弁護士 深澤諭史のブログ

弁護士 深澤諭史(第二東京弁護士会 所属)のブログです。 相談等の問い合わせは,氏名住所を明記の上 i@atlaw.jp もしくは 03-6435-9560 までお願いします。 Twitterのまとめや,友人知人の寄稿なども掲載する予定です。

個人のインターネット利用のリスク問題,誹謗中傷をしてしまうとか,あるいはされてしまう,情報漏洩,悪徳商法,出会い系サイトトラブルなどについては,いろいろと講演をしたり,テレビ等で解説する機会があります。

また,数年前の書籍ですが,その「つぶやき」は犯罪です―知らないとマズいネットの法律知識―というものを,共著で出したこともあります。一般向け書籍なのに,法律文書の書式を掲載するなど,ちょっと変わったものに仕上がっています。

さて,最近のトレンドは,「特定」の問題です。先日の「サタデープラス(平成30年6月9日放送)」でも解説しましたが,写真をネットにアップすると,意図しない映り込みにより,たとえば電柱の表示から住所がバレてしまう,集合住宅だと階数がわかってしまう,などです。

最近,特に話題になっているのは,「自分の顔の映り込み」です。これはどういうものかというと,インターネットで普段匿名で活動している人が,写真をアップしてみたところ,予期せぬ形で,撮影者,つまり自分の顔が映り込んでしまう,要するに「顔バレ」してしまう,というものです。

鏡はいうに及ばず,ガラス,テレビやパソコン(特にパソコンの液晶は反射しやすいものが多いです。),プラスチック,変わったものでは,美味しそうな生卵やお吸い物(お腹減ってきました。),そこら中に「落とし穴」があります

撮影している方は,被写体に注意が向いているので気が付きにくい,でも,見ている方はそうとは限らない,だからこそ,意外に見落としがちというわけです。

こういった場合,大急ぎで削除しても,既に拡散されてしまっているということが少なくありません。

この場合の法的な問題ですが,拡散・転載をしている方は,「写っちゃった人」に対する肖像権やプライバシー侵害が認められる可能性が高いです。

これについては,「少なくとも,最初は自分の意思で全世界に公開した画像なのだから」というような反論があるかも知れません。
ですが,そもそも「写っちゃった人」は,そのような形で公開する意思はなかったはずです(この点については,黙っていないでちゃんと明確に述べておいた方がよい場合もあるでしょう。)。そして,プライバシーは自己の情報をコントロールする権利であり,肖像権についても同様のことがいえます。

ですから,原因が自分にあったとはいえ,その意思に反する形で自己の容貌を扱われるいわれはない,ということが原則になります

実際に,過去に類似の事例つまり一定の範囲での公開を許可することが,他者が勝手に更に公開することについて許可することを意味しない,という趣旨の裁判例もあります。

もちろん,以上は原則です。場合によっては,プライバシーや肖像権が制限される場合もあり得ます。
また,この種事件については,実務上,事件処理上の大事な点が他に1つあります。投稿された側,投稿した側をよく弁護することがある関係で,あえて解説には含めておりませんが,その点とは一体何か,その点をどうするべきかは,よく弁護士とも相談した方がいいでしょう

インターネット,特にSNS,その中でもTwitterをやっていると,しばしば,「こいつ(個人だったり会社だったり)は,こんな悪いことをした!拡散希望!」みたいな投稿に出くわします。

ケシカラン人はケシカランですし,そういう気持ちはわかりますが,こういった行為は,かなりハイリスクです。

人に知られたくない情報を公開することはプライバシーの侵害ですし,また,その人(会社)の社会的な評価を低下させる投稿は,名誉毀損に該当する可能性があります。
また,社会的評価を低下させる表現であれば足り,その真否は問われません。本当のことであっても,悪事は不名誉な事実ですので,名誉毀損となる可能性が高いのです。

もっとも,例外として,①真実性について相当の根拠があり,②公共の利害に関わり,③公益を図る目的があれば,適法になるということになっています。

②③はさておくとしても,①については,それなりにハードルが高いです。たとえば,食品への異物混入の場合,その証拠を保存しておけるか,といった問題があります。

また,②③も,表現の方法が人身攻撃に及ぶとか,不穏当な表現,不合理な評価をするとかで否定される事例も多々あります
投稿された側を代理する弁護士としては,結構②③もポイントであり,「ネット民」にありがちな表現の行きすぎを指摘して,②③を否定することで違法性を主張立証するというテクニックがあります。

世直しのつもりが,違法行為をするという点では同じ穴の狢,正義の鉄槌のつもりが法的責任追及の鉄槌が自分に下されることのないよう,注意が必要です

接見室から逃亡した事件が話題になっています。いつもの話ですが,ネット上では,勘違いから弁護人を非難する言説があるようです。そこで,誤解の解消のため,簡単に解説をしたいと思います。

接見室の構造,というより接見の仕組みですが,弁護人と被拘束者が会議室で会話をする,というような形式にはなっていません。

接見室においては,面会者つまり弁護人のスペースと,被拘束者のスペースは物理的に区切られています。その間には,透明な強固な仕切りがあり,声が通るように穴は空けてありますが,二重構造になり,物の授受は不可能になっています。保安上,当然のことです。

建物全体の構造としても,接見室の被拘束者のスペースを含む拘置スペースと,それ以外は明確に分離されています。私の知る限り,両方のスペースを繋ぐ扉は一つしか無く,非常に頑丈で厳重に封鎖されています。これも保安上,当然のことで,容易に想像ができることでしょう。

ですから,弁護人としては,被拘束者が接見を利用して脱走することを想定することはほぼ不可能ですし,これに協力することも合理的に考えてあり得ません。両者間の仕切りが破壊された場合,真っ先に危険に晒されるのは誰でしょうか?それは,他ならぬ弁護人だからです。

さらに,本件では「声かけ」をしなかったことが問題になっています。
ですが,ここで説明した構造を思い出してみてください。拘置スペースと,それ以外は明確に分離されています。ですから,弁護士から拘置スペース側の職員に「声かけ」をすることは難しいのです。基本的に,被拘束者がドアを叩くなどして知らせます(押しボタンがある施設もあります。)。

では,拘置スペース側でなくて,面会側を出た所にいる職員に声かけをしないのか,という点ですが,これも難しい場合があります。
拘置スペースには,被拘束者がいますので,基本的に24時間,必要な人員が確保されて常駐されています。
しかし,面会側のスペースは,必ずしもそうではありません。ですから場合によっては,声を掛ける職員そのものが存在しないこともあるのです。

このあたり,実際に弁護人(となろうとする者)としてやってみないと,イメージしにくいかと思います。ですが,あまりに誤解に基づいて弁護人を非難する向き(これは弁護士の仕事全般にいえますが)があるので,簡単に解説した次第です。

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