司法書士も行政書士も,その業務として一定の種類の法的な書類の作成が行えます

司法書士法も行政書士法もこの点においては,弁護士法72条の特別法ですから,その業務範囲で法律事務の取り扱いが可能になります(なお,これらの点については,諸説あり,かつ,行政書士について反対の立場をとる裁判例もあります。)。

では,ここでいう書類作成業務とは,どのような範囲なのでしょうか。最終的に書類作成という行為に還元できれば,特に制限はないということになれば,実質的に,弁護士が行う訴訟代理にかなり近いこともできるように思えます。

この書類作成の範囲については,次のような裁判例があります。
かなり長くなりますが,引用します。強調はこちらで付しました。

司法書士の業務は沿革的に見れば定型的書類の作成にあつたこと、以上の相違点は弁護士法と司法書士法の規定のちがい特に両者の資格要件の差に基くこと、並びに弁護士法七二条の制定趣旨が前述のとおりであること等から考察すれば、制度として司法書士に対し弁護士のような専門的法律知識を期待しているのではなく、国民一般として持つべき法律知識が要求されていると解され、従つて上記の司法書士が行う法律的判断作用は、嘱託人の嘱託の趣旨内容を正確に法律的に表現し司法(訴訟)の運営に支障を来たさないという限度で、換言すれば法律常識的な知識に基く整序的な事項に限つて行われるべきもので、それ以上専門的な鑑定に属すべき事務に及んだり、代理その他の方法で他人間の法律関係に立ち入る如きは司法書士の業務範囲を越えたものといわなければならない(昭和54年6月11日高松高等裁判所判決 判例タイムズ388号57頁)。

まとめると,誤解を招かない程度に言い分を整理して書類にする直す行為が可能であり,かつ,それに限られ,専門的法律知識を用いてなにか,内容を提案をしたり,あるいは判断を提供したりする行為は含まれない,ということになります。

これは,司法書士の裁判関係書類等の作成について判断されたものですが,行政書士についても,別に解する理由がありませんので,同様に妥当するということになると思います。

したがって,司法書士に裁判関係書類や,行政書士に内容証明郵便等の書類作成を依頼する場合は,次のような場合に限られることになります。
すなわち,自分で言い分が全て決まっている,その言い分に過不足はなく,有利な事情は網羅し,不利な事情は含まれない,前提となる法的判断は正しくできている,しかし,整理をして誤解を招かないよう,あるいは書式を正しくしてもらう,提出先等の形式的手続きについては聞きたい,確認したい場合です。

そうでない場合は,書類作成であっても,弁護士や認定司法書士(紛争の目的物の価額が算定可能かつ140万円以内の場合)に相談を依頼するべきということになります。
なお,業務範囲を超えた書類作成が原因で,行為が事後的に無効と判断されたケースもありますので,その点からも,注意が必要です。