弁護士 深澤諭史のブログ

弁護士 深澤諭史(第二東京弁護士会 所属)のブログです。 相談等の問い合わせは, i@atlaw.jp もしくは 03-6435-9560 までお願いします。 Twitterのまとめや,友人知人の寄稿なども掲載する予定です。

2019年03月

最近、ネット投稿について、投稿された人から、あるいは投稿した人双方から、よく相談を受けます。

いずれも、弁護士に相談前によくお調べになっているようで、多くの場合、話はスムーズです(念のため、そんな予習しなくてももちろん相談は問題ありません)。

ところが、最近は、インターネットの投稿で名誉棄損されるなどの被害にあった場合の慰謝料額や(支払いを請求できる)弁護士費用の関係で、やや誤解があるようなのでちょっとここで補足して解説しておきたいと思います。

1.慰謝料制度について

まず、日本の法律制度では、慰謝料というのは、その精神的苦痛を慰謝(見合う?癒す?)するのに足りるような金額、ということになっています。
ただ、これはある意味でフィクションでありまして、例えば、本人の死亡の慰謝料や親族の死亡の慰謝料は、いくらお金をもらったところ慰謝しようがありません。
と言うことでこれは、一種の擬制、フィクションであると考えてください。

2.慰謝料金額を決めるもの

さて、この慰謝料の金額というものは、当たり前ですが、その精神的な苦痛に比例します。
したがって精神的な苦痛が大きい事案ほど、その金額も大きくなります。逆もまた然りです。
ただ、これは主観的なものではなく、客観的に判断することができる範囲で、ということになります。

そして、ネットの投稿による被害については、ちょっと誤解を生じやすいところもあります。
この場合の精神的苦痛というのは、そういう投稿をされたことによる苦痛です。もっと言えば、自分がそういう投稿を読んで、自分自身が傷ついたというのは、一定程度考慮される可能性はあるかもしれませんが、基本的に基準となるものではありません

具体的にどういったものが基準になるかというと、第三者つまり一般読者がそれを読んで、どの程度の、どういう気持ちを抱くかによって決まります。つまり、基準は、書かれた人間が読んでどう思うかではなくて、一般読者が書かれた人間についてどう思うか、というのが中心となります。

3.実際の判断考慮要素

ですから、厳密には、同じ内容であれば、書かれた人間はそれを読んで同じような気持ちを抱くでしょう。しかし実際は、同じ内容であっても、誰もアクセスしない、あるいは信用性が著しく乏しいサイトに書かれた内容と、著名なニュースサイトに書かれた内容、あるいは新聞や週刊誌に書かれた内容では、同じ内容でも、被害の程度が違ってきます。
ですから、慰謝料の算定に当たっては、内容はもちろん、書かれた場所とか、書かれた人の立場とか、これまでの言動であるとか、そういったいろんな事情を考慮する必要があります。
投稿内容だけで決まるということではありません。

4.実際の金額とその問題

最終的な金額については、同種案件を多数取り扱っている弁護士にとってもその予想は極めて難しいものです。
また、残念ながら通常は、被害者が思うほどは金額が高くならないことがほとんどです。これは、ネットトラブルに限らず、慰謝料全般についても言えることです。
しかし、ネットトラブルは被害者の被害感情が、当然のことではありますが、非常に強いことが多いです。ですから、自分が望む慰謝料額と実際の裁判で認められる金額の乖離が問題になることもとても多いです。

すこし例を、それもここ最近の例(つまり最新傾向)に絞って例を挙げますと、次のようなものがあります。
とある会社の著名な製品について、専用のサイトを作ってまでひたすらダメな製品であると中傷を続けた事件で65万円、30件以上も、その業務について、客に対して暴力をふるとか、ひどいことを繰り返したなどの投稿をした事件で40万円、暴力団関係者だの逮捕されただの、犯罪者呼ばわりした投稿について36万円、さらに女性に対して、性的に乱れているとか、性産業に従事しているなど、ここにはとてもとても書けないような汚い言葉で10件以上も投稿を繰り返した件について39万円ということになっています

これらの金額は、いずれも数百万円、あるいは1000万円などの金額を請求したが、最終的に裁判所で判決で認められた金額です。

したがって、発信者情報開示請求のための弁護士費用も、損害賠償請求裁判をするための費用も、全部この中から出さなければなりません
ですから、多くの被害者にとっては、納得がいかないというケースも多くあるのではないかと思います。

