弁護士 深澤諭史のブログ

弁護士 深澤諭史(第二東京弁護士会 所属)のブログです。 相談等の問い合わせは,氏名住所を明記の上 i@atlaw.jp もしくは 03-6435-9560 までお願いします(恐縮ですが返事はお約束できません。)。 Twitterのまとめや,友人知人の寄稿なども掲載する予定です。

弁護士業務広告が解禁されてから大分時間が経ちました。
いまや弁護士広告は珍しいものではない,むしろ目にしない日はないかもしれません。

さて,広告の中には,「●●専門弁護士」とか「●●に強い弁護士」などの表現が散見されます。
ただ,●●に強いは多いけれども,●●専門弁護士という表現はあまり見ないかも知れません。

これは,どういう理由から何でしょうか。

まとめ
①「●●専門弁護士」と名乗ることは,差し控えるべきであるというのが,日本弁護士連合会の指針である。
②「●●に強い弁護士」と名乗ることについては,①のような規制はない。
③「●●に強い弁護士」は,基本的に自称なので,利用者が自分で判断する必要がある。
④③にあたっては,過去の実績,著作や講演(特に専門家向け)の有無や量が参考になるが,絶対ではない。

1.弁護士の広告と規制
弁護士の広告においては,日本弁護士連合会(日弁連)がルールを定めています。日本には弁護士自治という制度があり,弁護士の監督や指導については,国家の関与が原則として排除され,弁護士会が行うことになっています(なお,勘違いされやすいのですが,弁護士会が決めるといっても,弁護士だけで決めるのではなく,多くの場面で,弁護士以外の法曹つまり裁判官や検察官が,あるいは学識経験者も関与する場面があります。さらに,あえて非法曹だけで判断される場面も設定されています。)。
そこで,弁護士としては,弁護士会のルールを守らないといけません。

2.●●専門弁護士という表現は,原則として控えるべきとされている
「●●専門弁護士」という表現については,日弁連「業務広告に関する指針」が,次のように定めています。

客観性が担保されないまま専門家、専門分野等の 表示を許すことは、誤導のおそれがあり、国民の利益を害し、ひいては弁護士等に対する国民の信頼を損なうおそれがあるものであり、表示を控えるのが望ましい。

これは,どういうことかというと,弁護士には専門医認定制度のような専門認定制度がないので,自称●●専門を許すと,誤解をさせるおそれがある,だから,「表示を控えるのが望ましい」とされているのです。

3.「●●に強い弁護士」という表現は,特に禁止されていない
専門表示は「控えるのが望ましい」とされている一方で,「●●に強い弁護士」,もっといえば,何かに優れているという表現は,一律に禁止されている,というわけではありません
もちろん,虚偽の広告や,あるいは,裏付け・証明の出来ない広告は禁止されています。ですから,一定の根拠は必要になる,と考えられています。

4.専門表示が駄目だから「●●に強い表示」が流行した(?)
以上,要するに,優秀性を示すためには,●●専門弁護士と名乗るが一番なのでしょうが,それについては控えるべきであるとの「指針」があるため,代替手段として「●●に強い」という表現が流行したのではないかと思います。あるいは,専門というと限定されているように読めてしまうので,その点にも配慮したのかも知れません

5.「●●に強い」には要注意
「●●に強い」というのは,基本的に自称です。根拠があやふやなケースもあります。
また,実際に,私が見聞きする範囲でも強い強いとウェブサイトで連呼して自称しているにもかかわらず,基本的な手続き等について知らない(!)とか,「(自称)●●に強い弁護士に依頼したのだけれども,全然動いてくれなくて困っている」という趣旨の相談を弁護士として受けるということもありました(もっと酷いのもありますが,さすがにここでは,そこまで書く気にはなれません。)。

ベテランの弁護士から,「本当に『強い』弁護士は,ネットでわざわざ『●●に強い』などと自称しないだろう」と指摘されたこともありますが,全面的にその通りでないにしても,そういう側面はあるかも知れません。

