弁護士 深澤諭史のブログ

弁護士 深澤諭史(第二東京弁護士会 所属)のブログです。 相談等の問い合わせは, i@atlaw.jp もしくは 03-6435-9560 までお願いします。 Twitterのまとめや,友人知人の寄稿なども掲載する予定です。

2019年02月



なんどもなんども強調していますが、ネットの体験談をあてにしてはいけません
それは、その人にとっては正しいかもしれませんが、あなたにとっても正しい可能性は、実際にはほとんどありません
少しでも法律実務かじっていると、ネットには「法律問題に関する創作実話(実話っぽく見せかけた創作)」が溢れていることに気がつきます。
あと、破産=すべて終わり、ではありません。そんな制度だったら誰も使いません。また、会社が破産しても事業を生き残らせることができる可能性もありえます。
甘い言葉を囁く〇〇コンサルに騙されないようにしてください
彼らは最後まで付き合う気はありません。付き合うことができないからです。だから、あなたの歓心を買うためなら、なんでも都合のいい言葉を並べ立てる、悪質な者も、中にはいます。最後まで付き合えないのなら、最後の責任を取らなくてもいいからです
一方、弁護士は、危機時期の者から相談を受けた場合には、かなり厳重な法的責任が課せられます。

なお、弁護士は何でもかんでも破産させる、という声も聞こえますが、中にはひょっとしたらそういう弁護士もいるかもしれませんが、基本的に考え難いことです。
そもそも、破産という手続きはかなり大変ですし、破産しないで解決できるのであれば、それに越したことはありません。お金の取り立てで、裁判せずに解決できるのに、あえて裁判を起こすことは通常考えられないことと、同じことです。

日弁連委員会ニュース(非弁等対策本部)で退職代行業者が取り上げられました。
これは、労働者の権利と深く関わるだけでなく、他の非弁問題と同じく、消費者被害につながりかねないので、大事な問題だと思います。
特に、元勤務先から賠償請求されるリスクもありますので、啓蒙をしていくべき問題だと思っています。

設題

Yらは、Aらに対して、ほぼ同様の方法、態様により不法行為(以下「本件不法行為」という。)を行った。
Yらは、不法行為の成立ないし損害の存在を争っている。
そこで、Aらは訴訟手続によりYらに損害賠償請求をすることとして、Aらを原告、Yらを被告とする訴訟(以下「本件訴訟」という。)を提起した。
本件訴訟は、Aらそれぞれが単独で提起するもの、共同するものなど、併合の仕方は一様ではない。しかし、本件不法行為の態様は、それぞれほぼ共通しており、本件訴訟の請求原因事実もまた、ほぼ同様である。
Xは、非弁護士であったが、本件訴訟の対応方法、と書面の雛形(当事者の名前を記入し、あるいは若干の追記をすれば本件訴訟の答弁書や準備書面等の主張書面として利用できる内容である。)を月額料金制で提供するサービス(以下「本件サービス」という。)を考案し、実施することとした。
Xは、本件サービスについて、本件訴訟について有益な情報、対応方法を提供するとインターネット上で宣伝をし、インターネット経由で誰でも契約ができるようにしたところ、Yらのうち、相当数が、本件サービスを利用した。

Xの行為は、弁護士法72条本文に違反するか。
なお、Xは、同条ただし書の適用を受けない(他士業等の資格を持っていない。)ものとする。
また、検討にあたっては、Xが、一般論を論じているだけで書籍の発売と同様である、あくまで情報提供をしているだけである、それに従う、参考にするかどうかはYらの任意に任せている、Xの名義ではなくてYらの名義で書面提出をさせており自らは代理していない、本件サービスはYらにとって有益な活動である、と主張して弁護士法72条本文には違反しないと反論している点についても触れるものとする。
加えて、本件サービスで提供される対応方法は、裁判実務とかけ離れており、また、書面の雛形の内容も、主張自体失当ないしYらにとって不利な事実の先行自白を多く含むなど、かえってYらにとって不利で、Aらにとって利益になる内容を含んでいた場合に結論に影響するかについても検討するものとする。

○弁護士法72条  弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

はじめに

なんらかの継続的契約を締結することで、助言等を受けることができる契約というのは、珍しくはありません。
弁護士の法律顧問契約はこの典型です。
また、非弁行為の関係で言えば、実際に、会員になると法律事務の提供を受けられるという仕組みについて、非弁行為の成立を認めた裁判例もあります。
いわゆる「指南」行為についても同様に裁判例があり、代理でない「指南」だから非弁行為にならない、という解釈は裁判例上も実務上も全く取られていません。
このような非弁行為は、インターネットの普及、法律知識の普及、決済システムの進化により、今後、増えていくことが予想されます。
今回は、以上を前提に、この設題について次の通りの検討を通じて解説しようと思います(なお、学生あるいは専門家向けの記事です。)。

