まとめ
①  本人訴訟支援とは,弁護士等代理人をつけない本人訴訟において,書面作成や相談等のサポートをすることをいう。
②  本人訴訟支援は資格がないとできない
③  本人訴訟支援は,弁護士と司法書士が行える。
④  司法書士が行える本人訴訟支援は,言い分の整理や形式的な手続の助言等に限られる。それを超えるときは,自分の裁判上の行為が無効と判断され,却下判決や反論無しということで敗訴するリスクがある。
⑤  弁護士や認定司法書士(ただし,簡裁における手続に限る。)による本人訴訟支援は,④の制限がない

解説
本人訴訟支援」というサービスがあります。
本人訴訟とは,訴訟を,弁護士や認定司法書士(司法書士の中でも特別な資格を得た司法書士で140万円以内の事件について,簡易裁判所で訴訟代理したり,あるいは裁判外で交渉代理ができます。)に依頼せずに行うことをいいます
「本人訴訟支援」とは,本人訴訟について,主に書類作成やそれに関する相談を行うサービスをいいます。

さて,本人訴訟支援は,訴訟という法律事件について,意見を述べるという鑑定や,書類を作成して訴訟法上の法律効果を発生変更したり,保全明確化するので法律事務にあたります。ですから,弁護士法72条本文の適用があります
したがって,(業務として報酬目的での)本人訴訟支援は,無資格で行うことはできません
弁護士資格以外であれば,司法書士の資格があれば,本人訴訟支援をすることができます(ただし,以下に述べる範囲の制限があります。)。
司法書士は,裁判所に提出する書類の作成業務とそれに関する相談を行うことができますので,本人訴訟支援を行うことができます。
なお,たまに勘違いがありますが,司法書士の裁判書類作成業務は,審級や訴額の制限がありません。ですから,簡易裁判所だけではなく,地方裁判所や高等裁判所,最高裁判所への提出書類の作成業務も可能です。

それでは,司法書士の本人訴訟支援の範囲はどのようなものでしょうか?法廷に立たない,代理をしない,形式的に本人の名義での書類であれば,いかなる相談,支援もできるのでしょうか
いいえ,そうではありません。これについては,「司法書士・行政書士の書類作成業務の範囲について」で解説したとおりです。つまり,誤解を招かない程度に言い分を整理して書類にする,直す行為が可能であり,かつ,それに限られ,専門的法律知識を用いて何か内容を提案をしたり,あるいは判断を提供したりする行為は含まれない,ということになります。

それを超えた場合,どのような扱いになるでしょうか。その場合は非弁行為という扱いになりますので,裁判上の効果は無効と扱われる可能性があります。
裁判所は,訴え提起が無効であるとして却下判決をすることができますし,そのような先例もあります。また,被告側であれば,反論が無効ということで,反論無しとみなされて,敗訴することもあるでしょう。
また,相手方はそれについて指摘するでしょうし,紛争と関係のないところでリスクを負う,弱みを抱えることになります。
ですから,司法書士による本人訴訟支援を利用するのは,自分の言い分が決まっているので,それを整理して欲しいだけである,専門的な判断は要らない,大丈夫であるという自信がある場合に限るべきでしょう。要するに,手続や形式面でだけの助言が欲しい,あとは書面を整理して欲しいという場合にだけ利用するべきということになります

それを超えて,自分の希望を実現するよりよい方法,すべき主張や証拠の助言や専門的法的な判断,助言が欲しい場合は,弁護士か認定司法書士(ただし訴額が決まっており,かつ,それが140万円以内の場合)に相談をするべきであるということになります。

その際,そもそも本人訴訟支援を利用することの適否についても,助言が得られると思います。