弁護士 深澤諭史のブログ

弁護士 深澤諭史(第二東京弁護士会 所属)のブログです。 相談等の問い合わせは,氏名住所を明記の上 i@atlaw.jp もしくは 03-6435-9560 までお願いします(恐縮ですが返事はお約束できません。)。 Twitterのまとめや,友人知人の寄稿なども掲載する予定です。

2019年08月

(;・∀・)実は今のところ,単著の企画が3つほどありまして・・・。
(^ω^)うち,決定は1,ほぼ決定は1,企画中が1って感じだお。
(;・∀・)非弁と広告の時は同時にほぼ同時に2冊という進行でしたが,さすがに3冊はむずいっすね。
(^ω^)ということで,一冊ずつ進めていっているお。出版社さんには迷惑かけられないお・・・。
(*・∀・)なお,うち1冊は,ちょっと変わったテーマの予定ですので,乞うご期待!

ネットトラブルの無料電話相談をやると,遠方の方からの相談もあり,そのなかでよく聞かれるトピックです。
また,つい先日も,弁護士同士ですこし話題になりましたので,一般向けに少しまとめてみることにします。

まとめ
  1. 裁判は原則として被告の最寄りで行う。
  2. ネットの表現トラブルでは,プロバイダ相手の裁判(開示訴訟)と投稿者相手の裁判(賠償訴訟)がある。
  3. プロバイダはほとんど東京なので,開示訴訟はほとんど東京で行われている。
  4. 賠償訴訟の原則は,投稿者の最寄りの筈だが,実際は東京地方裁判所で行われるケースも多い。
説明

まず,ネット上の表現トラブルの裁判は2種類あります。プロバイダ(サーバーレンタル会社も含む。)に,発信者情報開示請求をするための裁判,これで,投稿者を特定します。

もう1種類は,投稿者への賠償請求です。この2種類の裁判がネットの表現トラブルでは問題になります。
書き込まれた人間からすればこの2種類両方が,書き込んだ人間からすれば,後者1種類だけが問題になるということです。

まず,裁判の原則ですが,その原則は被告の最寄り(それ以外のケースもあります,念のため)の裁判所で行うというものです。
裁判というのは自由に起こせます。しかも,放置すると敗訴します。となると,被告の応訴(裁判に対応すること)のコストを下げるため,こういう原則が取られています。

したがって,開示訴訟の場合はプロバイダの最寄りになります。ほとんどのプロバイダは東京にありますので,東京地方裁判所が原則です。更に,海外のプロバイダの場合も東京となります
なお,著名なレンタルサーバー会社の中には,大阪の会社もあるので,その場合は大阪地方裁判所となります。

次に2種類目,つまり賠償請求ですが,原則は被告の最寄りということになります。
ですが,被告の最寄りというのは原則です。いろいろ例外があります。
たとえば,事件・事故の場合,その現場の最寄り,ということも可能です。
ネットの投稿は,日本中で被害が発生しますので,それを利用して東京ということも可能です
また,他にもいろいろと原告の最寄りに寄せる方法があります。

以上をまとめると,ネットの表現トラブルでは東京地方裁判所で裁判するというケースが多数であるということがいえます

そして,両当事者が東京でない場合に,東京地方裁判所というケースも珍しありません。私も,お互いが東京からはるかに離れた裁判を東京地方裁判所でやったことはなんどもあります(相手方代理人弁護士も東京に事務所がある。)。

どこの裁判所でやるか,それで争いになることも多いのですが,私の経験上,当事者双方がどこに居ても,基本的に東京地方裁判所ということで,場所が争いになることは稀であるという認識です

非弁が悪い理由については,最高裁の判例があります。

「弁護士は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とし、ひろく法律事務を行なうことをその職務とするものであつて、そのために弁護士法には厳格な資格要件が設けられ、かつ、その職務の誠実適正な遂行のため必要な規律に服すべきものとされるなど、諸般の措置が講ぜられているのであるが、世上には、このような資格もなく、なんらの規律にも服しない者が、みずからの利益のため、みだりに他人の法律事件に介入することを業とするような例もないではなく、これを放置するときは、当事者その他の関係人らの利益をそこね、法律生活の公正かつ円滑ないとなみを妨げ、ひいては法律秩序を害することになるので、同条は、かかる行為を禁圧するために設けられたものと考えられるのである。」
-昭和46年7月14日最高裁判所大法廷判決 最高裁判所刑事判例集25巻5号690頁
(強調は引用者)

こういう格好いい言葉を使う説明ももちろん正しいとは思います。

でも,非弁業者の振る舞いというか,その対応とかみていると,法律云々以前に,やっぱり任せちゃいけないなって痛感することがしばしばあります。

仮に医師免許の制度がなくても,衛生観念ゼロで手も洗わない人には医業をやらせてはいけないと思いますが,同じ事が,非弁業者についてもいえます。

インターネットを見ていると,法的紛争について,夢のような解決,勝訴!大勝利!みたいな話が転がっています

もちろん,大勝ちしたから,大喜びで,そして「俺と紛争になるとこうなるんだぞ!」みたいな威嚇・警告の意味で行っているのでしょう。だからこそ,そういう大勝ちの話ばかり出てくるのではないか,と思います

ところで,こういう話は,基本的にバイアスがかかっています,鵜呑みにするべきではありません。こういう注意は,いままでなんどかこのブログでも取り上げてきました。

最近,ちょっと偶然からなのですが,ネットで夢のような解決をした裁判,といわれているものと思しき事件の判決文を入手しました

ネットで言われていたこととは,ほとんど合致していました。その話に嘘は全くありませんでした。
ですが,肝心な部分がネットには書いていませんでした。個人的には,その部分があるかないかで,印象は大きく異なるということでした。

真実であっても,一部分をあえて書かないことで印象が大きく変わってくることは,この手の話に限られないところですが,やはり,体験談には注意が必要でしょう。

改めてそう感じた次第です。

匿名のSNS等を見ていると,「弁護士共が◯◯を金儲けの道具にしている!」なんていう言説によく遭遇します。

その◯◯には,いろんなものが入りますし,そもそもの問題として,かなり評価の問題となりますので,一概に間違っているとか,正しいとかはいいにくいです。

ただ,ちょっと不思議なのが,そういう言説を述べている人が,たいていの場合は請求を受ける側であること,その原因になる違法ないし不当な行為をした側であるということです。

これは,少し不思議なことです。
そもそも,請求される側が,原因となる違法行為をしなければ弁護士は介入のしようがないわけですから,弁護士はお手上げです。

仮にこの言説が正しい場面があるとすれば,むしろ「◯◯が,弁護士共の金儲けの道具に志願している!」ということになってしまうような気もします・・・。

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