設題の検討

1.非弁護士性、業務性、報酬目的性、周旋と取り扱いの別について
弁護士法72条本文の要件のうち、非弁護士性についてはXが弁護士でないことから明らかであり、報酬目的性については月額料金を収受していることから、業務性については広告を行いインターネットで誰でも契約ができるようにしていることから、これらの要件は優に満たす。
また、本件サービスはX自身が提供するものであるから、「周旋」ではなく「取り扱い」にあたる。

2.法律事件該当性について
1の他、本件では、本件サービスが、「訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関」するものといえる(法律事件該当性)かと、「鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務」といえる(法律事務該当性)かが問題になる。
まず、法律事件該当性について検討するに、本件においては、本件訴訟つまりAらのYらに対する損害賠償請求訴訟が係属しており、これに関して情報や書面等を提供するものである。
そうすると、本件サービスは、「訴訟事件…に関」するものであるといえる。
なお、この点について、Xは「一般論を論じているだけで書籍の発売と同様である」と主張する。
たしかに、特定の事件を離れて情報や書面を提供する行為は、書籍の販売と同様である。そして、弁護士法72条本文にいう「訴訟事件」「法律事件」は、同条が一般的な法律に関する解説、説明、書籍の販売までをも弁護士の独占業務にする趣旨とまでは解されないし、かような解釈は広きに失する。そうすると、「訴訟事件」「法律事件」とは特定の事件を指すところ、特定の事件を前提としない行為に弁護士法72条本文の適用はないというべきである。
しかしながら、本件において、Xは「本件訴訟について有益な情報、対応方法を提供する」と標榜し、提供する書面は、「当事者の名前を記入し、あるいは若干の追記をすれば本件訴訟の答弁書や準備書面等の主張書面として利用できる内容」である。そうすると、本件サービスは、一般的な民事訴訟の対応心得などを解説した書籍の販売とは同視できず、本件訴訟という特定の訴訟事件に関するものであるといえる。
また、Xは、どう利用するかはYの任意である、代理をしていないという反論もしている。しかしながら、訴訟事件に「関する」というのが要件であるところ、「関する」ものであればよく、直接的に関与することや、特定の関与形態まで要求するとは文理上解釈できず、以上の結論を左右しない。

3.法律事務該当性について
次に、法律事務該当性について検討するに、Xは自ら主張する通り、自らの名前で書面を作成して提出しているものではないので、代理に該当せず、また、仲裁にも該当する事情はない。
そこで、鑑定に該当するかどうかについて検討するに、鑑定とは、法律上の専門的知識に基づいて法律的見解を述べることをいう。
本件サービスは、訴訟への対応方法を解説するものである。訴訟への対応には、民事訴訟法等についての専門的知識に基づくことが必要であり、かつ、いかなる対応が適切かを述べることは、法律的見解を述べるといえるので、該当する。
また、「法律事務」は、新しく法律関係を変動させたり、あるいは明確化する行為をいうが、書面を提供することで、少なくとも訴訟法上の法律関係を変動させるし、また、訴訟行為が書面の形で明確化されるので、法律関係を明確化するといえる。
したがって、本件サービスは、鑑定を行い、あるいは法律事務を取扱うものであるといえる。
この点について、Xは、「情報提供をしているだけである」と反論するが、鑑定は法律的見解を述べることであり、鑑定もまた一種の情報提供である以上、本件サービスが情報提供であることは、鑑定の該当性を否定する理由にはならない。
また、「従う、参考にするかどうかはYらの任意に任せている」とあるが、そもそも法律事務の提供先が、提供元の判断に従うことは義務付けられてもいないし、弁護士法72条本文の文理上も、そのような要件を見出すことはできない。
さらに、「Xの名義ではなくてYらの名義で書面提出をさせており自らは代理していない」としているが、そもそも、「代理」とは弁護士法72条本文の一類型でしかなく、代理でなければ、同条違反を否定するとの定めはなく、かえって、「鑑定」「法律事務」など、代理を前提としない行為を含んでいる以上は、代理ではないことは、同条違反を否定する理由にもならない。