5.ネット投稿における判決と和解金額の注意点

以上は、判決までもつれたというケースです。そして、私の経験上からいっても、この種事件で判決で出てくる金額というのは、和解する金額よりも低いことがほとんどです。
となると被害者としては、判決が出る前に和解をまとめる方が、金銭的には有利であることが原則であるといえます。ですから、交渉においても、その点も考慮する必要があります。
そして和解の金額というのは、判決と言う形を公になることもありません。

また、発信者情報開示請求に使った弁護士費用は、相手方に請求できると言う主張があり、実際にこれにそう判決も複数出ています
もっとも、ごく最近の裁判例、つまりここ1年位に限ってみると、この費用を否定するような見解もまた有力であり、それに従った判決も複数出ています。どちらかというと否定例が有力(ただし絶対ではありません)です。

特に、実費費用が60万円ないし70万円を超える程度になりますと、判決は実費を認めてくれない傾向があるようです。
また、弁護士との契約のやり方とか、そういったものも大きく影響します。ですから、金額と形式については、絶対に事前に、どうすれば実費が認められやすいかを弁護士と相談して慎重に決めておきましょう。その配慮を欠くと、あとで取り返すことは極めて難しいです。

6.まとめ

ネット上の法律情報、特に表現活動に関するそれは、お互いが感情的ということもあり、かなり不正確だったり、正確でも誤解を招く情報が多々あります。
特に、揺れ動きというか、傾向の変化も早いので、弁護士向け書籍に活字になっている情報が、もう古くなっている、その古い情報で助言をされてしまうリスクもあります。

また、実際には双方の主張次第という側面もあり、なかなか予想が難しい問題です(私の経験上も、事業上の重大な損害が生じたので賠償金300万円程度を主張された事案で、きめ細かく反論したら判決では数万円になったという事案もあります。)。
ですが、安易に、投稿で200万円取れるとか、弁護士費用も別に取れるとかそういった言葉を信用するのは、後で弁護士との間でトラブルになりかねないので、注意が必要でしょう。
実際に私も、相手方代理人弁護士と相手方本人が喧嘩を始めてしまったのではないか、というようなケースは度々遭遇しています。
またそうなってしまった方からの相談というのも何度も受けたことがあります。

ですから、見通しが難しいと言うと、厳しくなることもありうるという事、これらについては、ちゃんと依頼する弁護士とよく打ち合わせ議論をしておく必要があると思います。そうしないと、どちらも不幸になってしまう、ということもあります。

今週は、かなり人前でしゃべることが多かったです(・∀・;)

①第二東京弁護士会で倫理研修
②AbemaPrimeでネットの違法な取引について解説
AbemaPrimeで不祥事を起こした著名人の出演作品を「お蔵入り」させることの是非について解説
④Professional Lawyer Japan 2019にて、非弁規制、広告規制、他士業規制と他士業連携の問題について講演
⑤文化放送「エジソン」にて著作権について解説

喉はなんとか大丈夫です(・∀・)
なお、⑤では、間近で声優さんの演技を聞きましたが、本当にプロってすごいですね。
一瞬で別の世界が出現したみたいでした。驚き(^ω^;)


不要な土地というのものは、そのままですと草刈りなどの維持管理費もかかります。

また、処分しようにもそう簡単に引き取り手は見つかりません。「負動産」なんて言葉もあるくらい、悩ましい存在になることがあります。

今回は、そういう問題に対する国の施策について解説します。

以下は、淺井健人弁護士(東京弁護士会)からの寄稿です。

 

1 財務省の動き

不要な土地・建物、国に寄付可能に 財務省検討

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42380600S9A310C1MM8000/

 

これまで、財務省は、土地等の寄付は原則として受け付けていませんでしたが(https://www.mof.go.jp/faq/national_property/08ab.htm)、骨太の方針2018(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2018/2018_basicpolicies_ja.pdf)でも掲げられた所有者不明土地への対策のために、動き出したようです。

 

2 法律改正の動き

所有者不明土地への対策のためには、民法等の改正も必要になることから、民法及び不動産登記法について、平成31年2月14日に法制審に諮問がなされ(http://www.moj.go.jp/content/001284667.pdf)、2020年までに急ピッチで改正がなされる見込みとなっています(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/shoyushafumei/dai2/schedule01.pdf)。

法制審の準備としてなされていた登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会では、最終報告(https://www.kinzai.or.jp/uploads/touki_houkoku_20190228_1.pdf)では、所有者不明土地への対策のために、


相続登記を義務化するか、

義務化した場合に罰則等を設けるか、

義務化した場合に相続登記へのインセンティブ(登録免許税の減免等)を付与するか、

土地建物の放棄を認めるか、

認めるとしてどの範囲で認めるか、費用負担を求めるか


といったことも検討されていました。

 

