弁護士 深澤諭史のブログ

弁護士 深澤諭史(第二東京弁護士会 所属)のブログです。 相談等の問い合わせは,氏名住所を明記の上 i@atlaw.jp もしくは 03-6435-9560 までお願いします。 Twitterのまとめや,友人知人の寄稿なども掲載する予定です。

今回は,専門家向けの記事です。

行政書士法コンメンタール第9版(北樹出版,兼子 仁)について,訂正のお知らせが掲載されました。
http://www.hokuju.jp/images/teisei201807.pdf

「「相続にかかる登記申請代理」も法定業務へ」と,相続関係の登記業務も行政書士が行えるようになった等の記載についての訂正とのことです。

出版社によると「本書は、行政書士の皆様の業務拡大の理論的支えになるべく、刊行を進めて参りました。 今回はその思いが先走って、ミスリードを起こしてしまったものと存じております。」とあります。

そういう目的自体は正当なものだと思います。ただ,コンメンタールという書籍の性質とは,少し相容れないのではないか,と思います。

それであれば,別に論文か,あるいは,そういう趣旨であると明らかにわかるような書籍を刊行する方が適切ではないか,と思いました。

驚きのニュースが入ってきました(処分の種類について追記しました。)。

まとめ
①裁判官の懲戒処分は,行政,つまり政府がすることができない。
②裁判官をクビにするのには,国会が設置する弾劾裁判所の裁判が必要(非行ではなくて健康上の問題の場合は裁判所でも可)
③裁判官を懲戒するのは,高等裁判所か最高裁判所


岡口基一裁判官というのは,法曹界ではかなり有名な方でして,インターネットでの非常に積極的でユニークな情報発信や,実務上,非常に有益な多数の著書で知られています。

報道によると,今回問題に,つまり懲戒の申立ての理由になっているのは,殺人事件のコメントについて,とのことです。
事件の内容については,今は論評できるほどの情報を持っていませんので,ここでは,裁判官の懲戒制度について,簡単に説明をします。

裁判官は,憲法上,高度の独立性が保障されています。裁判官が,時の権力,あるいは世論に左右されて裁判をするということはあってはならず,常に,公平中立に裁判が行えるよう,数々の手当が法律上なされています。

たとえば,裁判官は任期制ですが,その任期は10年とかなり長期間に設定されています。また,転勤についても拒否をする権利があります。給料についても,減額は禁じられています(ただ,公務員全体の給与水準を下げるときに,一緒に下げることは問題はない,とされています。)。

免職をはじめとした懲戒処分についても,特別の配慮がされています。行政つまり政府が,裁判官を懲戒することは出来ません。

裁判官が非行(悪いこと)をしたということで,裁判官を免職,つまりクビにするには,国会が設置する,国会議員からなる弾劾裁判所で罷免の判決というものをする必要があります(なお,悪いことをしたわけではないが,病気などで職務が出来ない場合に免職をする手続きは裁判所が行います。)。

また,他の懲戒処分についても,戒告と過料(1万円(!)以下)というものがあります。もちろん,これらも行政機関がすることはできません。

原則として高等裁判所が,高等裁判所と最高裁判所の裁判官の場合は,最高裁判所が懲戒の審理をするということになります。

本件では,岡口基一裁判官は,東京高等裁判所の裁判官ですので,最高裁判所の大法廷(最高裁判所の裁判官15名全員が集まる法廷)で審理されることになります。これより「上」の裁判所はないので,これが終審(最後の裁判)ということになります。

もちろん,懲戒を受けても,クビになるわけではありませんが,裁判官の情報発信に関するものであり,大事件であることは間違いないと思います。

◯処分の種類

大雑把にまとめると,次のとおりです。

1.罷免:非常に重い非行があったときに免職する。国会が設置する弾劾裁判所が行う。
2.戒告・過料:1に至らない非行があったとき,高等裁判所または最高裁判所が行う。
3.免官(*):非行はないが,健康上の問題で職務が続けられないときに免職する。
*:法令上,自主退職でも「免官」という。

ときどき,「自分でやってみる。それでダメだったら,弁護士に頼む。」という方がいらっしゃいます。
実は,事件類型によっては,それが有効であることも,全くないわけではない(珍しいけれども)のですが,基本的にお勧めできません。

通常,途中から依頼しても最初から依頼しても,弁護士に支払う費用は変わらないことがほとんどです。弁護士としては,「途中まで自分でやってみた」事情についても把握,検討しないといけないので,費やす労力が増えることはあっても,減ることはあまりないからです。特に本人訴訟ですと,かなりの割合で,自分に不利な主張をするという,いわばオウンゴールのケースがよく見られます。

また,逆に,費用が増える,あるいは結果が悪くなる,ということはしばしばあります。例えるなら,初期のガンが見つかったにもかかわらず,効果の無い民間療法だけを利用し,進行・転移をしてから病院にかかるようなものでしょうか。病気も法律問題も早期発見と治療が,そして,何よりも予防が大事です

相談だけであれば,あまり費用もかからないでしょうから,まずは相談してみること,「やってみてダメだったら」という発想は危険であるということに,留意は必要でしょう。

↑このページのトップヘ