ラーメン発見伝(作:久部緑郎 先生,画:河合単 先生)

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ラーメン発見伝1巻(小学館)より

ラーメンをテーマにしたグルメ漫画です。

基本的に,一般的なこの手の漫画のお作法通り,

①食(この場合はラーメン)について卓越しているが他はイマイチな主人公がいる。
②主人公の周囲(この場合は勤務先)が,食を巡ってトラブルに巻き込まれるが原因が分からない。
③主人公が②の原因を調べる。なかなか分からないが,ふとしたきっかけで気が付く。
④主人公が見事にトラブルを解決する。

という流れです。時折,「なんでこんなことで怒るの?この人は?」って思う場面もあるのもお約束ですね。

また,後半は,味比べ勝負大会が行われる,というのも,この手の漫画の作法に沿うものです。

この漫画が他のグルメ漫画と違うのは,単に食べ物の美味しいまずいだけではなくて,ラーメン店の経営問題など,「ラーメンを巡る諸問題」「ラーメンビジネス」全般を取り扱っているところにあります。

ラーメンは美味しければいいのか,安ければいいのか,うまいラーメンとは何か,うまいラーメン店とは何か,等々,かなり根源的なテーマにも切り込んでいます。

また,「イキガミ」のように,単に伏線を回収するだけではなくて,物語のテーマ,材料が,クライマックスに向けて収斂していくという構成になっていることも特徴的です。
伏線すら回収が上手くできない漫画も珍しくない中,テーマや材料がクライマックスに向けて収斂していく描写は非常に爽快です。

全26巻と,かなりの長編ではありますが,ラーメン好きはもちろん,外食産業に興味ある方,さらに自営業者にはお勧めのシリーズです。

なお,続編スピンオフとして「ラーメン才遊記」もあります。
こちらは,本作の主人公のライバルとその会社に入社した新人の女性を主人公に据えたものであり,フードコンサルティング等を通じて,ラーメンとは何か,繁盛する店とはどういうものか,さらにテーマを広げています。

ところで,話はそれますが,最近Twitterで「#後世に残したい漫画の名言」というハッシュタグで,この漫画のシーンが,いくつか取り上げられていました。

私も大好きなセリフなのですが,実は,改ざんされているものがあります。本当は違うセリフでした。
改ざんした部分はもちろん,その理由もある程度察しが付くのですが,この漫画についてそういうことが起きるのは,なかなか興味深いというか,何かしら皮肉を感じるところです。