こういうことが続いたので,私は,極力「●●に強い弁護士」というような自称はしないように気をつけています。

もちろん,こういうケースは一部でしょうが,「●●に強い弁護士」という表現は,基本的に自称であることには,注意が必要でしょう。

本当に「強い」のか,それは,過去の著作や論文の有無,量,特に同じ専門家である弁護士向けの著作や講演等があるのかどうかを確認するなどの方法も考えられます
もっとも,それでも判断が難しい場面はあると思います。最終的には専門認定制度が整備されるべきでしょうし,それが難しければ,利用者の方で,複数の弁護士に相談してみるとか,そういう工夫が必要になってくるのではないかと思います。

ぱうぜ先生(横田明美先生)から,「カフェパウゼで法学を」をご恵投頂きました。

タイトルからすると,法学部の新入生向けに思えますが,同書内で述べられているとおり,法学以外の専攻の人向けにも書かれています。

法学入門の入門,あるいは,「大学の入門書」ともいえる内容ですので,特に大学新入生の方々にお勧めです。

特に,ノートの取り方,レポートの書き方,定期試験の問題の解き方など,単位を取るだけなら,特に意識しなくても何とかなっちゃうかもしれない部分について,技術やノウハウがしっかり言語化されているところが秀逸です。

http://www.koubundou.co.jp/book/b370697.html

民法は,市民社会の取引ルールを定める他,相続など親族関係についても定めています。
相続に関するルール,つまり,だれがどの程度,何を相続するか定めた部分を相続法ともいいますが,それが,1980年以来,約40年ぶりに大改正されました。

相続するのも,そしてされるのも,人生においてほぼ避けることはできません。
そういう意味で,私たち全員に直接関わる大事な法律の,大きな改正であるといえます。

今回は,淺井健人弁護士(東京弁護士会)に,改正に関する資料をまとめてもらいました。

なお,今回は個別に解説をしていませんので,専門家向けの記事となります。

Ⅰ 成立
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律及び法務局における遺言書の保管等に関する法律が2018年7月6日に成立しました。
そこで、改正の概要や、施行日、附帯決議、改正経緯をまとめてみました。
ニュース
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32689360W8A700C1EAF000/
 
Ⅱ 法律案
法務省の条文へのリンク
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_0021299999.html
法務局における遺言書の保管等に関する法律案
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00222.html
 
Ⅲ 概要
今回の改正では、以下の点などが新たに設けられました。

① 配偶者が死亡した場合に残された配偶者が希望した場合は、原則として死亡するまで居住し続けることができる配偶者居住権(長期)(民法1028~1036条)
② 残された配偶者が遺産分割の終了時まで無償で居住し続けることができる配偶者居住権(短期)(民法1037~1041条)
③ 婚姻期間が20年以上の夫婦の一方が居住用不動産を遺贈または贈与した場合には持ち戻し免除の意思表示があったとする推定規定(民法903条4項)
④ 遺産分割前の預貯金について、一定額につき審判を経ずに仮払いする制度(民法909条の2)、審判における保全処分の要件緩和(家事事件手続法200条3項)
⑤ 自筆証書遺言の一部を自筆でなくてもよいとする方式緩和(民法968条2項)
⑥ 自筆証書遺言を法務局において保管する制度(法務局における遺言書の保管等に関する法律)
⑦ 遺留分減殺請求権の法的性質の変更(金銭債権)(民法1046条)
⑧ 相続人以外の者の特別の寄与(民法1050条)
 
Ⅳ 施行日
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律は、2019年7月までに施行されることが予定されています。なお、自筆証書遺言、秘密証書遺言については2019年1月まで、配偶者居住権は2020年7月までに施行されることが予定されています。
法務局における遺言書の保管等に関する法律は、2020年7月までに施行されることが予定されています。
 
◯ 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案
附則第一条 この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
二 第一条中民法第九百六十八条、第九百七十条第二項及び第九百八十二条の改正規定並びに附則第六条の規定 公布の日から起算して六月を経過した日
四 第二条並びに附則第十条、第十三条、第十四条、第十七条、第十八条及び第二十三条から第二十六条までの規定 公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日
法務局における遺言書の保管等に関する法律
附則 この法律は、公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
 
Ⅴ 附帯決議
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案、法務局における遺言書の保管等に関する法律案には、それぞれ附帯決議が出されています。
 
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(衆議院)
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Futai/houmuEE07E0F85FCC24AF492582B1002A32CA.htm
 
