接見室から逃亡した事件が話題になっています。いつもの話ですが,ネット上では,勘違いから弁護人を非難する言説があるようです。そこで,誤解の解消のため,簡単に解説をしたいと思います。

接見室の構造,というより接見の仕組みですが,弁護人と被拘束者が会議室で会話をする,というような形式にはなっていません。

接見室においては,面会者つまり弁護人のスペースと,被拘束者のスペースは物理的に区切られています。その間には,透明な強固な仕切りがあり,声が通るように穴は空けてありますが,二重構造になり,物の授受は不可能になっています。保安上,当然のことです。

建物全体の構造としても,接見室の被拘束者のスペースを含む拘置スペースと,それ以外は明確に分離されています。私の知る限り,両方のスペースを繋ぐ扉は一つしか無く,非常に頑丈で厳重に封鎖されています。これも保安上,当然のことで,容易に想像ができることでしょう。

ですから,弁護人としては,被拘束者が接見を利用して脱走することを想定することはほぼ不可能ですし,これに協力することも合理的に考えてあり得ません。両者間の仕切りが破壊された場合,真っ先に危険に晒されるのは誰でしょうか?それは,他ならぬ弁護人だからです。

さらに,本件では「声かけ」をしなかったことが問題になっています。
ですが,ここで説明した構造を思い出してみてください。拘置スペースと,それ以外は明確に分離されています。ですから,弁護士から拘置スペース側の職員に「声かけ」をすることは難しいのです。基本的に,被拘束者がドアを叩くなどして知らせます(押しボタンがある施設もあります。)。

では,拘置スペース側でなくて,面会側を出た所にいる職員に声かけをしないのか,という点ですが,これも難しい場合があります。
拘置スペースには,被拘束者がいますので,基本的に24時間,必要な人員が確保されて常駐されています。
しかし,面会側のスペースは,必ずしもそうではありません。ですから場合によっては,声を掛ける職員そのものが存在しないこともあるのです。

このあたり,実際に弁護人(となろうとする者)としてやってみないと,イメージしにくいかと思います。ですが,あまりに誤解に基づいて弁護人を非難する向き(これは弁護士の仕事全般にいえますが)があるので,簡単に解説した次第です。