本人訴訟とは、弁護士をつけない訴訟のことをいいます。要するに、代理人なしで自分でする訴訟です。

本人訴訟におけるリスクは非常に多岐に渡りますが、特に強調しておきたいのは、答弁書(あるいは、その後に続く準備書面)のリスクです。

裁判の事実認定は証拠に基づきます。その証拠には、客観証拠、つまり物的証拠だけではなくて、人の言葉、供述証拠も含まれます。紛争当事者すなわち原告や被告の供述も含まれます。

もちろん、本人の供述であれば、自分に都合のいいことを言うので、必ずしも信用されません。

ですが、例外があります。それは、自分にとって不利な供述です。
有利な嘘はつくことがあっても不利な嘘はつくことがないという経験則つまりは常識があります。
ですから、当事者が、自分に不利なことをいった場合は、基本的にはそれが信用されます。 

そういうわけで、裁判においては、自分に不利な主張をしないことが重要です。これは、自分に有利な主張をすることと同じか、あるいは、それ以上に重要なことです。 

ところが、相手方が本人訴訟の案件、あるいは、現に本人訴訟をしている方々の相談を受けると、本人訴訟においては、少なからず、というより非常に多くの方々が、わざわざ自分に不利な主張をする、不利な内容の答弁書をはじめとする書面を出しているケースが散見されます本人訴訟において、しばしば、その「本人」は、相手方にとっての最強の弁護士です(!)

本人訴訟を推奨するつもりはありませんが、もし、するのであれば、少なくとも弁護士の相談を受けるべきでしょう
自分がいつもの気分で書いた書面を、裁判所に提出すると、取り返しのつかないことにもなりかねません。