3 まとめ

売却できない固定資産税だけかかる負動産を相続等で取得された方としては、今後、不要な土地建物の寄付が認められる場合には、どの範囲で可能となるのか、費用負担付となるのかといった点は、注目されるところです。

相続登記をされていない方にとっては、相続登記が義務化されるのか、罰則等が設けられるのか、相続登記へのインセンティブが設定されるのかといった点は、注目されるところです。


はっきりいって、バッジをかけることになりかねません。
通常の法律顧問では、「知らないうちに顧問先が違法行為をしていた」というだけでは、通常は責任を問われません。

ですが、非弁業者の場合、その業務がメインであること、当然に顧問弁護士もそれを知っていた、知っているべきだったこと、ということから、知らないというような言い訳が通用しにくくなります

もちろん、そうであっても、改善のために努力するなどすれば問題がないのですが、名前を表示させるだけ表示させるなどしていると、弁護士として非弁行為に協力したという評価にもなりかねません。

通常の違法行為と違って、非弁行為との関係では、弁護士は高度の注意義務が課せられています
非弁業者の顧問弁護士になるなどして、利用をされないよう、くれぐれも気をつけるべきです。

民間資格としての「●●士」

最近、●●士だのといって、一定の講習を受けると、民間資格がもらえると言うようなビジネスが流行しています。

たしかに、一定の学習、講習、試験を、体系化して、その結果を資格タイトルと言う形にすると言うこと自体は、決して悪いことではありません

むしろ、学習の成果が目に見えて分かるので、社会的には有益な事業だと思っています。もっとも、中には、法規制に関する誤解を利用したかのような、そういう資格商法のようなものが行われていると言うのも事実です。
これは、「サムライ商法」などといわれている昔からある手口です。

民間資格では特別な業務はできるようにはならない

最初に、結論から申し上げますと、民間の資格をいくら手に入れても、もともと国家資格が必要な仕事をすることができるようにはなりません
例えば、「外科治療専門士」、というような民間資格(架空例です。)が仮にあったとして、これを手に入れたからといって、医師でもないのに手術ができるようになるとかそういうことにはなっていません。

弁護士業についていえばなお注意が必要

特に、弁護士業務との関係では、よくよく注意が必要です。
最近、相続や交通事故についての民間資格が多数作られているからです。
中には、ちゃんとレビューしていないせいで弁護士法について誤解しているか、あるいは、知っていてあえて誤導しているのではないか、というのもあります。

具体的な案件について法的アドバイスをするには資格が必要

そもそも法律上、交通事故や相続の具体的な案件について、法律的なアドバイスをすることができるのは原則として弁護士と認定司法書士(140万円まで)だけです。弁護士法は、紛争解決の代理のみならず、法律事務一般について適用があります
アドバイスだけならokとか、そういう誤解があります。そこにつけ込んでいる可能性のある民間資格もあります。

ネットワークも構築できないし、犯罪である

中には、図を書いて、●●士を中心とする専門家ネットワーク等と称して、そういったもののマッチングであるとかそういったことをする、できるようになる、などと標榜している例もあります。
しかしながら、弁護士法は、自分で事件を処理するだけではなくて、それを周旋する行為も禁じています

ですから、こういう資格を手に入れても、何か法律問題についてアドバイスができるとか、ネットワークなるものが作れるとか、そんなこと一切ありません
それにもかかわらず、こういったことをやれば、それは犯罪となります。

法律業務における民間資格の正しい利用法

ただ一方で、すでに弁護士や認定司法書士の資格を持っている人が、特定分野について高い見識があることを、顧客に示すために、そういう資格を取ることについてはもちろん問題がありません
そういう民間資格はなくても業務はできるわけであり、かつ、その資格は、あくまでも法律上許された業務について、特に高い能力があることをアピールするポイントに過ぎないからです。そういう使い方をすれば、非常に有益な話だと思っています。

つまり、こういう資格は、(法律上の資格が必要な分野については)弁護士資格など国家資格と結びついて初めて意味があるものであるといえるでしょう。

民間資格で法律業務をすれば犯罪

なお、実際に、こういう●●士などの民間資格に基づいて、法律業務を行った場合には犯罪が成立します。
そういう規定があるとは知らなかっただのという言い訳は通用しません。これは、例えば、泥棒が悪いことであるとは知りませんでした。といっても、罪を免れないことと一緒のことです。

また、以前も解説しましたが、非弁行為によって行われた合意などは、後から無効であると判断される可能性もあります。
ですから、場合によっては、依頼者から莫大な損害賠償請求をされるリスクというものもあります。

ですから、くれぐれも、こういうものに引っかからないように、注意が必要です。

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