弁護士 深澤諭史のブログ

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文部科学省のパンフレット

収入は経費を控除する前の金額だそうです。

これが認められるなら、家賃収入 は、ローン返済と諸経費を差し引く前の金額だと言って、サラリーマン大家になれと勧誘することも許されるのでは?

弁護士広告は、度々問題になります。

大手弁護士法人が景表法違反で摘発され、業務停止の処分を受けたというニュースも記憶に新しいところです。

弁護士広告は、景表法など一般の法律による規制を受けるだけではなくて、弁護士の業務広告に関する規程というものにより、更に厳重な規制に服しています。

では、なぜ、弁護士広告はこのように厳しい規制に服しているのでしょうか。
それは、もちろんその必要があるからです。では、その必要がある理由はどこにあるのでしょうか。

かなりざっくりした話ですが、すこし語ってみようと思います。

1.弁護士と利用者との間には情報格差が大きいから
誇大広告であっても、その誇大さを正しく判断できれば問題はないはずです。
ですが、弁護士と利用者との間には、非常に大きな情報格差があります。
法律実務というのは、法律知識だけで成立しているものではありません。実務上の細かなルールや、技術、そういったものが集約されて、はじめて成立しています。
これを身につけるには、相当の期間が必要ですし、必然的に、その良さや悪さを判断することができるようになるためにも、同じくらいの時間がかかるでしょう。
そうすると、情報格差を利用すれば、安易に「騙す」とまではいかないまでも、誤解をさせることは可能です。実際に、借金問題や、不貞慰謝料、交通事故被害者側、刑事事件などにおいて、これを悪用しているのではないかと疑われる広告も散見されます。

2.利用者は切羽詰まっているから
利用者が弁護士を利用するときは、切羽詰まっています。
充分な判断時間もありません。特に刑事事件においては顕著です。
そうなると、簡単に広告で誤導が出来てしまいます。ですから、厳しい規制が必要であるといえます。

3.弁護士は高度の信用がないと成り立たない職業のため
弁護士は、高度の信用がないと成り立たない職業です。
もちろん、どんな職業でもそうでしょうが、弁護士は非常にそれが顕著です。
弁護士は、取り返しの付かない、依頼者の重大な権利義務を左右する決断をし、あるいは、その決断をする人をサポートします。さらに、依頼者から大金を預かることもあります。
そして、依頼者だけではなくて、相手方つまり敵からも信用される必要があります
典型的なのが、刑事事件における示談交渉です。通常、刑事事件の示談交渉は、加害者の弁護人が検察官に連絡をし、示談の意向があることを伝えます。その上で、検察官が、それを被害者に伝言して、被害者が、連絡を取ることに応じれば、連絡先を伝える、という流れになります。
このとき、被害者からすれば、加害者に自分の住所氏名を伝えたくありません。特に性犯罪であればなおのことです
したがって、この時の連絡先や氏名などは、弁護人限りということで伝えられます。
被害者からすれば、加害者の弁護人というのは「敵」です。ですが、その敵であっても、弁護士であれば、不当に秘密を漏らすことはない、そういう信用があるから、示談交渉が成立する、というわけです。
仮に、この信用がないと、示談が出来ない、それは、加害者はもちろん、被害者にとっても被害回復が困難になる、仮にしようとすれば、個人情報を加害者に知られることを覚悟でやる、という必要が生じてきます。
不当な弁護士広告が横行した場合、市民の信用は、その弁護士個人だけではなくて、弁護士全体についても、低下します。
そういうことが続きますと、弁護士の業務そのものにも大きな差し支えが生じてしまう、というわけです。

よく、これは無料相談だから、弁護士法違反つまり非弁ではない、という主張があります。

たしかに、弁護士法72条は、その要件として報酬目的であることを要求しています。

しかし、この報酬目的というのは、法律事件に関する法律事務の提供、あるいはその周旋において、報酬目的があることを要し、かつ、それがあれば足りる、というものです。 

そして、この報酬は、法律事務の提供を受ける者からもらうということも要求されていません。

つまり、第三者から報酬を受けて、それで無料相談会を開催する、という場合でも成立するということになります。
典型的には、寄付を受けて法律相談をするとか、国費の補助を受けて相談会を非弁護士が実施する、あるいは、弁護士を紹介する、ことが想定されます。

また、これに協力をする弁護士についても非弁提携ということになります。

最近、この辺りの誤解が多いようですので、注意が必要かと思います。 

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