弁護士 深澤諭史のブログ

弁護士 深澤諭史(第二東京弁護士会 所属)のブログです。 相談等の問い合わせは,氏名住所を明記の上 i@atlaw.jp もしくは 03-6435-9560 までお願いします(恐縮ですが返事はお約束できません。)。 Twitterのまとめや,友人知人の寄稿なども掲載する予定です。

受験生時代に使っていた書籍の一覧を投稿するのが流行っていました。
ということで,私の愛用書も投稿したのですが,結構反響がありました。



いずれも,いわゆる司法試験予備校(受験指導校)のテキストです。

そういえば,以前,ロースクール研究という雑誌がございまして,その中で,「K&Cの亡霊と伴に!」というコラムがありました。
それによると,司法試験予備校のテキストを使って勉強してきた者は,予備校の弊害が染みついていて,成績を下げていく,とのことでした。

幸いにも,無事に一発合格できました。でも,その弊害が染みこんでしまうような書籍で勉強した人間ですら,合格できるような司法試験について,修了生の合格率が50%切っている法科大学院は,一体,どういう「弊害」が染みついているのでしょうか?

このままだと,法科大学院とその制度の方が,「亡霊」になってしまうかもしれませんね。

非弁行為について,よくある誤解をまとめてみました。

なお,他に「非弁行為とは?:書面作成/代行だから非弁ではない!?」でも解説しています。

よく,「●●だから非弁ではない」という主張がありますが,その●●全てが非弁になるわけではない≠●●であれば非弁ではない,という理論的関係があります。
このあたり,あえて誤解を招くような宣伝をしているケースもあるので,簡単に説明します。

①代行・使者だから非弁ではない
代行や使者であっても,その代行に至るまでの間に,法律関係を明確化するための作業や,法的評価,見解を明らかにする「鑑定」などの法律事務が含まれれば,非弁行為になり得ます。

②交渉・代理していないから非弁ではない
非弁行為になる法律事務には,代理が含まれますが,代理以外の鑑定や一般の法律事務も含まれます
代理をしている場合,多くの場合は非弁行為になりますが,代理していないからといって,非弁行為にならないというわけではありません
「法律顧問」という肩書きで,交渉等を一切しなくても,相談助言という,鑑定・法律事務を行っているのであれば,非弁行為になります。

③定額だから非弁(提携)ではない
これは,非弁提携(弁護士が非弁護士と提携をする,依頼者の紹介を受ける等)でもよくいわれるのですが,報酬が定額であるとか,会費名目であるからということは,非弁行為,非弁提携を否定する事情にはなりません
むしろ,最近の非弁提携では,会費等の別名目で定額にして誤魔化すケースが多数です。

④書面作成だから,非弁ではない
書面作成であっても,弁護士法72条本文の法律事務に該当するなら,非弁行為になり得ます
なお,司法書士等の他士業の資格があれば,その他士業の資格の範囲であれば法律事務が一部取り扱えます。
他士業の資格については,書面作成が認められているケースが多いのですが,この場合の書面作成とは,言い分を法的に整理して,文書の受け取り人が誤解しない程度にする,という程度の関与しか認められていません。要するに言い分をそのまま整理するだけであり,有利な主張,証拠を検討・提案するといった行為は認められないのが原則です。
このような書面作成型の非弁行為については,事後的に,その書面でなした行為が無効と判断されて,取り返しの付かない被害が生じていることもあるので,利用者としては,注意が必要です。

⑤カタカナ語なので非弁ではない
論外の主張ですが,最近は,意識高い系非弁・非弁提携というべきようなケースも散見されますので,カタカナ語にまどわされないことが大事です。

以前から,探偵業の許可を悪用して,非弁行為を行うケースがありました。

探偵業について,よくある誤解があるのですが,探偵業そのものに,その技能などを認定する国家資格,免許などはありません

探偵業は,主に届出制という規制が行われています。これは,その業務を行うには,都道府県公安委員会への届出が必要というものです。逆にいえば,届出さえすれば,一定の例外を除いては,特に資格も何も要することなく,探偵業を行うことができます。したがって,たとえば試験等を要求される自動車免許よりは,この点においては,規制が緩いということになります。

また,探偵業については,探偵業の業務の適正化に関する法律という法律があり,その法律によれば,次のように定められています。

6条 探偵業者及び探偵業者の業務に従事する者(以下「探偵業者等」という。)は、探偵業務を行うに当たっては、この法律により他の法令において禁止又は制限されている行為を行うことができることとなるものではないことに留意するとともに、人の生活の平穏を害する等個人の権利利益を侵害することがないようにしなければならない。

つまり,探偵業だからといって,それだけでは特別な試験などを経ている訳ではなく,しかも特殊な一般人が行えないことができるような特権が付与されているわけではありません

これは,弁護士業つまり法律事務との関係でも同じで,例えば詐欺業者について調査はできても,そこから回収をしたり,そのための必要なアドバイスができるというわけではありません

中には,山のように警察関係等,公的機関のウェブサイトへのリンクを貼り付けて,さも特殊な許可を得た機関のように装っているかのような探偵業者もありますので,誤解が無いように注意が必要です。

なお,通常,不倫や詐欺被害等について解決をしたいのであれば,弁護士に相談をし,弁護士の指示や見通しにそって,必要に応じて探偵業者を利用することが,最も合理的だと思います。

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