個人のインターネット利用のリスク問題,誹謗中傷をしてしまうとか,あるいはされてしまう,情報漏洩,悪徳商法,出会い系サイトトラブルなどについては,いろいろと講演をしたり,テレビ等で解説する機会があります。

また,数年前の書籍ですが,その「つぶやき」は犯罪です―知らないとマズいネットの法律知識―というものを,共著で出したこともあります。一般向け書籍なのに,法律文書の書式を掲載するなど,ちょっと変わったものに仕上がっています。

さて,最近のトレンドは,「特定」の問題です。先日の「サタデープラス(平成30年6月9日放送)」でも解説しましたが,写真をネットにアップすると,意図しない映り込みにより,たとえば電柱の表示から住所がバレてしまう,集合住宅だと階数がわかってしまう,などです。

最近,特に話題になっているのは,「自分の顔の映り込み」です。これはどういうものかというと,インターネットで普段匿名で活動している人が,写真をアップしてみたところ,予期せぬ形で,撮影者,つまり自分の顔が映り込んでしまう,要するに「顔バレ」してしまう,というものです。

鏡はいうに及ばず,ガラス,テレビやパソコン(特にパソコンの液晶は反射しやすいものが多いです。),プラスチック,変わったものでは,美味しそうな生卵やお吸い物(お腹減ってきました。),そこら中に「落とし穴」があります

撮影している方は,被写体に注意が向いているので気が付きにくい,でも,見ている方はそうとは限らない,だからこそ,意外に見落としがちというわけです。

こういった場合,大急ぎで削除しても,既に拡散されてしまっているということが少なくありません。

この場合の法的な問題ですが,拡散・転載をしている方は,「写っちゃった人」に対する肖像権やプライバシー侵害が認められる可能性が高いです。

これについては,「少なくとも,最初は自分の意思で全世界に公開した画像なのだから」というような反論があるかも知れません。
ですが,そもそも「写っちゃった人」は,そのような形で公開する意思はなかったはずです(この点については,黙っていないでちゃんと明確に述べておいた方がよい場合もあるでしょう。)。そして,プライバシーは自己の情報をコントロールする権利であり,肖像権についても同様のことがいえます。

ですから,原因が自分にあったとはいえ,その意思に反する形で自己の容貌を扱われるいわれはない,ということが原則になります

実際に,過去に類似の事例つまり一定の範囲での公開を許可することが,他者が勝手に更に公開することについて許可することを意味しない,という趣旨の裁判例もあります。

もちろん,以上は原則です。場合によっては,プライバシーや肖像権が制限される場合もあり得ます。
また,この種事件については,実務上,事件処理上の大事な点が他に1つあります。投稿された側,投稿した側をよく弁護することがある関係で,あえて解説には含めておりませんが,その点とは一体何か,その点をどうするべきかは,よく弁護士とも相談した方がいいでしょう