弁護士 深澤諭史のブログ

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2019年08月

ネットに連絡先を表示している,電話相談(ケースによっては無料相談)を実施していると,セカンドオピニオンを求められることも珍しくありません

そこで述べられる話を100%そのとおりであると考えるのは,公平ではありません
後医は名医という言葉がありますし,しかも,不満を持っている一方当事者の意見だけでを聞くわけですから,話半分か4分の1で考える必要があります。

ただ,それを差し引いても,処理がずさんであるとか遅延しすぎ,そして全然連絡がとれない,これらは本当だろうというケースはしばしばあります。

そういうケースでは,少なくない割合で「ホームページがゴージャスで,●●に強い弁護士」って沢山書いてあったので依頼しました,という話を聞かされることが多いです。

別に「●●に強い」と連呼すること自体は悪いことではありません。ただ,そういう中には,それが自称に過ぎず,依頼者とミスマッチを起こしているケースが,私の観測範囲ですが,少なからずあるように思えます。

こういうトラブルに巻き込まれないコツですが,「●●に強い」とか「●●特化」とか,そういう派手な宣伝文句が躍っている弁護士については,特に専門家向け著作や論文,解説の有無を確認するという方法があります。

ネットで「●●に強い」とか「●●特化」と連呼しており,それが本当であれば,専門書や解説文の依頼の一つや二つくらいはあるはずです。
ただ,気をつけないといけないのは,一般向けの書籍ですと,弁護士であれば,少なくともそれなりのことは書けてしまいます。そもそも「一般向けのテクニック本」は,正確性が検証しにくい(悪い言い方をすれば,ハッタリがある程度通用してしまう可能性がある。)ので,適当なことを書いてもできあがってしまうという問題もあります。

そこで,弁護士や他の法律家向けの著作や解説文などの有無を確認するとよいでしょう。これは,プロがプロ向けに,法律について書くのですから,実力不足だと簡単に馬脚をあらわすことになります。
つまり,すくなくともその分野について,平均的弁護士を相当程度上回る知見がないと書けない,書いてあるので,その事実がそれなりに推定出来る,というものです。

もちろん,無いと問題である,と決まるわけではありません。ですが,派手なセルフブランディング・広告をしているのに,なぜかその分野の著作はない,というのは,一応,疑問符を付けることも考えられる事情ではあると私は思います

なお,念のため,ある分野について凄い実績,実力を持っている弁護士でも,著作や論文がないケースは珍しくありません。以上は,「●●に強い」「●●特化」とか,派手なセルフブランディングをしているが,内実を伴わない可能性のあるケースの話です。

弁護士をやっていると,「あいつは,こんなに悪い奴だ。だから,悪い事情を主張して欲しい。」というような希望をよくうけます。

この根底には,悪い奴だと裁判所に理解して欲しい,だから,こんな悪い奴を勝たせて欲しくない,あるいは,その人への憎悪などの感情が背後にあるのではないかと思います。

ですが,このような主張は,よく考える必要があります。

裁判では,基本的に,請求を基礎付ける事実の有無が争われます

たとえば,100万円を貸したから返せ,というような裁判で,借主の相手方がいくら悪人であると主張しても,基本はかわりがないからです。

どんな善人でも借りた100万円は返さないといけません。逆にどんな悪人でも,借りてもいない100万円を返さないといけない,ということはありません。

もちろん,悪性を主張することが必要なケースもあります。

ただ,相手の悪性の主張ばかりをしていると,法律上の正当な理由はないが,怨恨で裁判をしているだけではないか,肝心の争点について証拠がないので,悪性の主張でお茶を濁しているのではないか,ということで,逆に不利になるケースの方が多いでしょう。

気持ちとしては理解できますが,このあたりは注意が必要です。
気をつけないと,弁護士の労力を意味のないどころかマイナスの行為に使わせて,肝心の部分が不十分ということになりかねません

過払い金返還請求が隆盛を極めた時代がありました。
莫大な売上を弁護士業界(認定司法書士や広告業界も含む。)にもたらしたといわれています。

ところで,最近,何か新しい法律問題や分野が出てくると「過払い金に続く弁護士の新しいビジネスだ」と,時には皮肉を込めて言われることがあります

こういう言葉は,簡単に当てはまる,つまりは真実なのでしょうか?

結論から言うと,ほとんど全て間違っています過払い金返還請求には特別な事情があり,だからこそ,あれだけ隆盛を極めたのです。ですが,他の事件には,同じような事情がありません。

「過払い金返還請求に続く」というためには,そうだといえるためには,過払い金返還請求がなんであれだけ流行したのか,その特殊事情を知らないといけません

そして,そのような特殊事情が,その「過払い金に続く弁護士の新しいビジネス」とやらにも当てはまらないといけません
あらゆる問題にいえることですが,分析するには,段階を踏んで分析的,論理的に検討する必要があります。

(事業者ではなく)一般市民,個人から弁護士が(金銭を請求する立場で)事件を受けるには,次のような大きな「壁」があります(念のため,これらに限られませんが,大きなものは以下のとおりです。)。
  1. 弁護士費用が支払えること
  2. 弁護士費用を支払う動機があること
  3. 事件について勝訴の見込みがあること
  4. 事件について,勝つだけではなくて金銭的評価につながる充分な証拠があること
  5. 相手方に支払いをする能力があること
  6. 相手方に強制執行をすることが容易であること
  7. 以上について見通しを立てられること
すくなくとも,金銭の支払いを請求する側に限ってみても,このような壁があります。かような事情がないと,一般市民は弁護士に依頼をすることを決断することは困難です。

