弁護士によりますが,ほとんどの弁護士にとって紛争を取り扱う,一方の代理人になって交渉や裁判をすることは,日常業務の一つです。

さて,紛争について相談を受けるとき,特に既に交渉を始めているとか,そこまで行かなくても相手方から最初の通知・請求を受け取った時点であると,精神的負担を訴える相談者は少なくありません

それは至極もっともなことです。そもそも紛争というのは非日常のことです。特に法的なトピックということになると,人生でそうそう何度もあることではありません。更に,紛争・トラブルといったことについて,この社会は,強い忌避感があります。

ですから,紛争当事者が紛争について,それ自体に大きなストレスを抱えてしまうことは,至極自然なことです。

また,紛争というのは,双方に見解の相違があるから生じるものです。相手方の意見,言い分を聞く必要があります。普段,私たちは日常生活で自分の考え,意見を真っ向から否定されることには慣れていません。仕事の現場でそういうことはあるかもしれませんが,通常は,配慮された表現がされます。ですが,交渉の場では,そんな配慮はなく,真っ向から否定されます。

そうすると,一方当事者としては,自分が正しいのに,間違った相手の言い分で否定をされた,という強いストレスを感じることになります。勢い,それが実際にそうであるかどうかは別にしても,内容以前に,無礼であるとか高圧的であるとか,そういう感想まで抱くという事になります。

悪い奴の味方をしている悪い弁護士が,自分に酷い態度を取っているに違いない,などと勘違いして,不合理な逆恨みにつながる事もよくあることです。

これは非常に大きなストレスです。そして,ストレスを感じるだけではなくて,冷静で合理的な判断への大きな支障となります。勢い,特に自分が本人で交渉し,相手方に代理人弁護士が付いているケースでは顕著ですが,そのストレスから免れようとして,感情的な対応,行動をとってしまい,結果的に不利な合意をしてしまう,ということは珍しくありません

また,そうなってしまった場合,間違っている,無礼な相手に自分は譲歩してしまった,得をさせてしまって,自分は損をしてしまった,という事実が残ります

これは事件後も大きなストレスになります。そういう悔しさ・ストレスを忘れることができればいいのですが,そうでない場合は,「自分の思う通り・感情通りにやったのだから,いいのだ」などと,ある意味,自分で自分に言い訳をしながら過ごすということになります。

よく,相手方に代理人弁護士が付いているのに自分はつけないと不利になるといいます。それはそれでその通りなのですが,その原因は交渉技術とか,見通しへの判断の適切さとかだけではありません

弁護士に代理をさせることで,その弁護士を盾にすることができる,ストレス原因から遠ざかれること,それにより,より合理的な判断が可能になるということも,弁護士に代理をさせる大きなメリットです。
逆に紛争を自分で取り扱う場合,更に相手方にだけ弁護士がついている場合,ストレスを抱えるだけではなくて,そのせいで不利な結果になる,それを事後に引きずるというのは,リスクであるといえます。

弁護士を付けるかどうかは,以上の点も考慮して決めるべきでしょう。