相談をすれば、そのあたりはバレる可能性があります。
仮にそうならなくても、内容証明郵便という滅多に使わない郵便の作成に至っても弁護士に依頼しない、そうなると、「この人は裁判までやる気なさそうだな」ということで足元を見られることになります。
もちろん、最初は弁護士に頼まないで、自分あるいは行政書士に依頼して内容証明郵便を出して、応じない時点で弁護士に依頼して訴訟、ということもあるかもしれません。
しかし、問題は相手方の認識です。自分は本当に裁判する気があっても、それが相手に伝わらないと意味がありません。
内容証明郵便を出す、という段階に至っても弁護士を依頼しない人が、果たして裁判をする気があるのだろうか、と疑われるリスクはあります。そして、こちらの裁判への覚悟が伝わらなければ、譲歩する動機も生じません。
交渉の勝敗は、自分ではなくて相手方が決めるものです。交渉においては、自分(の依頼者)ではなくて、相手方のことこそよく考えないといけません。
会派の新人歓迎会。
— 深澤諭史 (@fukazawas) January 16, 2020
会場が豪華すぎ pic.twitter.com/th1mbXBake