まず,1についてみると,そもそも弁護士費用が用意出来ないと,法テラス等の例外がないと,依頼することは困難です。

次に,2ですが,支払いが可能であっても,その支払いが合理的であること,つまり,依頼者に支払いをする動機が必要です。お金があっても,費用対効果の問題などで,支払って依頼を決断するところまでいかないことは珍しくありません。

3はイメージしやすいと思うのですが,裁判で勝つ見込み,つまり,法的,事実上,証拠上,こちらに勝訴の見込みがないといけません。

4ですが,勝訴しても,充分な金銭的評価につながらないといけません。ネットの投稿事件などではよくあるのですが,(とある「工夫」をしないと)100万円近い弁護士費用を費やして賠償金が10万20万円というケースも珍しくありません

5については,ない人からはとれない,ということで,相手にお金がある必要があります。

6については,お金があっても,強制執行つまり差押えができるかは別の問題です。強制執行しやすい事情も必要です。

7について,以上,これだけの条件があっても,実際にそれがわからないと意味がありません。これもハードルです。

以上,これらを全て満たすというケースはそう簡単にありません。

ですが,過払い金返還請求は,以上の条件を全て満たしていることが多い,希有なケースなのです(なお念のため,必ずしも全て当てはまるわけではなく,しかも過払い金返還請求が必ずしも簡単な事件というわけではありません。しっかりとやろうとするほど,かなり難しい論点もあります。過払い金返還請求は簡単すぎるというような指摘もありますが,そんなことはありません。)。

まず,1についてですが,過払い金返還請求においては,過払い金で弁護士費用を支払えますので,これを満たします。

次に2についてですが,回収後,過払い金から報酬を控除して支払う,という形式つまり完全成功報酬制ですので,依頼者に負担感が少なく,支払う動機があるといえます。

3について,充分な判例の蓄積がありますし,4の事情も相まって勝訴の見込みがあるといえます。

4についてですが,過払い金返還請求においては,証拠となるのは取引履歴です。そして,これは,請求をすれば,金融業者は開示しないといけません
さらに,そこに記載されているのは,まさに具体的な金額ですから,証拠,勝訴がそのまま金銭的評価につながります

5について,これは業者次第ですが,現在も経営しているのであれば,支払い能力はあることが通常でしょう。

6についても,法人については差押えの制限がほとんどありません。また,取引口座もわかることが通常です。更に,テクニックとして,「その業者からお金を借りている人に,過払い金債権を売却する」ことでも回収が可能です。どういうことかというと,100万円借りている人に,70万円で100万円の過払い金債権を売却する,とか,そういうものです。
借りている人は,自分の借金と過払い金債権の相殺を主張すれば,100万円の借金を70万円で返済出来る,ということになります。

そして,7について,これは関連する書籍もメーリングリストも多数あり,情報を手に入れる機会は十分にあります。


過払い金返還請求事件というのは,これらの特殊事情が大量に重なっているものであり,これは希有なケースです。

特に,取引履歴が開示されるというのは,決定的証拠がちゃんと保存されている,しかも相手から出てくるというものであり,これは中々ありません(残業代請求はそれに近いところがありますが,取引履歴ほど証拠としての価値は高くありませんし,ないこともあります。)。

「●●は弁護士の新しいビジネスだ」みたいなことをいわれるとき,なぜか●●には経済的にペイしない事件ばかり入るのが不思議ですが,とにかく,そういう言説については,以上のような実務上の事情を考慮しないと評価が出来ない,ということになります。

法律相談をやっていると,「こんな書類が来ました!」ということで,請求を受けた人の相談を,届いた書面を見ながら相談をすることがよくあります。

ところで,その中には,期限の設定があり,それが一週間以下とか,数時間(!)とか,そういったこともあります。特に短い期限設定は,弁護士がついていない案件や,OJTの機会が乏しかった可能性のある若い弁護士の案件で多いように感じます。

法律上,守らないと大きな不利益のある期限もあります。たとえば,控訴期限とかが典型です。

しかし,事実に争いがある事件で,相手方から相手の見解に基づき請求され,そのときに一方的に指定された期限については,守らないことで大きな不利益が生じることは稀です(ないわけではないです。)。

交渉段階で相手方が設定した期限を守ることが大事なのは,相手方の提案が相場より有利か,すくなくとも相場通りである場合,です。

なお,以上はあくまで原則です。交渉というのは,いろいろ事情がありますので,下手に慌てるのはもちろん,逆に高をくくって無視することなくて,すぐに相談に行くことが絶対に大事です。

ネットのデマ信じ「上申書」で出頭拒否 速度超過容疑で男逮捕

こんなニュースが話題です。

インターネットは,自分にとって都合のよい情報だけかき集めることが出来る,紛争の渦中の当事者が,みずから都合の良い法律情報を広めているなどの事情で,「インターネット上の法律情報の注意点」があるというのは,過去に取り上げました。

交通刑事事件に限らず,法律情報一般,特にネットトラブルの法律情報は,非常にデマが多いです。

そして,そのデマの影響力が大きいことも,法律相談をこなしている中で痛感することもしばしばです。

分野を限定しなくても,弁護士であれば,「私は法律に詳しい。私はネットde真実の法律情報に目覚めましたので,そのとおりにしてください。『ネットde真実』の通りにならないのはおかしい!」というような趣旨のことを言われた経験をするのは珍しいことではありません。

ぱっと思いつくだけでも「ネット投稿:発信者情報開示請求と賠償責任に関するデマと誤解」に掲載したように沢山のデマがあります。

気休めのデマと心中しないように,ご自身の問題については,なるべく早くに弁護士に相談しましょう。

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