まとめ
① 弁護士法との抵触のリスク(非弁行為のリスク)がある業者の中には,(顧問)弁護士と相談したから大丈夫だと主張する業者がある。
②  ①のようなことは,どの業種でもありうることで,それ自体は問題ではない。
③  しかし,①について,弁護士の検証が不十分な疑いのあるケースもある。
④  ①で大丈夫だというのであれば,最低限,弁護士の氏名,検証の要点,根拠の概略程度は示すべきである。

非弁行為該当性の疑われる業者が,しばしば,「(顧問)弁護士と相談をした。適正にやっている。非弁行為にならないように配慮している。」などと標榜することがあります

事業をやっていくにあたって,法令と抵触しないように注意を払うことは当然のことです。これは,弁護士法の問題に限りません。また,そのために弁護士に相談すること,相談した結果を取引先等の関係者に案内をして安心をしてもらう,いずれも大事なことですし,あるいは普通にあることです。

ただ,非弁行為であることが疑われるような業者の場合,すこし,この表現に疑問を抱かざるを得ないケースもあります。
まず,そもそもウェブサイト上の表示をそのまま信じると,非弁行為をやっているとの疑いが濃厚であるというケースがあります。そうすると,いくら弁護士に相談をしたからといって,果たして非弁行為にならないようにしているのか,大いに疑問です。非弁規制は表示の規制もありますから,果たして,その(顧問)弁護士が指導したのか,指導したとして,その内容が適切か,疑問を抱かざるを得ないこともあります。

私たち弁護士は,もちろん,自分の相談者,依頼者,顧問先が違法ないし犯罪行為を行ったというだけでは,直ちに責任を問われません。
ですが,非弁行為に限らず違法行為,犯罪行為を助長することは禁じられています。更に,これは非弁行為特有の規制ですが,非弁行為を行い,あるいはその疑いのある者に,自分の名義を利用させることは,厳重に禁じられています

ですから,他の業法に関する助言に比して,弁護士法に関する助言については,以上のような非弁提携固有の規制があるので,格別な注意が要求されます。
それにも関わらず,広告の表示上,非弁行為が疑われるのに安易に「太鼓判」を押すことは,問題となる場合もあると思います。

また,利用者の立場からしても,「(顧問)弁護士と相談したのか。なら安心だ。」と安心してよいものか,疑問が残ります。
利用者にとって非弁業者や非弁提携弁護士に依頼すると何が問題なのか。」で解説した通り,非弁行為を行う業者に依頼をすると,思わぬ,そして重大で取り返しの付かない損害を被ることがあります。

そうすると,せめて「(顧問)弁護士に相談してやっています。だから大丈夫です。」という案内については,それだけでは不十分ではないか,と思います。
弁護士の氏名はもちろん表示すべきでしょう。本当に大丈夫なら,その弁護士は名前を出せるはずです。名前も出さないのは,違法の疑いがあると実は思っているとか,そもそも,相談した弁護士なんか実在しないのではないか,とも疑われるでしょう。

また,「大丈夫」「適切」ということについても,いかなる理由でそうであるのか,少なくとも,検討の要点は述べるべきでしょう。弁護士法違反の行為は,依頼者に多大なる損害が生じます。その重要性を理解できているのであれば,安心させる,信頼確保の観点からもこれは必要です。