弁護士 深澤諭史のブログ

弁護士 深澤諭史(第二東京弁護士会 所属)のブログです。 相談等の問い合わせは,氏名住所を明記の上 i@atlaw.jp もしくは 03-6435-9560 までお願いします(恐縮ですが返事はお約束できません。)。 Twitterのまとめや,友人知人の寄稿なども掲載する予定です。

2019年02月

非常によく聞かれるので、すこし語ります。
ただ、申し訳ないのですが、ここでは具体的な数字を出しません。というのも、相場はここ数年で結構動いた感がある、そしてここ1、2年で概ね傾向が出てきた、という感があるからです。
また、ひとことに相場といっても、他の事件分野以上に、和解と判決の相場に差がある、それだけではなくて、その差がどうなるか、別の因子というか要素が重要になるということもあります。

そういうことで、なかなかここでは申し上げられないですし、おそらくは、この種案件を扱う他の弁護士もそうだと思います。

もっとも、投稿内容と、周辺事情を説明すれば、相場というか予測をある程度立てることも可能です。ですから、ネットで相場を検索するよりは(そもそも、法律事件における「相場」は、それを人に聞かないとわからない人が数字だけ知っても、使うことはできません。)、早めに法律相談をして見通しを立てることが重要でしょう。

私は以前は労働者側、それも残業代請求事件ばかりやっていた頃もあり、いまでも、それなりにやっています。
最近ですと、使用者側のほうが比率が高かったりします。
そういう私ですが、世の中には労働者側弁護士ですごい先生がたくさんいらっしゃるので、私がコメントしていいのか、よくわかりませんが、よくある残業代に関する誤解を列挙してみたいと思います。

1.管理職だから残業代は不要

一番多いです。係長になると出ないとか。
管理職に残業代は不要なんて法律はありません。
おそらく、勘違いのもとは、管理監督者(労働基準法41条3号)の規定だと思います。
はっきりいうと、この定めの適用ができるケースは本当に稀です。少なくとも、私が労働者側で担当した事件で、これが認められたケースは一つもありません
正直、いちいち反論するのが面倒なレベルの主張です(一応しますが、トナーと紙の無駄遣いですね。)。
実際に、管理監督者として残業代の支払いが不要になるのは、出退勤自由、待遇や裁量が経営者と一体である、というレベルです。
とりあえず、年俸1000万円だからokとか、そういうレベルじゃありません。

2.実際に働いていない時間があるから、その分差し引く

これも多いです。
コーヒー飲んでいる時間、トイレ時間も控除すべき、とか、真顔でいう人もいますが、冗談としてもつまらないですし、本気で言っているなら、いろいろとタチが悪いです。
労働時間というのは、働いている時間ではありません。指揮命令監督下の時間、つまり、働く可能性のあった時間を労働時間といいます
月額1000円で見放題の動画配信サービスを契約したとして、30日720時間ではなくて、7時間しか見なかったから10円しか払わないとか、そういうのが通用しないのとおなじです。

3.年俸制なので残業代は払いません

とっくに絶滅したかと思いますが、未だにあります。
絶滅危惧種に指定したいところですが、保護する理由もないので、やめておきましょう。
残業代、労働時間の規制は、強行法規です。
つまり、契約よりも優先されます。反社会的勢力に嫌がらせの依頼をしても、その約束が法的に保護されないのと同じです。

4.固定残業代を払っているのでok

これも3と同じ理由です。固定残業代を払えば、他に払う必要はない、という法律はありません。
固定残業代を支払っていても、実際の残業代がそれを上回れば、その分の支払い義務が生じます
また、固定残業代は、しばしば無効になります。そうなると、全額が基本給に算入されて、残業代がとんでもない金額になることがあります。
固定残業代で固定できるのはリスクだけで、残業代は固定できません。誤解の固定は解きましょう。
ところで、これって、どこの誰がはじめたんでしょう?

5.俺はこいつに●●してあげたから、あるいは、こいつは●●したから残業代を払わなくていい

残業代は強行法規で、他に特別の法律が無い限り、これから逃れられません。
こういう言い訳は多いのですが、会社側の主張の信用性を減殺する効果しかないので、やめましょう。
とにかく、使用者が何か労働者に「おめぐみ」を下したからといって、法律上の義務は免れません
飲食店の常連客だからといってたまの食い逃げがokとかにはならないですよね?それと同じことです。

6.残業代請求対策のためにタイムカードを廃止した!法律に強いコンサルから聞いた!

流石に絶滅危惧種だと思いますが、未だにあります。
使用者には労働時間把握義務があります。
ですから、その義務に違反しますし、そうなると、過労死、残業代請求の場面で、使用者が反論できなくなり、逆に労働者側の立証が非常に強くなりますので、逆効果です。

最近、かなり多くのご相談を頂戴しております(返事をお待たせしている方は申し訳ありません。)ので、念のため、こちらでも案内いたします。
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なお、事案によりますが、個人のネットトラブルについては、初回について無料電話法律相談も実施しております(事案により無料相談が承れない場合は、相談前にお伝えしますので、後日請求書がいきなり届くとかはありませんので、ご安心ください。)。ついては、悪化する前にご相談いただければと思います。

おって、匿名相談は承っておりません。また、事案により承れない相談がありますので、全件について対応をお約束できないことはご了承ください。

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