1.違法ダウンロードのまとめ
違法ダウンロードについて、簡単にまとめると、概ね、以下のとおりです。

すなわち、
① 原則として、著作権者の許可なしにコピー(複製)をする事はできません。
② コピーにはダウンロードも含まれます。
③ しかし、私的使用のためのコピーは例外として許されています。


したがって、
④ 権利者に無断で公開された著作物であっても、あくまで私的使用のためであれば、ダウンロードは例外として適法になります。

ただし、
⑤ 違法ダウンロードというのは、この例外の例外、つまり原則である違法に「戻す」制度です。一定の場合(後述)にダウンロードは違法になります。
⑥ ⑤の帰結として、④の場合でも、違法になることがあります。


2.複製権について
著作権者は、著作物について複製する権利を独占しています。ですから、その許可の無いかぎり、複製物を作成することは出来ません。これを行った場合、著作権の侵害ということになります。

なお、よく勘違いがあるのですが、禁止されていないなら大丈夫、ということではありません。許可されていないとダメ、ということです。
勝手に他人の持ち物を持ち出すと原則として窃盗罪になる、「私の持ち物を勝手に持っていかないで」と言われていなくて犯罪である、ということと同じ理屈です。

3.複製権の制限について
著作者の以上の権利を複製権といいますが、この権利は、一定の制限があります。大雑把にいうと、私的使用のためであればよい、たとえば、お気に入りの楽曲だけをあつめて「マイベスト」を作るとか、そういう行為です(私的使用のためであっても、違法になることがあります。違法ダウンロード以外にもあり得ます。)。

4.違法な配信元からのダウンロードであっても適法な場合がある理由
いわゆるダウンロードは、複製ではありますが、私的使用のための複製ですから、著作権侵害にならないことが原則です。これが、違法に配信されているものでも、それは変わりがない筈です(現在、一部の行為が違法、犯罪になっていますが、これは、いわゆる違法ダウンロードの問題です。)。

違法に配信されている映画や楽曲をダウンロードする行為も、これは自分で見るためという私的な目的のための私的使用ですから、かつては複製権の侵害になりませんでした。

5.4にかかわらず、違法な配信元からのダウンロードが違法になる理由
しかしながら、違法配信を視聴するユーザーが増加し、権利者の被害が増大したため、それを防ぐ目的、一定の範囲で、違法配信をダウンロードする行為が、違法化され、また、犯罪化されました。

6.どのようなダウンロードが違法になるのか
その要件は、次の通りです。

① ダウンロード元が違法であること(著作権者の許可が無い、著作権侵害であることです。)。
② 配信であること(一度アップロードすると、あとは自動的にダウンロードを受け付ける仕組みになっていること。動画投稿サイトやウェブへのアップロードは、基本的に全部該当します。)。
③ 録音または録画であること(対象は音楽や動画だけということになります。)。
④ ①から③を知っていること。


ですから、漫画の違法配信サイトから、漫画をダウンロードする行為は、③を満たさないので、違法ダウンロードにはならない、ということになります。

7.どのようなダウンロードが犯罪になるのか
全ての違法行為は、法律上犯罪になるわけではありません。

違法行為の中でも、特に刑罰で禁圧すべきものが犯罪とされています。例えば、不倫は違法行為ですが、犯罪ではありません。一方、殺人は違法行為ですし、犯罪です。不倫は違法行為ですが、私的な問題という側面が強く、犯罪として禁圧する必要がないこと、一方で殺人はその必要があるから、です。

違法ダウンロードでも同じく、一部の違法ダウンロードだけが犯罪となります。その要件は、次の通りです。

① 違法ダウンロードであること。
② 著作物が有償で提供されているものであること。


つまり、違法ダウンロードのうち、問題の著作物が有償で提供されていることが必要になる、ということです。
ですから、無料配信された音楽をダウンロードする行為は、違法ダウンロードですが、犯罪ではありません。一方で、有料で配信されている映画をダウンロードすると、これは違法ダウンロードであり、犯罪になる、ということになります。

さて、この制度については、色々と批判多いです。今後、拡大が予定されていますが、これも同じく批判が多いです。
そこで、近く、この制度の問題について、論じてみたいと思います。