一 現代社会において家族の在り方が多様に変化してきていることに鑑み、多様な家族の在り方を尊重する観点から、特別の寄与の制度その他の本法の施行状況を踏まえつつ、その保護の在り方について検討すること。
 
二 性的マイノリティを含む様々な立場にある者が遺言の内容について事前に相談できる仕組みを構築するとともに、遺言の積極的活用により、遺言者の意思を尊重した遺産の分配が可能となるよう、遺言制度の周知に努めること。
 
三 法務局における自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度の実効性を確保するため、遺言者の死亡届が提出された後、遺言書の存在が相続人、受遺者等に通知される仕組みを可及的速やかに構築すること。
 
四 法務局における自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度の信頼を得るため、遺言書の保管等の業務をつかさどる遺言書保管官の適正な業務の遂行を担保する措置を講ずるよう検討すること。

 
法務局における遺言書の保管等に関する法律案に対する附帯決議(衆議院)
http://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Futai/houmuFCC244D52C7AEFE9492582B1002A62E8.htm
 
一 現代社会において家族の在り方が多様に変化してきていることに鑑み、多様な家族の在り方を尊重する観点から、特別の寄与の制度その他の本法の施行状況を踏まえつつ、その保護の在り方について検討すること。
 
二 性的マイノリティを含む様々な立場にある者が遺言の内容について事前に相談できる仕組みを構築するとともに、遺言の積極的活用により、遺言者の意思を尊重した遺産の分配が可能となるよう、遺言制度の周知に努めること。
 
三 法務局における自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度の実効性を確保するため、遺言者の死亡届が提出された後、遺言書の存在が相続人、受遺者等に通知される仕組みを可及的速やかに構築すること。
 
四 法務局における自筆証書遺言に係る遺言書の保管制度の信頼を得るため、遺言書の保管等の業務をつかさどる遺言書保管官の適正な業務の遂行を担保する措置を講ずるよう検討すること。
 
Ⅵ 議事録
 民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案、法務局における遺言書の保管等に関する法律案に関する、衆議院、参議院の議事録は以下のとおりです。

第196回国会 衆議院法務委員会 第20号
平成30年6月13日議事録
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000419620180613020.htm
第196回国会 衆議院本会議 第39号 
平成30年6月19日議事録
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000119620180619039.htm

第196回国会 参議院法務委員会 第19号
平成30年6月28日議事録
http://online.sangiin.go.jp/kaigirok/daily/select0103/main.html


Ⅶ 改正経緯
1 諮問
平成27年2月24日に法務大臣によって以下の諮問(法制審議会第174回会議)がなされました。
http://www.moj.go.jp/content/001136891.pdf
高齢化社会の進展や家族の在り方に関する国民意識の変化等の 社会情勢に鑑み、配偶者の死亡により残された他方配偶者の生活 への配慮等の観点から、相続に関する規律を見直す必要があると思われるので、その要綱を示されたい。
2 審議会
その後、法制審議会-民法(相続関係)部会において検討が重ねられました。
http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00294.html
 
(1)中間試案
第13回会議(2016年6月21日開催)では、中間試案が提出されました。
民法(相続関係)等の改正に関する中間試案
http://www.moj.go.jp/content/001201997.pdf
民法(相続関係)等の改正に関する 中間試案の補足説明
http://www.moj.go.jp/content/001198631.pdf
自筆証書遺言の方式(全文自書)の緩和方策として考えられる例
http://www.moj.go.jp/content/001198632.pdf
(2)追加試案
第23回会議(2017年7月18日開催)では、追加試案が提出されました。
中間試案後に追加された民法(相続関係)等の改正に関する試案(追加試案)
http://www.moj.go.jp/content/001231522.pdf
中間試案後に追加された民法(相続関係)等の改正に関する試案 (追加試案)の補足説明
http://www.moj.go.jp/content/001231524.pdf
(3)要綱案
第26回会議(2018年1月16日)では、要綱案(案)が作成され、法制審議会第180回会議(2018年2月16日開催)において要綱案が報告されました。
民法(相続関係)等の改正に関する 要綱案
http://www.moj.go.jp/content/001250062.pdf
補足説明
http://www.moj.go.jp/content/001246035.pdf
(4)法案提出
 その後、2018年3月13日に国会に法案が提出されました。
 

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