4.行為の有益性と非弁行為について
次に、Xは、「本件サービスはYらにとって有益な活動である」と主張するところ、これは、違法性阻却事由(正当化事由)の主張であると思われる。
しかしながら、特定の資格を有しないと特定の業務を行えないという制度(資格制度)が採用されている業務分野は、いずれも、依頼者や社会にとっては有益であるが、これを放任することは弊害が大きいものである(例えば、自動車運転や医業など)から、一定の制限が定められているものである。仮に、資格制度のある業務分野について、有益であるから無資格での業務が許されると解釈すると、その有益性故にほとんど全ての資格制度において無資格での業務を認めることになり、資格制度に関する法令の定めが空文化することとなり、妥当な解釈ではない。

5.結論
以上検討した通り、Xの行う本件サービスは、弁護士法72条本文違反する非弁行為である。

6.仮に本件サービスがYらにとって何ら無益ないし有害であった場合
仮に「本件サービスで提供される対応方法は、裁判実務とかけ離れており、また、書面の雛形の内容も、主張自体失当ないしYらにとって不利な事実の先行自白を多く含むなど、かえってYらにとって不利で、Aらにとって利益になる内容を含んでいた場合」について検討する。
このような場合は、本件サービスは、法律上の専門的知識に基づくものではなく、法律関係を変動したり明確化することもできないのだから、鑑定にも法律事務にも該当しないとも考えられるので問題となる。
そこで検討するに、弁護士法72条本文の要件として、その業務が法的に妥当であるとか正当であることは要求されていない。
かえってこれを要件とすると、無資格者による不適切な法律事務取扱等を禁圧するという同条の目的に反し、悪質な非弁行為ほど取り締まることができなくなるという不合理な結果となる(仮に同様の解釈を自動車運転や医業に適用すると、無謀運転や医学的に妥当性のない治療について、すくなくとも無資格であることについて罪に問えないことになり、妥当ではない。)。
そこで、実際に専門的水準に達しない法律事務の提供であっても、専門的な事項に及んでいれば、法律事務の取り扱いと解するべきである。
したがって、本件サービスは、たとえ、以上のような事情があっても弁護士法72条本文に違反し、非弁行為にあたる。

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ひたすら地面師の手口と裁判例を紹介しつつ、司法書士の責任はいわゆる専門家責任の中でも特殊(そして重い。)という点にも言及しました。
その上で、裁判例では、傾向として、どういうミスがあれば責任を認めやすいのか、逆に、どういうところまでは責任を認定しないのか、そういうあたりについても解説をしました。
あの有名な免許証偽造事件も紹介しましたが、ほか、面白い例として司法書士は責任なし、登記官だけの責任を認めた事例、証明書の偽造透かしを見破るべきだったと判断された事例なども紹介しています。
会場は満員で、この問題に関する関心の高さがうかがわれました。
なお、下は、講演後の懇親会の様子です(・∀・)

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最近流行の非弁行為に関するデマ

最近、非弁行為の該当性について、平和的にやっている、だから事件ではないので、非弁行為ではない、という言説を耳にします。

結論から言うと、間違っています。

「『事件』ではない」は理由にならない

まず、事件ではないという点ですが、これについて、紛争の可能性がある案件の取り扱いは非弁行為になるというのが、最高裁の判例です。
また、その判例は、紛争性のない案件に弁護士法72条(非弁行為)の適用がないということまでは、断言していません。そして、最近の地裁高裁の裁判例は、概ね、法律関係を変動させる、形成する案件であれば、非弁行為になると判断しています。

もっとも、この議論は、実際にはあまり実益はありません。外部の「自称専門家」に有償で依頼する案件である以上、ほとんどの場合は、少なくとも潜在的には紛争性があるからです。

「平和的」「適正」は非弁行為の正当化にならない

次に、平和的にやっている、要するに、暴行脅迫していない、適切に適正な請求をしているだけだから、非弁行為ではない、というような意見もあります。

ですが、これも間違いです。
たしかに、非弁行為は、無資格者による他人の法律事務取扱いを認めると、こういう脅迫等の問題(他にもいろいろありますが)が生じうるから禁止されています。
ですが、それは、非弁行為が禁じられる理由の一つであって、非弁行為になる要件ではありません

たとえば、無免許運転も酔っ払い運転も禁じられていますが、その趣旨は、危険な運転を防止するというものです。
ですが、安全運転であれば無免許でもいい、あるいは酔っ払っていてもいい、というわけでありません。それと同じことがいえます。

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